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堂々日本史



 日本の中心といえば一体どこになるのでしょうか? まず一番に挙げられるのが首都東京なのは、まあ間違い無いと思います。日本の地形的な中心として富士山麓を主張し、首都機能移転先に立候補した自治体もどこかにあった気がします。昔、学研の科学だか学習だかで読みました。一寸ヒネくれた方なら日本標準時の基準点の場所として、兵庫県明石市を挙げる方もいるかも知れません。

 起源という観点からはどうでしょう。神話では天孫が降臨したのは九州の高千穂山ですが、実際の所は南方系、大陸系、北方系、様々な人種が交じり合って現在の日本人になっている様で、一口にルーツと言うのもなかなか難しいのが現状みたいです。

 しかし、こうした混沌とした状況の中、実に単純かつ明快な主張を掲げている方が居られました。その説によると日本のルーツは























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 土佐なのだそうです。


 1993年の春、自分たちは休みを利用して四国を貧乏旅行の最中でした。食事は当然釣りによる自己調達と自炊。宿は適当な場所を見つけてのテント暮らし。地図で場所を拾いながらの温泉めぐりもとても楽しいものでした。「そろそろいい加減風呂に入らないとなあ……」そんな話をしながら土佐山田郊外の山道を走っていた最中に、我々はその看板に遭遇しました。即座に大爆笑しました。

 「NHKで全国放送90分」、「ローマ法王に謁見」、「卑弥呼は年中生野菜」。ツッコミ所満載なフレーズの十字砲火に、この目で確かめなければ男が廃ると、その若宮温泉なる地図にも名の載らぬ無名の温泉に、我々は嬉々として乗り込んでいったのでした。

 国道を逸れ、細くて長い急な坂道を下っていった先にソレはありました。車から降りるのが何となく躊躇われてしまったのは、けして降っていた雨の所為だけじゃありません。

 元は絶対結核かなんかのサナトリウムだっただろうと問わずには居られない、温泉地には不釣合いも甚だしいコンクリ打ちっぱなしの古く巨大な建物。構内に張り巡らされた謎の万国旗と正体不明のイベントミニオリンピック。名物はイオン料理太平洋高原って一体何なんですか?

 当時田舎の純朴な大学生だった自分たちにも、そこが真っ当な場所で無い事だけはひしひしと伝わってきました。「引き上げた方が良いよね、絶対」怯んだ仲間たちの間で無言のアイコンタクトが交わされる中、一人、O先輩だけがロビーの方へツカツカと歩み寄って行きました。
「あの〜、風呂だけって入れますか?」
 O先輩、漢です。尊敬します。

「今は一寸入れないねえ……」
「何時頃になったら入れますか?」
「さあ、沸かさなきゃならないから夕方位かねえ……」

 普通の温泉でされたら絶対怒り狂うだろうぞんざいな応対が、こんなに嬉しかったのは生まれて初めてです。O先輩が次に地雷を踏みに行く前にと、我々は足早に若宮温泉を後にしました。土佐犬の子犬が悲しげな目で車を見送っていました。


 あの強烈すぎる温泉の思い出は今でも記憶に焼き付いて離れる事がありません。先日なんとなくネットで検索を掛けてみた所、あのなげやりな営業方針がやっぱりまずかったらしく一度閉鎖になった物の、最近になってリニューアルオープンしたという噂を掲示板で目にしました。
 さすがに当時のアレっぷりのままでは再建は難しいでしょうし、今では普通の温泉地になってしまっているのでしょうか。そう考えるとあの時入れなかった事がちょっぴり残念な事のようにも思えてきます。不思議な物ですね。


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