Def Leppard Live in Birmingham (Nov 15,1996)
PART 5
"BREATHE A SIGH"の最初の歌い出しのところ、聴くたびにどきどきする。ぽろんぽろんと呟くようにつまびかれるギターのあとに、「れっみ〜だうん」とかすれぎみのジョーの声が聞こえてくると、ぎゅっと心臓をつかまれたような気がしてしまうんだもの。
この曲、歌詞もすてきで、自分で訳しながら思わずため息をついてしまったほど。フィルってものすごくロマンチストで真摯な人なんだと思う。
愛する女性と(もしかしたら初めての)愛を交わしたあとで、隣に横たわる彼女の寝息を聞きながら、泣きたくなるほどの幸せをかみしめている……うーん、なんてロマンチックで真摯な愛なんだろう。
待ちこがれた甘い抱擁のためなら
少しくらい死んでもいい
きみは俺のとなりに横たわっている
運命がそれだけ満たされた
泣きたいけど、ため息をつこう
うっとりしすぎていると、いつも茶化そうとするジョーが呼びかける。
「よ〜お」 よ〜お
「よ〜お」 よ〜お
「よ〜〜〜〜〜〜お」 よ〜〜〜〜〜ぉ?ぉ?〜〜????
伸ばしすぎてわけのわかんない状態になっちゃった客席を叱るようにリックがドンッ!とバスドラを踏んだ。ジョーが耳に手を当てて体を傾け、「そ〜り〜?」と聞き返す。笑いが起こる。
「もう一度いくよ。よ〜〜〜〜〜〜お」 よ〜〜〜〜〜お(^^)/゙
「そぉ あ〜ゆ〜れでぃ?」 いえ〜〜!
「そぉ あ〜ゆ〜れでぃ〜〜〜!」 いえ〜〜〜!
ああ、とうとう"PHOTOGRAPH"から始まる怒涛のヒットパレードまで来てしまった。エンディングが近づいていると思うと、気持ちが乱れる。夢中で歌っていながらも、ステージのすべてを吸いこむように凝視してしまう。だって私にとっては今夜が最後なんだもの。ひょっとしたらあと4年は彼らのステージが見られないかもしれないと思うと、涙で視界が曇りそう。
乱れる気持ちにはおかまいなしにステージはどんどん進んでいく。今回のツアーは、今まででいちばん構成がタイトかもしれない。ギターソロの時間なんてないし、それぞれの曲にはさまれていたソロの部分も極限まで短くされているような気がする。それが全体をひきしめて、無駄な贅肉をすべて削ぎ落とした、ロックンロールの真髄といったショーにしているのだけれど、1分でも長く彼らを見ていたいと願うファンにしてみれば、痛しかゆしといったところ。ほんとにあっという間に終わっちゃうんだもの。
"ROCKET"の最後で「ろっくべーぶ かもん」の魅力的な低音を聴かせたあとは"ARMAGEDON IT" "POUR SOME SUGAR ON ME" となだれこみ、とうとう本編が終わってしまった。