SHOH's LIVE REPORTS

Def Leppard Live in Sheffield (Nov 14,1996)


PART 11

ゅうじゅうに熱くなってしまった頭の上に、リックの叩くリズムがふってくる。手拍子が始まる。あれ? なにやら聞いたことのあるメロディだなあ。

これって?

最初のうちわからなくて、2フレーズ目くらいまでいったときに一緒に歌っている自分に気がついた。ジョーが客席にマイクを差し出し、コーラスを客にまかせると、全員が大声で歌い出した。ROLLING STONESの"HONKY TONK WOMAN"だ。いかにもイギリスらしい選曲。隣のおじさんも得意そうに大声で歌っている。

曲が途中で終わってもリックのドラムはリズムを刻み続ける。そのリズムに合わせるようにジョーが汗でびっしょりになったタンクトップを脱いで上半身裸になってしまった。

遠くからだからよく見えないけれど、ちゃんと脱げるくらいにダイエットしたってことなのかしら。確かにおなかのあたりはすっきりしているような気がする。最近入れたという刺青はよく見えなかった。

脱いだタンクトップを持ったままステージ前方に歩み寄り、客席から差し出されたTシャツと交換した。すぐにそれを着ようとしたが、まるで小さ過ぎて入らない。伸び縮みのするTシャツをあんなに伸ばしても着られないなんての、初めて見た。あきらめたジョーがそれを客席に戻しているところに、スタッフが別のTシャツを持っていったが、懲りないジョーはそれをまた客席に渡して、別のシャツを受け取った。

今度はらくらく着られた。多分XXLだと思うけど、あのジョーが着てもダブダブになるくらい大きい。でもって、それはTシャツではなくて、ジョーが贔屓にしている地元サッカーチーム、シェフィールド・ユナイテッドのユニフォームだったものだからもう大変。会場の半数近くの客からブーイングの嵐が巻き起こった。私のまわりでも「ブ〜〜〜!」という声が聞こえる。対抗チーム、ウェンズデーのファンなのね。

しかし、そんなブーイングもものともせず、ユナイテッドのユニフォームを着たままジョーが叫んだ。「俺は地獄の炎の王だ〜。お前たちにこれを与えよう!」

うわぁ、一昔前のヘヴィーメタルのノリだ。でも、そんな叫びが自然に聞こえるくらい、今夜の彼らは若々しい。

ずっと続いていたドラムにかぶさるようにギターが鳴り響く。歌が始まる。そうか、最後はこれなのね。"ROCK OF AGES"、いかにもラストにふさわしい曲。

これが最後の曲とみんなわかっているから、手拍子も歌も思いきり大きい。私も手が腫れるほど叩きながら、喉がつぶれるほど叫んだ。

「ふぁっどぅゆぅうぉんと?」 あ〜いうぉんろっくんろ〜! おんり〜ろっくんろ〜!

そう、私たちはロックンロールが欲しい。あなたたちが私たちに与えてくれる、楽しくて刺激的で感動に満ちたロックンロールが欲しい。そのために今、ここにこうしているんだもの。

そして、私たちを、そして自分自身を裏切らずにロックしていてくれる限り、私たちはどこまでもついていく、一緒にロックする!

その場にいた誰もが、きっと私と同じことを感じていたと思う。そしてきっとメンバーたちも。最後に私たちに向かって大きく手を振りながら、5人はステージ横の暗がりに消えていった。


つづく

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