SHOH's LIVE REPORTS

King's Call(Tribute for Phil Lynott) (Jan 4,1996, Dublin)


Part 10

狂の渦の中でバンドはいったん引っ込み、アンコールを求める声と手拍子、それに歌声が会場じゅうにあふれる。全員が叫んでるかのようだ。もちろん私も思いきり拍手をし、大声で叫んでいる。

再び登場してのアンコール1曲目は「ROSALIE」。 さすがに日本公演と違って「何が聴きたい?」なんていうMCはない。歌の途中でジョーとミッジ・ユーロが登場して1小節ずつ歌う。が、このとき私はスコットばかり見ていたものだから、なんか声が違ってたなあ、と思っただけで、あとになって「あら? ステージの端のほうでギターを弾いてるのは誰かしら?」なんて考えていたのです、実は。

この曲の途中でサイクシーによるメンバー紹介があったんだけど、ダーレン、マルコ、スコット、ブライアンと紹介したものの、ミッジについては一言もなし。ちょっとあれは失礼よねえ。そりゃあ、バンドのメンバーではないかもしれないけれど、とりあえず横でギター弾いてるんだからさあ。

しかし、このメンバー紹介のとき、ブライアンは当然として、スコットへの歓声がものすごかったのは感動的だった。スコットが紹介したサイクシーのときよりも、ずっとずっとすごかったのだ。日本公演では、どんなにひいき目に見たってサイクシー目当てに来てる客が圧倒的に多かったんだもの。

次々にギタリストが代わり、バンドの解散説が流れたときも、スコットは、フィルとブライアンと自分さえいれば、それだけでTHIN LIZZYというバンドは存続し得るんだ信じていた、というのを昔どこかで読んだ覚えがある。この夜の拍手を聞いて、「ファンもちゃんとわかってたのよね。よかったね、スコット!」って肩を叩いてあげたくなっちゃった。

バンドがもう1度引っ込むと、スマイリーが今回のイベントの協力者の名前をあげて感謝の言葉を述べる。そして今度はバンドのメンバーだけで再登場。

「今夜は特別な夜だから、ほんとうはゲイリーに来てほしかったんだけど、我々の力ではできなかった。で、この曲をみんなにプレゼントさせてくれ。BLACK ROSEだ」サイクシーが告げて、あの名曲が今夜のラストを飾った。

そうかあ。結局ブライアンもゲイリーも出ないのね。でも、仕方がないことなのかもしれない。きのうのTVを見てても、サイクシーが浮いているのは明らかだし、今やブルーズ畑に行ってしまったゲイリーが「BLACK ROSE」を弾くために、サイクシーと一緒のステージに立つとは思えないものなあ。

ゲイリーのギターでサイクシーが歌う「BLACK ROSE」が聴けたら最高だったんだけど、今夜はもう一生分くらいの幸せをもらってしまったんだから、これ以上望むのは欲張りってものかも。

最後の最後まで、スコットもサイクシーも手を抜かず、全力を出しきっていた、と思う。日本公演では時に荒いこともあったツインギターの部分では、間違えませんようにと祈る気持ちで聴いてしまったのだけれど(私は親か)、実に実に丁寧に弾いていたのが印象的だった。ほとんど完璧だったと言えるんじゃないかなあ。観客の歓声と拍手がそれを証明していたと思う。

THE POINT からホテルまで、30分くらいかけて歩いて帰ったけど、寒さも心細さも感じないほど、あったかいもので心も体も満ちあふれていた。喉は乾いてたけど。

1.JAILBREAK
2.WAITING FOR AN ALIBI
3.EMERALD
4.COLD SWEAT
5.DON'T BELIEVE A WORD
6.THE SUN GOES DOWN
7.BAD REPUTATION(with Therapy!)
8.ARE YOU READY(with Henry Rollins)
9.STILL IN LOVE WITH YOU
10.SUICIDE(with Joe Elliot)
11.COWBOY SONG(with Joe Elliot & Rick Savage)
12.THE BOYS ARE BACK IN TOWN(with Joe Elliot & Rick Savage)
-ENCORE-
13.ROSALIE/THE COWGIRL'S SONG(with Joe Elliot & Midge Ure)
-ENCORE-
14.ROISIN DUBH(BLACK ROSE)


つづく

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