6 市長との対談

  私たち調査団は、7月25日、洋上調査に先立ち、バランバンの市長と会談する機会をもった。

  市長は、私たちに、「過疎地」にあたるバランバンでの悩みをかたり、「職が少なく、若者が都市へとでていく現状の中で、新しい産業が必要だ」と、CIPDIを招いた理由を語った。

  しかし、同時に、「環境と開発はバランスがとられるべきだ」と述べ、「セメント工業や石油化学工業のように、環境を汚染する恐れがある産業は、拒否する」と話した。

  私たちは、船の解体が環境にもたらす悪影響の恐れを説明し、「日本人として、フィリピンとの友好関係につとめたいので、日本企業がきちんとした環境保全策を取り、あるいは人権や社会的影響といったものに配慮しているか関心を持っている」と述べた。

  市長は、私たちの話しに耳を傾けた後、率直に、「船舶解体のもたらす環境影響については情報がなかった。どのようにしたらいいか情報が欲しい。資料を送付してくれ」と話し、環境保全へも、一定の配慮を払おうとしている姿勢をしめした。

  今後、地元自治体や住民たちも含めた多数当事者による環境監視を行っていくためには、地元自治体の関与は不可欠である。

 

  過去の様々な例で、企業がもたらす多額の「経済援助」のもとに、姿勢が急変していく首長の姿をしばしば目にしてきたが、バランバンではそうしたことがないように、独立の立場での対応をしていってもらえればと期待して対談を終えた。

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