2009年9月例会

9月8日 ロマンと現実の葛藤ドラマ「宇宙にかけた夢」
■毎月定例開催の異業種交流会の8月例会は、お盆休みで休会だった。2ヶ月ぶりの9月例会が9月8日に開催された。今回の講師は潟Cーハトーヴの社長である西谷尚之氏で、「経営の危機を乗り越えた社長の苦悩と取組み」がテーマだった。開会直後に、紹介者の川島代表幹事から「理念経営の大切さと強さを身をもって実践された社長」といった力のこもった講師紹介がある。
■講師のスピーチが始まった。現在44歳のベンチャービジネスの代表者である。戴いた経歴・職歴表には、多彩で波乱に満ちた人生が刻まれている。『華道未生正流の3代目家元の息子として誕生。12歳からカメラで宇宙を撮り始める。プロの写真家を目指し15歳からアルバイトを始める。大学入学後、自然を求め放浪の旅に。21歳の時にオーストラリアに遠征し、撮り貯めたハレー彗星や自然をテーマにした作品が共同通信等のメディアで配信される。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業を機に自然科学啓蒙のための起業を志す。25歳で(有)イーハトーヴを設立し、写真撮影とスライド製作業務を開始。28歳からプラネタリュウム番組制作を手がける。その後、株式会社への改組とともに自然科学教育ソフト開発等に業容を拡大。39歳の時には家業の華道家元を正式に引き継ぐ』
■この表面的には順調に見える事業経過の裏側の悲惨な実態が、講師自身の口から語られる。『自然科学を楽しく学んでもらいたいという夢を実現するため、仲間たちと学校向け教育ソフト提供事業に乗り出した。進学授業中心の教育現場の現実のハードルは高く、莫大な借金を背負うことになった。パンと牛乳の食事が続き、仲間や従業員が離れていき、離婚という現実も受入れた。赤字経営が続き従業員の給料遅配を前に自身の保険金での精算さえ考えたり鬱病に陥ったりという「どん底」を味わった。夢ばかり追ってマーケットを見ず足元を固めずに突っ走った報いだと悟った。
 厳しい事業再建の取組みを経て、たった一人の事業に絞込み、ようやく立ち直ることができた。『自然と人間を結びつける仕事をしたい。子供たちに宇宙や星や科学技術への夢を持ってほしい。そのためのお手伝いがしたい』。そんな「私自身の夢」が支えだった。経営再建を通した過酷な経験が、そんな夢をようやく形にできる土台をつくってくれた。一息ついた今、気がかりなことがある。最近のマスコミが、どの機関も余りにも同じような論調で同じ事件ばかりを追っている点だ。偏向報道ではないかとすら感じる。天文学や自然科学は多面的に物事を眺める視点が不可欠だ。その意味では最近のマスコミ報道は自然科学の前提を崩しかねない危険性を感じる』。
■30分のスピーチが終った。参加者からの質問が相次ぐ。面白かったのは会場の床の間に飾られた生け花についてコメントを求められた時だ。さすがに華道家元でもある。即座に華道の基本に沿って自身の感想を交えた辛口の論評が返ってきた。イーハトーヴという社名の由来も伺った。講師が尊敬する作家・宮沢賢治の作品に登場する「理想郷」を意味する言葉に由来するという。文学と自然科学と農業と宗教を結びつけた宮沢賢治という人物の側面を教えられた。
 宇宙というロマンとベンチャービジネスという現実の赤裸々な葛藤のドラマを味わった9月例会だった。
■スピーチ後、料理が運ばれの懇親会が始まった。二度目の会場「日月亭」での上品なミニ懐石料理に舌鼓を打ちながら飲み放題の宴席での懇親が盛り上がる。
 宴が進み、初参加者の紹介となる。今回は、盛田さん紹介で北村さんとも懇意の大阪光学工業椛纒\の川口さんだった。レンズ製作も手がけられ今日の講師のスピーチを興味深く聞いた等の挨拶を頂いた。前回講師の桑田さんからも、大阪勧業展や友人である久保修氏の切り絵教室作品展の案内などもあった。また9月23日9時55分からの関西テレビ「よ〜いドン」で桑山さん自身が「となりの人間国宝さん」として登場する番組紹介もあった。川島代表幹事からは、西谷社長へのお礼と、次回例会の案内があった。10月13日(火)の次回例会は、大阪日本民芸館の長井誠常務理事を講師に、「大阪日本民芸館の活動と今日までの取組み(案)」をテーマに開催予定である。最後に盛田幹事で締めてもらい久々の例会を終了した。
■ちなみに今回の参加者は、川島、日高、森、盛田、北村、岡山、新屋、野木、奥野、桑田、横山、川口の12名の皆さんだった。