Tさんへ



もうすぐ五月ですけど、お元気ですか。
私は、先日タイタニックを観に行きました。

重い深い感動に包まれるという感じですね。
恋愛映画という側面で最初とらえていたのですが、一級のドキュメン
タリーと言った方が近いような、それでいてラストシーンの涙がにじみ
出てしまうような感動・・・・。

本当に人々がたくさん死んでしまうことにショックも受けました。
それが事実だということを背景にして。
容赦なく、極寒の海が人々を呑み込んでいくところは本当に恐ろしいもの
でした。母親が赤ん坊を抱いたまま凍死した姿には、私も凍り付きました。

船体が折れて、人々の上に叩き付けられるところは、これが本当に起こっ
たのだと、震えました。人々が救命胴衣で浮かんだまま、見渡す限り凍死
してしまっているシーンもおそろしく、悲しく、痛ましいものでした。

どうしてこんなことが起きてしまったのだろう。

最後まで演奏し続けるバンドのメンバーには、その気概に胸が昂ぶりまし
た。設計者が落ち込む姿には、その夢が無残に砕け散ってしまったことに
とても可哀相に思いました。自分のせいでたくさんの人々の命を亡くす
ことになり、どんなにつらかったことでしょう。可哀相に。
子供を抱えた親子に「船長さん、私たちはどこにいけばいいのでしょう」
と言われた船長の胸の内のつらさは、どんなものだったのでしょう。

短く激しい恋の果てに、彼が海の暗黒に沈んでいってしまうシーンでは、
涙が出ました。

悲しいお話です。二人が生き残るのではないから。
でも、彼女は彼と約束したとおり、人生をまっとうしました。ちゃんと
100歳をすぎて生きました。

陶芸もしていたし、あこがれていた乗馬の写真もあったし、女優にもなり、
(悲しみは悲しみとして)自由な人生を生きたということが描かれていま
した。目の周りの皺がとくに強調されていたと思うけど、それはラストの
本当に美しい感動に集約するためだと思います。

私にとって、あのラストシーンは本当に素晴らしいものです。
良かったです。夢見るような救いが見事にそこにありました。

>主人公は最後までヒロインを守りました。
>その主人公の「最期」のシーンでただひとつ残念だな。私ならこうするのにな。
>と思ったのですが、Keiさんが観に行ったら、言います。先に言ってしまうと
>見る楽しみがなくなりますから。

すでに冷たくなった彼が暗黒の海に吸い込まれるように沈んでいくシーンの
ことですよね。運命の残酷さを感じました。

本当に、心をうつ映画ですね。
重量級の映画です。
強く勧めてくれてありがとう。

それでは、また。

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      _/  中原 憬(けい)  Kei Nakahara  _/_/_/

     _/ http://www.asahi-net.or.jp/~KX5N-KGYM/ _/

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