8 天然資源環境省の地域事務所で

  私たちは、7月28日の午後には、セブに戻り、7月29日に、天然資源環境省の地域事務所の所長や技術担当者らと話す機会をもてた。

  私たちは、まず、マングローブ林の件について話を聞いた。所長は、海岸沿いのマングローブ林は天然資源環境省の所轄であり、切ることはできないのが原則だと明確に述べた。

  なお、プロのマングローブ植林は、すでに、天然資源環境省の手を離れているとのことであった。

  また、船の解体に伴う環境汚染の問題について、私たちが問題提起したところ、非常に興味深いレポートが手渡された。これは、今年(97年)の4月に、セブの環境保護団体である環境法律援助センターから、天然資源環境省への申立があったので調査した報告書であった。

  その報告書によると、船はすべて乾燥したドック内で解体されており、海に係留されているものはなく、廃油やスラッジは完全に回収され、「海岸には何の廃油の流れ出た形跡もない」状況だったという。

  しかも、興味深いことに「ベニヤ板やケーブル類、ファイバーグラス、その他の金属類で、市場価値のないものは、日本に送り返されている」ということになっているとされていた。

  この報告書によると、アスベストを含む廃棄物や塗料類はすべて回収され、日本へ送付されていることになる。してみると、常石造船は、それらを日本に持ち込みそこで処理していることになる。

  有害廃棄物の越境移動にほかならない。その通りとすれば、ひとつの処理方法ではあるが、いったいどのようにしているのだろうかという疑問が強い。

  有害廃棄物の量といっても、アスベストなどを含めればばく大な量だ。しかもそれを日本に運び、どこかに移動するとなればおおごと。常に密閉しての移動が必要になる。それを本当にしているというのは考えがたい。

  有害廃棄物処理についての情報公開が世界的潮流となっている今日、常石造船は、その点を明らかにし、説明すべきだろう。

  それにしても、公式のレポートになると、洋上で解体している船が「消える」のには驚く。私たちが目にしたのは何だったのだろうか。

  また、その場で、フィリピンでは、アスベストについての環境規制などがないことも判明した。バランバンでは、CIPDI関係者は、「フィリピンの法にのっとっているから安全だ」と述べていたが、いったいどんな法によってアスベストに関する安全対策をしているのだろうか。

  経団連が定めた海外進出企業のための10の指針では、海外に進出する日本企業に対し、有害物質について、日本並の対応をとるべきことを求めている。
  そのような対策をとる義務を負っており、また、現実にもそのための情報を持ち、技術をもっているのは、進出する日本企業である常石造船である。常石造船の厳格な対応が望まれる次第である。

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