2009年7月例会

7月14日 モノづくりの世界「遊びの中に技術がある」
■大阪さくら会の7月例会が開催された。大阪ビジネスパーク・ギャラリーツイン21の3階「日本料理・月日亭OBP店」が今回の会場だった。JR東西線「大阪城北詰駅」から徒歩数分の会場に着いた。6時半を少し過ぎた時間の会場には参加者はまばらだった。盛田幹事紹介のこの広々とした和室会場は、今後の例会会場にも相応しい落着いた雰囲気を漂わせていた。参加者の出足が鈍い。7時15分頃にようやく開催できる顔ぶれになった。
■講師は、褐K田金属製作所社長の桑田泰彦氏で、知る人ぞ知る大阪のモノづくりのプロである。例会案内には大阪府シートメタル工業会会長、東成工業会会長の肩書も記されている。紹介者は、先月の小河大阪府副知事に引き続いて盛田幹事である。桑田氏も小河副知事もともに中学時代の級友とのことだ。盛田幹事の講師紹介の後、スピーチが始まる。
■床の間を背に口髭、顎鬚を蓄えた60過ぎの穏やかな顔つきのオジサンのトツトツとした語りが始まった。「30分もの話しができるか不安です。とりあえず生い立ちを紹介しながら時間稼ぎをさせてもらいます」。こうしたスピーチに不慣れなのか、率直でいかにも職人気質の人柄が滲んだツカミが好感を呼ぶ。以下はスピーチの概要である。
「瀬戸内海の鞆の浦の島に生まれ小学6年までここで過ごした。文学や音楽に親しんだ母親や版画家の叔父の影響もあり、自分の感性はこの頃に養われたと思う。中学入学の歳に大阪谷町で溶接業を営んでいた父のもとに身を寄せた。上町中学、夕陽丘高校、同志社大学と進んだ。42年前の大学生の時に父親の仕事上の縁で中国を訪問した。北京動物園で初めて見たパンダや北京大学での学生との交流が思い出深い。次女が中国の広州に嫁いでおり、中国とは今尚縁が深い。
 大学卒業と同時に父親の会社に就職した。新入社員として毎朝工場のシャッターを開けながら目にした窓ガラスを拭いていた娘さんを見初めた。今の家内だ。納品の運転手の仕事も良い経験だった。取引先の様々の苦情や情報を通じて会社の仕事全般を学べたからだ。34歳の時に父が他界し翌年に社長に就任した。以降、酒席が多くなり学生時代は飲めなかった酒を飲めるようになった。この会に呼ばれたのも酒の縁だったように今では酒が取り持つ縁に感謝している。
 27年前に大阪市内で初めてアマダのレーザーカットマシンを導入した。1号機はトラブルも多く苦労もあったが、失敗しながら技術を磨くという利点もあった。取引先のマークやロゴをレーザーカットして提供したりした。機械で遊べるようにならなければ技術やノウハウは生まれない。遊びの中に技術がある。そんな気持ちもあってステンレス鋼管を加工した初めての作品である門松を作った。次に作ったのが円筒形の鯉のぼりだった。これがNHKニュースや毎日放送の「テレビのツボ」で取り上げられた。お礼に「テレビのツボ」のキーホルダーを作って届けたところ、番組プレゼント用に1000個の注文を頂いた。勢いに任せて大作のティラノザウルスを作ると、毎日放送の「あどりぶらんど」などで取り上げられた。その後は干支の十二支を順番に作っている。
 最後に自分なりの経営理念である『如是』」という言葉で締めくくりとしたい。自分は『あるがままに』と理解している。」
■スピーチが自作のステンレスパイプ製の作品に及んだ時だった。参加者にいくつかの作品が回覧された。一品一品が時間をかけて製作された見事なオブジェだった。技術者・職人の域を超えた造形作家としての才能を感じさせられるものだった。お母さんや叔父さんから受け継いだ感性の意味が伝わる。そうした過去の出合いを通じて糧を貰った多くの人たちへの感謝の念が告げられる。朴訥な語り口の中に「モノづくり」にこだわって生きてきた人物の自信に満ちた本物の人生を垣間見た。スピーチ後の質問では参加者からかってない多くの質問が相次いだ。質問者の言葉の端々に「モノづくり」の世界への関心と共感の深さが感じられる。
 「遊びの中に技術がある」。講師の揺らぎのない確信に満ちた印象深い言葉の余韻を残してスピーチが終了した。

■スピーチ後、料理が運ばれの懇親会が始まった。初めての会場「日月亭」は奈良の老舗旅館系列の日本料理のチェーン店のようだ。適度な量のミニ懐石料理と飲み放題の宴席で盛り上がる。
 宴が進み、初参加者の紹介となる。今回は、吉村さん紹介の潟Tンサイト代表の斎藤さんと、大久保さん紹介のテクニカル・プランナー代表の加山さんのお二人だった。そろぞれに挨拶を頂いた。
 最後に川島代表幹事から、次回9月例会の案内があった。プラネタリウムの番組制作を中心とした教育コンテンツを制作する株式会社イーハトーヴの西谷社長が講師である。宇宙をテーマとしたロマンに浸れそうな例会のようだ。
■大阪さくら会初めての「モノづくり」をテーマとした例会が10時ちょうどに閉会した。ちなみに今回の参加者は、川島、井上、日高、森、盛田、府録、生原、筧田、岡山、家入、中井、大久保、吉村、堀口、桑田、横山、斉藤、加山の18名の皆さんだった。