SHOH's LIVE REPORTS

Def Leppard Live in Sheffield (Nov 14,1996)


PART 9

狂する観客にまだまだこれからだよとでもいうようにジョーの叫びが響く。「ぎたぁ〜! どらむす!」

"ROCKET"では、日本ではサビの部分でいっせいに拳が上がるのだけれど、こっちではチョボチョボという感じ。ちょっと寂しい。"SAY YEAH!"のところでジョーがマイクを私たちのほうにまっすぐ差し出しているのに、「いえ〜!」と叫んでいるのはごくわずか。こっちの人は宗教上の理由か何かで「いえ〜!」って言わないのか?

でも、隣りの女の子は最初のうちは歌ってるだけだったのが、私たちにつられて拳を上げるようになっていた。ね、こうやって一体感を味わうのも、なかなか気持ちいいでしょ。

ジョーがフィルと頬を寄せ合って歌うところでは、ふたりの金髪がまぶしい。なんだかドキドキしちゃう。サヴはひさしぶりにステージ端のほうで額に手をかざして可愛い子ちゃんはいないかなポーズをとってるし……下の客席から何本もの手がさしのべられて、まるで海藻が揺れてるみたいだ。

それにしても、今回サヴは実によく動く。昔、ヘッドセットをつけてラウンドステージでやってた頃は、そりゃあ当然のように全員が動き回っていたものだけれど、ああいう大掛かりなセットをやめ、ステージに並んだ4本のマイクに向かって全員が歌うようになってからは、動けないのもまあ無理はないなと思ってた。そのわりにフィルとヴィヴはよく動いていたけど。

でも、今回、コーラスの途中でも自分のパートが終わると、弾かれたように飛び出していって、ステージを走り回るサヴの姿が何度も見られた。その代わりにヴィヴがけっこう長くマイクの前に立っていたような気がする。ひょっとしたら地元でのライブということで、コーラスの分担を少し変えて、サヴが動けるようにしたのかもしれないな。

翌日の新聞の写真でも「SHEFFIELD-BORN RICK SAVAGE」という紹介のされ方をしていたくらいだから。やっぱりサヴとジョー(それにスティーブ)は、ここでは特別な存在なんだと思う。

なんてことを考えてるうちに"ARMAGEDON IT"が始まってしまった。いつもはキメのところをジョーとフィルが1本のマイクで頬を寄せ合って歌うのだけれど、今回はなぜかヴィヴとジョーだった。フィルがギターを弾きながらステージ左端のほうにいっちゃてたからかしら?

でも、でかいジョーがちっちゃなヴィヴの顔に覆いかぶさるようにして歌っているシーンは、なんだかヴィヴがキスされてるかのような怪しい雰囲気で、なんとも倒錯的でセクシー。←変態か、私は(^_^;)ゞ

鳴りやまない拍手、口笛、そして悲鳴。ほんの少し間があってジョーがアカペラで歌い出した。

うお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!

ものすごい歓声。世界じゅうのロックファンが知ってるんじゃないかと思える大ヒット曲が始まった。リックの叩き出すリズムに合わせて観客が自然発声的に掛け声を出し始める。ジョーが手を挙げて煽るまでもない。"POUR SOME SUGAR ON ME" だもの。

予想していた通り、あの早口で(日本人にとって)複雑な歌詞を、イギリス人たちはひとことも誤魔化さずにしっかり歌っている。う、くやしい。私だって必死に覚えたけど、ところどころ舌がひっかかってしまい、そうなるととたんに記憶からふっとんでしまうのだ。なんとかサビのところでみんなに追いつき、一息入れる。でも、こんなことで神経使ってたら肝心のステージに集中できなくて馬鹿みたい。いいや、私は日本人なんだもの、日本人らしい楽しみ方をしようっと。拳を振り上げ、思いっきり叫ぶ。

この曲のコーラスは、他の曲とちがってえらく男くさくて、それがお腹に響くような気持ちよさだ。やってるほうも気持ちいいんだろうなあ。「うっ!」って。

だんだん、だんだん、だんだっ!

最後のキメがぴったり決まり、ジョーが大きく両手を上げた。


つづく

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