1997年7月 常石セブ調査報告

1 セブのリゾートと工業団地の反対側に

  きれいな海と珊瑚礁で知られるセブ島

  セブ国際空港が位置し、また、多くのリゾートホテルが位置するマクタン島は、セブ島の東海岸に位置する。

  多くの日本人観光客が宿泊するホテルは、そのマクタン島の東海岸に集中している。

 

 

 

  一方、マクタン島は、工業の島でもある。

  マクタン島から日本の援助で建設された橋をわたると、フィリピン第三の都市セブに至る。

  マクタン島西岸からセブ市にかけての辺りはフィリピン有数の工業地帯でもある。

  左の写真は、マクタン島西岸に位置するマクタン輸出加工区の事務所。

 

  同加工区には、60を超える日本企業が進出しており、日本企業の比率は極めて高い。

 

  セブ島の人口の多くもマクタン島を含むメトロ・セブに集中している。

  もともとセブは、フィリピンでもっとも古くから開けたところ。美しいリゾート地であるとともに、商業の町でもあり、今や工業都市ともなっている。現在の人口は、周辺地域を含めたメトロ・セブ全体では90万人を超える規模にまでなっている。

  セブ島は南北に細長い島であるが、その東側に位置するセブ市・マクタン島とちょうど反対側の西海岸にも、いくつかの町がある。

  セブから西に向かってセブ島の中央の山を越えて西海岸に着くと、まずトレド市。アトラス銅鉱山(現在閉鎖中)のある古くから開けた町だ。

 

  そのすぐ北側に位置する西海岸に面した町が、バランバン(Balambam)市である(右図参照)。

 

  そこで、日本の中堅造船会社常石造船が新しい造船工場(常石造船セブ)と船の解体撤去と伸鉄事業を行う工場(K&A METAL)をつくり操業している。

(注) K&A METALは、名前の通り、常石造船の所有者である神原一族(K)とアボイテス・グループ(A)の合弁会社であるが、主に老朽船の解体と、その解体された鉄等の再利用をはかることを目的とし、小船舶の製造も業とする会社である。

  そこでは、常石造船と地元の有力財閥のひとつアボイテス(Aboitiz)・グループが、共同して工業団地開発のための会社(セブ工業団地開発社 CIPIDI)をつくり、同社が「西部セブ工業団地」を開発した。前出の常石造船セブとK&A METALも同工業団地に位置している。

  同工業団地開発に伴う農民たちの立ち退き問題とマングローブ林の伐採問題、船の解体などによる海洋汚染の問題が、現地で、問題となっていた。

2 日本側の取組

  地元の環境保護グループから、この問題についての連絡が、横須賀のフィリピン交流グループ(全日本造船機会労働組合(全造船)関東地協のメンバーも含む)と日本の弁護士グループ(小島延夫ら)に、それぞれ別個に昨年(1996年)後半から今年(1997年)はじめに入った。

  お互いの関与を知った双方は互いに連絡を取り合うと共に、進出企業問題を考える会、全国労働安全センターといった関連あると思われる日本の市民組織と連絡をとり、今年(1997年)5月には、先行して現地を訪問した全造船の調査メンバーの調査報告会をかねた研究会を開催し、この問題についての連絡組織を作った(連絡組織名 常石セブ造船問題を考える会準備会)。

  そして、今年(1997年)7月下旬、それらの組織がいっしょになって、市民調査団を結成し、現地を訪問した。以下はその記録である。

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