2005年11月例会

ライブ ジャズ イン ローサニー
ジャムセッションの心地よい緊張感
■演奏が始まった。ピアノ(木村ヒロヨシ)、ベース(尾高殻彦)、ドラムス(西本宣司)のトリオによるセッションだ。20代後半にみえる若いドラマーは、ときおり笑顔を見せながら自ら演奏を楽しんでいるかのようにスティックを躍らせている。40歳前後と思しきベースマンは、はにかんだような表情を漂わせてひたむきに両手の指先を酷使している。トレードマークらしき野球帽をかぶったマスターがピアノに向っている。先ほどの温和なオヤジさんの顔は、厳しさに満ちたピアニストの顔に一変し、頑なにピアノと闘っているかに見える。20代から60代までの世代を超えたメンバーを率いて演奏を仕切っているのはやはりこのオヤジさんなのだ。3人3様の個性にあふれた演奏スタイルが私たちを楽しませる。
 数曲の演奏の後、ヴォーカル(河村恭子)が加わる。抑えたトーンの軽妙で洒脱なト−クが、巧みに聴衆をライブに引き込みながら、スッとジャズヴォーカルの世界に連れ出してくれる。
 ピアノが淡々と語りかけ、ベースがこれに応じて囁き返す。ドラムスがアップテンポなリズムを刻んで割って入る。手の内を知り合った者どうしのその時々に繰り出されるアドリブが緊張感をかもしている。ベースソロが始まり、ヴォーカルとピアノとドラムスは、沈黙の世界に身を引き、ベースの調べを見守っている。抑えたバリトンの調べが、淡々と・・・時に激しく聴衆に語りかける。ソロがエンディングを迎えた。固唾を呑んだ緊張感から解き放たれた聴衆は、すかさず拍手でこれに応じる。ライブハウスに居合わせたプレーヤーと聴衆が見事に一体化した瞬間だった。
 気心を知り合った仲間たちの楽しいセッションだった。何よりもプレーヤーたちが演奏を楽しんでいる。ジャズの世界に浸っている。そして私たちは、メンバーたちのボケと突っ込み似も似た巧みな掛け合いを楽しんでいた。ジャムセッションのもたらす心地よい緊張感を味わいながら・・・。
ジャズメンの夢舞台
■さくら会の11月例会は、久々の「ジャズ・ナイトの集い」だった。
 ジャズ・ナイトといえば府録さん、池田さんの出番である。お二人からの案内状「JAZZバンド&ヴォーカルのライブ演奏にスイングする一夜(当夜はナント貸切です)」に惹かれて会場近くの「阪神芦屋駅」に降り立った。
 芦屋川に沿って北に5分ばかり歩き、国道2号線を左に折れるとすぐに芦屋サウザンドビルがある。ビル1階の東側にLive JAZZ LAUSANYの看板があった。
■木製の重々しいドアを開けると、正面にカウンターがあり、左側壁際にはグランドピアノ、アンプ、ドラムスが設置され、ライブハウスのおもむきを漂わせている。
 開始時間まで少し時間があり、一番乗りだった。適当に席に着くと、カウンターからこの店のマスターと思しき初老のおじさんがやってきて飲み物を勧められる。開会前でためらっていると「大丈夫です。皆さんそうしています」とのこと。オーダーしたビールを運んでもらったのをきっかけにマスターと雑談する。
■聞けばマスター自身がジャズ・ピアニストでもあった。いやジャズプレーヤー木村ヒロヨシが経営するライブハウスが、ここ「ロウサニー」だった。ホームページのプロフィールによれば1942年生まれの63歳の現役プレーヤーである。24歳でプロ入りし、世界のトップミュージシャンともセッションを重ね、今尚自身のグループ「木村ヒロヨシ&グルービンハイ」を率いて活躍している。この世界では知る人ぞ知る人物だった。 「年々、演奏する場が少なくなってきた。若者たちもジャズは聞いてくれるが、CD中心でライブにまで来てくれない。それなら自分で演奏の場を作ろうと2年前にこの店を作った。経営はなかなか苦しいが何とか続けたい。」
 淡々とした口調の中に、生涯をジャズとともに歩み、仲間とともに全力でその輪を広げたいという思いがこめられている。 夢を追い続けるジャズメンの舞台がここにあった。
■壁には私が学生時代に夢中になったジョン・コルトレーンの顔写真パネルが飾られていた。私の自作のコルトレーンのイラスト集にぜひ加えたい迫力のある写真だった。
■定刻前に浦濱さんが若い女性を連れて登場し、少し遅れて、JR芦屋駅前で待ち合わせていた府録さん以下のさくら会本体の7名がやってきた。
 府録さんの音頭で乾杯をした後、初参加者の紹介。浦濱さん紹介の徳本さんは浦濱さんの親戚でこの近くに在住とのこと。松下電器産業勤務のOLである。池田さん紹介の谷口さんは、池田さんの会社の従業員とのこと。「今日は福利厚生の一環で来てもらった」とは池田さんの弁。女性二名の初参加者の自己紹介が続く。
 その後はジャズナンバーが流れる中でしばし歓談。サンドイッチやおつまみ、チャーハン、やきそばで腹ごしらえしながら、飲み放題のオーダーを重ねる。酒、ビール、ウィスキー、バーボン、ブランデー等、飲み放題の豊富な品揃えが嬉しい。
■途中休憩を挟んで、2回の演奏だった。2回目の演奏終了の後、アンコールに応える形で私たちにリクエストが求められる。無類の音楽好きらしき谷口さんから「マイファニーヴァレンタイン」のリクエスト。最後の曲目となったこのスタンダードナンバーに私たちは名残りを惜しむようにリズムを刻んでいた。そして今年の「ジャズ・ナイトの集い」が、予定の9時半をはるかにオーバーして幕を閉じた。
 ちなみに今回の参加者は、府録、池田、岸、盛田、三浦(義)、谷山、馬場、浦濱、徳本、谷口、日高の11名の皆さんだった。
 アットホームでゆったり寛ぎながら思う存分スイングできた最高のジャズライブだった。この素晴らしい機会を提供してもらった府録さん、池田さんには様々な負担をかけたに違いない。感謝の言葉もない。
 できれば、来年もこのLive JAZZ LAUSANYでスイングできる機会が与えられんことを・・・・。幹事の負担への気遣いの舌の根も乾かぬうちにそんな願望を抱かせた例会だった。

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