King's Call(Tribute for Phil Lynott) (Jan 4,1996, Dublin)
Part 4
出演者と出演者の間は5〜10分くらいの間隔でつながっていて、この手の催しにしてはかなり段取りはいいほうだと思った。あとからよく考えてみると、楽器を使ったバンドと詩の朗読やアカペラの人との順番がよく考えてあって、多分朗読やアカペラをやっている間に後ろのほうでセッティングを変えていたんだと思う。
音合わせをしている間のつなぎは、スクリーンにビデオクリップやフィルの映像が流れ、音楽も聞こえているので全然退屈などしない。
というような段取りで次に登場したのはWHIPPING BOY。4人か5人編成のバンドで、「SHADES OF A BLUE ORPHANAGE」のかなりひねったヴァージョンを演奏した。ヴォーカルは、歌うというよりは叫ぶように歌詞を朗読しているのだが、これがすごい迫力。英語がわからなくても説得されてしまいそうな勢い。かすかに入るコーラスも効いている。最後のほうになって演奏が「WHISKEY IN THE JAR」に変わっているのもかっこよかった。
何かで読んだような気がするんだけど、彼らは自分たちの初期のアルバムにこの曲のカヴァーだか、この曲にインスパイアーされた曲だかを入れていたんじゃなかったかな。きょうのは多分その頃のとはまた違うヴァージョンだと思うんだけど、とにかくそのアルバムは入手しなくては、と決心する私なのであった。
大歓声でおくられたWHIPPING BOYのあとに、体格のいい男性がひとりで登場した。ぶっきらぼうな、でも真摯な姿勢でフィルの詩(「WARRIORS」)を朗読する。あとから知ったのだがアイルランドのボクサーでSTEVE COLLINSという人らしい。フィルとの関係は不明。
それにしても、もっとアイルランドの音楽事情を勉強してくるんだったと後悔しまくり。次々に登場するミュージシャンは、多分こっちの人だったら誰でも知ってる人たちなんだと思うのに、私にはまったくわからない。
フィルの追悼だからTHIN LIZZYの曲ばかりやるんだろうし、バンドを知らなくても楽しめるだろうとタカをくくっていたのだが、そりゃあ確かに楽しめることは楽しめた。でも、演奏してる連中のことを知っていたら、もっともっと3倍くらい楽しめたと思うのだ。ううん、次の20周年に来るときまでにしっかり勉強しておくぞ!と固く決心する私なのであった。←まだあと10年もあるぞぉ
さて、ステージにはTHE FRAMES D.C.が登場。トラッドっぽいアレンジで「THINGS AIN'T WORKING OUT DOWN AT THE FARM 」を演奏した。これは、バイオリンの入り方が絶妙で、もしかしたら私は原曲より好きかもしれない。
原曲は、3人編成のためにフィルの歌と歌の間にスカスカした隙間があるような気がしてしまうのだが、ここではその隙間にバイオリンがぴったりハマりこんでいて、実に気持ちがいい。もっとも私ってバイオリンが入ったアイリッシュ・ロックに極端に弱いから、冷静な判断とは言えないかもしれないけど。でも、きっとこのアレンジは、天国で見てるフィルも満足だったんじゃないかと思う。
ものすごい歓声に迎えられて登場したのは元SKID ROWのBRUSH SHIELS(だと思う。なにしろゆうべのTVで近影を見ただけだから断言はできない)。「フィルに捧げる」と言ってアカペラで歌い出した(OLD PAL)。歌詞の中にSKID ROWとかPHILOとかいう言葉が出てきたので、ひょっとしたらオリジナル?
次はアイルランドの若手バンドLIR 。「DIDDY LEVINE」を、最初のうちはオリジナルに忠実に、途中からかなり今っぽくアレンジしたカヴァーがなかなかかっこいい。(とそのときは思ったのだが、あとで原曲を聴き直してびっくり。元の曲そのものが、いま聴いても実に新鮮で斬新な作りなのよね。もう何十回目かわからないけど、改めてTHIN LIZZYのすごさを思い知りました)。ヴォーカルの子は、THE STONE ROSESのイアンかOASISのリアムか、というタイプだが、あんなふうに直立不動ではなくて、そこらじゅうを飛び跳ねながら歌うのが可愛い。
このバンド、アイリッシュ・ロックのコンピレーション・アルバムで1曲だけ聴いたことがあったのだが、それはAEROSMITHの「DREAM ON」そっくりで、ちょっと笑ってしまったのだが、かなり魅力的であることは確か。これまた要チェックバンドだと思う。