11月17日(水) バレンシアからドン・キホーテの舞台へ
■スペインツアー三日目の朝をバレンシア郊外の巨大ショッピングゾーンの一角にあるホテルで迎えた。部屋の窓から見える光景は現役時代に訪ねたアメリカのショッピングモールと見まがうものだった。
■昨日同様のアメリカンブレックファーストを済ませ、朝8時にホテルを出発しバレンシア中心部に向う。バレンシアは人口80万人を擁するスペイン第3の都市だ。車窓からは未来都市を思わせる近代建築群が現れては消える。中心部のローマ建築風の橋の手前で下車し橋の袂のセラーノスの塔の門をくぐって旧市街に入る。
■中世を偲ばせる街並みをしばらく歩いた先に周囲を中世風の建築に囲まれた趣きのある広場があった。その一角のカテドラル(大聖堂)では朝のミサが行われていた。カテドラルの裏手にはゴシック様式の美しいミゲレテの塔が聳え立っていた。現地ガイドが先導する入り組んだ路地の先にラ・ロンハ(旧商品取引所)があった。開場前の時間帯で館内入場は叶わなかったが、イスラムの古城跡にたてられたという建物は壮大で優美な外観を有していた。
■ラ・ロンハの斜め向かいに中央市場があった。ここで30分ばかりの自由時間が設けられ各自で市場内を散策した。バレンシア市民の台所ともいうべき中央市場は幾筋もの通路が設けられた広大な建物だった。各店舗には生鮮食品を中心に豊富な品物で埋められていた。
■バレンシアを後に西に向ってドン・キホーテゆかりの地であるラ・マンチャ地方を目指した。アラビア語の「乾いた大地」を意味するラ・マンチャ地方に入ると、車窓の光景は見渡す限り延々と続く赤茶けた荒野に一変する。途中トイレ休憩を挟み3時間半の道のりだった。途中から窓に雨粒が流れ出す悪天候に変わってきた。1時頃に風車の立ち並ぶ村「カンポ・デ・クリプターナ」に到着した。丘の上の駐車場からぬかるみと雨脚を避けながら風車群をめざす。鉛色の空の下ながら白い10基の風車群はさすがに風情ある眺めだ。一基の風車では内部を公開しており二階の部屋には羽根に直結した軸を巨大な木の滑車で回転させ轢いた粉を1階に落とすという仕組みが見て取れた。
■村から1時間ばかりの所で昼食をとる。荒野の中に塀に囲まれてポツンと佇むレストランだった。料理は「ドン・キホーテの結婚式メニュー」と謳われた鶏肉団子のシチューをメインとしたものだ。塀の外でロバ、豚、七面鳥、鶏などの家畜が放し飼いされているのどかな光景を目にした。
■今日の宿泊地グラナダを目指して再び長距離移動が始まる。まっすぐ南に向けて途中二つの山越えのあるルートである。
■夜7時半頃にようやくグラナダの宿泊ホテル「アリサレス」に辿り着いた。ホテル・レストランの夕食中に黒い民族服で身を固めた4人の太っちょ男性グループによるギターと歌唱の演奏が始まった。同席のイタリア人高齢者グループの陽気なリアクションがひと際激しくなった。狭いスペースを見つけては踊りだす。海外ツアーでしばしば感じる民俗性の違いである。夕食後に予定されていたオプショナルツアーのアルハンブラ宮殿夜景観賞はパスして部屋に戻り早目の就寝についた。

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