1986.03.01
労組機関紙・コラム
▼先日、労働団体の春闘会議に出席した際の、某労組委員長との雑談。
子供たちの間でファミコンが大ブームになっている事が話題になって、こんな話が出た。
「息子にファミコンをせがまれて、なだめすかしているうちに、どこか似たような光景に思い当たった。
考えてみれば、まるで会社との賃金交渉をしているようなものだった。」
▼というわけで、以下「親子」と「労使」の交渉の同時進行型再現である。
息子「お父さん、ファミコン買ってヨ!」 (組合「社長、賃上げを!」)
父親「ダメ!」 (会社「そんな要求は認められない!」)
息子「お友達も、みんな持ってるもん」 (組合「ヨソの会社も、みんなこれくらいの賃上げはしているから」)
父親「ヨソはヨソ、ウチはウチ」 (会社「他社のことは関係ない」)
息子「チャントお勉強するから」 (組合「一生懸命ガンバッテ売上を伸ばすから」)
父親「勉強するのは当り前じゃないか」 (会社「チャント仕事をするのは当然のことだ」)
息子「買ってくれなきゃ、塾へ行かないから」 (組合「認められなければ、ストをするから」)
キリがないのでこの辺で・・・・。
▼ところでいよいよ春闘である。
妻子を抱えた組合員の家庭では、春闘後の賃上げ分を巡って、夫婦や親子で交渉が行なわれるのだろうか。
『子供たちにヨソの子に恥ずかしくないだけのことは、してやりたい』
『たまにはヨメさんにも服の一つも買ってやりたい』
『自分にも人並みの付合いができるだけの小遣いが欲しい』
父親である組合員の偽らざる心情である。
▼某委員長が、結局ファミコンを買ってやったかどうかは聞かなかった。