King's Call(Tribute for Phil Lynott) (Jan 4,1996, Dublin)
Part 5
次はAN EMOTIONAL CAFE ORCHESTRA と紹介された男性3人が登場して、アコースティック・ライブ風にスツールに座った。アイルランドには、AN EMOTIONAL FISH というロック・グループとCAFE ORCHESTRAという現代トラッド音楽のグループがあるんだけど、これはそれぞれのバンドのメンバー有志で構成されているのかな? ひとりはアコーディオンを抱えている。1曲目
は「DUBLIN」。アコーディオンの響きというのはとても哀愁があって、この曲にぴったり。ヴォーカルの人は低音の響きがちょっとフィルに似ている(高音は全然違うんだけど)。曲調とあいまって思わずしんみりとしてしまう観客と私。
2曲目は、ロングドレスを着た女性(MARIA DOYLE)がコーラスとして加わり、「FRANKIE CARROLL」 のこれまたしっとりとしたヴァージョン。
ところで、まったく自信はないのだけれど、「DUBLIN」の歌詞はオリジナルとは変えて歌っていたような気がした。この曲に限らず、今回はフィルへのトリビュートということもあって、それぞれのミュージシャンがそこかしこで歌詞を変えて、フィルに捧げる形にしていた出演者が多かったのかも?
人数がやたらに多いバンドが登場する(LONE WOLF featuring JEROME RIMSON and GUS ISODORE )。友人関係が集まってやってるふうだったが、2人の女性ダンサーが70年代風の踊りを見せたりして、なかなか楽しいセッション風。きのう1回だけリハをした、と言ってたわりにはまとまっていたと思う。曲は「SOMEONE OUT TO GET YA」と「THE MAN'S A FOOL」。
フィルの友人らしい男性(DEREK A. DEMPSEY)が、アカペラで「SOUTHBOUND」。 これがけっこうハチャメチャで、途中まで何をやってるのか誰にもわからなかったのだが、サビの部分に来たらようやく見えてきて、観客の間から手拍子とコーラスが起こり、結果的にはなんとか曲になった。よかったよかった。
ここにサックス・プレイヤー、RICHEY BUCKLEYが登場。お尻をうしろに突き出すようなかっこでサックスを吹く姿が「LIVE AND DANGEROUS」ビデオを思い出させる。今のアカペラおじさんの歌で「DANCING IN THE MOONLIGHT」を吹きまくる。でも、これはちょっと気の毒だったなあ。バンドがバックにいてこそ映えるサックスなんだから、どうしたってショボさは否めない。せめてあとからRE-FORMED THIN LIZZYと一緒に出てくればよかったのに。そういえば、TRIBUTE で来日したときに「DANCING IN THE MOONLIGHT」をやったのだけれど、あのときはサックスが入らないのがとっても寂しく感じたっけ。
少し盛り下がりかけてしまったかと思うところで、な、な、なんと! 「PARISIENNE WALKWAYS」 の独奏。これは曲が曲(元々ギターを聴かせるための曲だからね)だから、それなりにサマになってたことは言うまでもない。
しかし、あまりにも色々なタイプのゲストの登場で、観客のまとまりが少し悪くなってきた。ざわざわと落ち着かない雰囲気が出てきている。しかし、それを見越してか、ここでキメの1発が入ることになっていたのだ。
スマイリーの紹介に続いて、本日の特別ゲスト、というより主賓かな。フィルのママ、PHILOMENA LYNOTTが登場。この日いちばん大きな、そしていつまでも鳴りやまない拍手に目をうるませながら、観客に語りかける。
「I'D LIKE TO THANK EACH AND EVERYONE OF YOU FOR COMING FROM ALL OVER THE WORLD TO BE HERE TONIGHT(今夜ここに世界じゅうから集まってくださった皆さんに感謝いたします)」
正直言って、この日のハイライトは彼女のこのスピーチだったろう。感動した観客の鳴りやまない拍手に素晴らしい笑みを見
せ、何度も何度もうなずく彼女の姿はほんとうに感動的だった。
「I'D ALSO LIKE TO WELCOME MY GRAND DAUGHTERS CATHLEEN AND SARAH.I WANT TO TELL HIM, THAT CATHLEEN WANTS TO BE A ROCK STAR TOO (私のふたりの孫キャスリーンとサラがここに来ています。そして私は彼(フィル)に伝えたい、キャスリーンはロックスターを目指していると)」
残念ながらふたりの姿は見られなかったが(キャロラインも一緒だったらしい)、このときの大きな拍手はきっと天国のフィルまで届いて、彼をとても喜ばせたんじゃないかと思う。