ロマンチックなはずの曲もみんなで元気に歌ってしまい、ああ気持ちよかった、なんて思ってると、ドラムがシャッシャッシャッシャッっと鳴り出した。サヴのベースがそれにかぶさるように鳴り、ギターの音が……リック以外のメンバーが４人きっちりとステージに並ぶ。一瞬照明が暗くなり、色とりどりのレーザー光線が交差し始める。

ああ、"HYSTERIA"だ(;_;)。 どうしてだかわからないのだけれど、一気に涙があふれてきて、一瞬目の前が見えなくなってしまっていた。DEF LEPPARD を初めて知った曲でもあるし、リックのことやスティーブのことやなんだかいろんなことが頭の中をかけめぐって、感情のコントロールがきかなくなってしまった。ステージの床や天井や壁に色々な模様が描き出され、あのビデオクリップを思わせるような大人っぽくも美しいライティングに照らされて、メンバーは淡々と演奏している。

ギターソロのときにジョーが語りかけるように、いえ、というよりもひとりごとのようにポツポツと歌うのがなんともいえず感動的で、私はこの"HYSTERIA"は一生忘れないだろうと思った。

シ〜ンとしてしまった会場にジョーがかすれ声で「THANK YOU」「どうもありがとう！」と声をかけた。「英語で話してごめんね。俺の日本語は最悪なんだ。でも、理解してもらえるよね？」「イエ〜イ！」（ほんとか？）という観客の答えに対して「LOVELY!」と言ったジョーはやっぱりイギリス人。

静かな曲の次はにぎやかにということで、次の曲は"MAKE LOVE LIKE A MAN" 。最初にジョーがお茶目に「アウッ！」と叫んで始まったこの曲、全員そろっての迫力のあるコーラスが凄い。「POUR SOME〜 」もそうだけど、この人たちの曲にはため息が出るほど美しいコーラスとは別に、いかにも男だぜ！って感じの掛け合い的なコーラスも多くて、これがキマるとめちゃくちゃかっこいい。

相変わらず客も大声で歌ってる。"MAKE LOVE LIKE A MEN"のあたりは、ライブで客を歌わせることを考えて作ったとしか思えないフレーズだしね。

最後のところ、終わったかとみせて、ジョーがアカペラで歌い出し、音の終わりを長〜〜く伸ばして、こっちの息が苦しくなったところでドカドカドカッと演奏が入って終わり。う〜ん、のせるなあ。

にぎやかに終わったあと、ジョーの「MR.BLUES！　MR.KING OF ROCK N' ROLL！」という紹介でフィルのギターソロが始まった。意外にもアコースティック・ギターで、まるでクラシックのように静かなフレーズを奏ではじめる。びっくりしていると、今度はちょっとブルースっぽいリフを弾き初め、みんなが手拍子を。次にギターをエレキに持ち替えてノイジーなソロに。

ギターのテクニックはよくわかんないんだけど、それほど凝ったことはしてなかったみたい。最後のほうでちょっとだけ速弾きっぽいのをやって、そのあと少しの間が入り、独特のリフが繰り返される。それがグイーンと長く長く伸ばされて、ああもう息が続かないと思ったところにドラムがダン！ と入って「WHITE LIGHTNING」が！

このつなぎはめちゃめちゃかっこよかった！

ジョーの歌はちょっと低音がきつそう。彼の場合高音がきついというのはよくあるけど、こういうのは珍しいパターンかも。でも、コーラスが入るときちんと曲としてのまとまりが出てくるところがこの人たちのすごいところだと思う。

こういうところで、DEF LEPPARD ってやっぱり５人のバンドなんだなあ、って感じる。ジョーの声帯があんまり強くないせいもあるんだろうけど、どの曲にも必ずコーラスが決まる部分があって、誰かしらがきっちりとサポートしてる。

アルバムで聴いてるときは誰とか気にしてないけど、ライブのときには、「あれっ、この声は誰だろう？」と、思わず双眼鏡でチェック。ギター２人が動き回ってるときはサヴやリックがちゃんと歌ってたし。ヴィヴも自分のコーラスの番がくると、一生懸命マイクスタンドのとこまで走って歌ってたのが印象的だった。「あ、この人、きっとこのバンドでうまくいく」って思えた瞬間だったかも。