SHOH's LIVE REPORTS

Bon Jovi Final Live In Japan (May 18-20,1996)


PART 1

うとう最終日が来てしまった。おまけに月曜日。1日仕事をしながら、もし何か起こって行けなくなったらどうしよう、とそればかり考えてた。

案の定、打ち合せが長引いて、職場を飛び出したのが6時過ぎ。渋谷から東横線の快速に乗って桜木町に着いたのが7時15分前くらい。大船行きの電車はなかなか来ない。ホームで地団太踏みながら待ってる人が私のほかにもたくさんいて、なんとなく安心してしまった。

関内で電車を降り、日本中から集まったんじゃなかろうかと思うほどのダフ屋の群れを振り切り、横浜スタジアムに走る。きょうに限っていちばん遠い入口から入らなくてはならない席だ。砂ぼこりをけたてながら走っていると、グランド入口と書かれたところに青いワゴン車が2台入っていくところだった。

「あ、ジョンたちが乗ってる車だ!」

遅れそうになって走ってた人たちが、それでも車のほうに駆け寄る。ガラスが黒っぽくなっていて、中がよく見えない。でも、きっと向こうからは見えているんだろうと勝手に決めて手を振った。

そして、さらに走る走る。そのへんに立ってたおじさんが「前座があるから走らなくても大丈夫だよ」と声をかけてきたが、前座ったって例のブラスバンドでしょ? あれってあっという間に終わっちゃうじゃない。と思ってる間にそのブラスの音が聞こえてきた。やばい。

最後の階段をゼイゼイ言いながら走り上がり、すでにカメラチェックもしていない入口から走りこみ、スタンド席に出てみると、いままさにブラスバンドがひっこむところ。

あ〜あ、CINDERELLAのギターみたいにチューバを振り回す人を見損なっちゃった。

そしてティコが、デビッドが、ヒューが、リッチーが現われて、火花が炸裂して大歓声が上がる。ジョンの声が聞こえてきた。「きゃあ、始まっちゃう(^^;) 」内心あせりながらもステージに向かって手を挙げ、アリーナの入口に向かってさらに走り、ようやく自分の席にたどりついたときには"LAY YOUR HANDS ON ME"が終わるところだった。

しかし、土日とも開演が6時だったために、まだ明るいうちから見ることに慣れてしまっていたから、最初から暗くなったスタジアムで見るこのセットはすごく新鮮。

きょうのジョンは黒のジーンズに黒くて丈の長い革ジャケットの前を開けてはおっていて、ものすごくかっこいい。きのうまでの茶色い革パンツに黄色の短い革ジャケットもラブリーだけど、やっぱりこっちのほうが数倍すてき。

リッチーも、きのうの最悪に趣味の悪いサテンのブラウスはやめて、黒のTシャツの上に黒のジャケットで渋く決めている。髪をもう後ろで縛ってるのも、きのうまでとは違うヴァージョン。彼って顔が小さいから、こっちのほうがすっきり見えて好き。

寒いかと思ってしっかり着こんできた体が暑くなってきたところで、さらに暑くなる曲が始まってしまった。そう「ば〜っどめでぃし〜ん!」。ジョンの煽りに応えて、客席から大きな声が返る。歌いながらリッチーのそばに行って、向い合って腰をふるジョンはとってもお茶目。

リッチーのギターソロのとき、いつもスクリーの前まで走っていって、スクリーンのリッチーに向かっておおげさなお辞儀をしてみせてたジョンだけど、きょうはちょっと違うヴァージョン。脚を大きく開いて仁王立ちしたままリッチーの姿を見つめている。そして最後に「まいりました」というように両手を大きくあげるジェスチャーが会場の笑いを誘っていた。

ジョン「こんばんわ、ヨコハマ! 今夜は長い夜を一緒に過ごそうぜっ! きのうのTVを見た奴はいるかい?」

SHOH「は〜い(^^)/゙」

そして始まった3曲目はなんと、1日目にやって、きのうはやらなかった"ALL I WANT IS EVERYTHING"。「THESE DAYS」の中では日本盤のみのボーナストラックという位置づけの曲なのに、ジョンはけっこう気に入ってるみたいね。何か思い出があるのだろうか。わりとフックのない曲でこういう場所でやるのは難しいと思うのだけれど、それを一生懸命歌いこなそうとする姿が心をうつ。

このあたりで気がついたのだけれど、きょうの客層ってけっこういいかもしれない。平日の横浜スタジアムということで、予想はついていたことだけれど、アリーナでもけっこう空席が目立つ。私の前の席なんて6つくらい空いたままだ。スタンドだってきのうみたいに振り返ってみて「ぎっしり」という印象はない。それなのに、会場全体から声が聞こえる。それも、さっきの"ALLI WANT IS EVERYTHING" みたいに普通は知らないような曲でも自然発生的に歌ってる声が聞こえる。

土曜、日曜には、それほどのBON JOVIファンでなくてもお祭気分で来てたかもしれないが、今夜ここに来てるのは、ほんとうにBON JOVIが好きで好きでたまらない人たちなんだよね。

そして、ジョンがあのイントロを歌い始めた。"YOU GIVE LOVE A BAD NAME" だ。みんなで最後の「ば〜っどね〜む!」を大声で合わせ、大合唱モードに突入。この曲がきてしまえば、もう何があっても声をふりしぼって歌うしかない。土日の寒さでしっかり風邪をひいてしまったけれど、きょうこのとき燃えつきなかったら、なんのために今まで生きてきたのかわかりゃしない。

ちょっと寂しいのは、いままでこの曲の"LOADED GUN"のところでジョンがやってた、銃を客席に向けて撃つような仕草がなくなってしまったこと。確かに今のジョンには、あのアクションは子供っぽいかもしれないけど、でもでもやっぱりやってほしかった。

きょうのジョンは声の調子もすごくいい。というより歌うことが気持ちよくって仕方がない、といったふうに歌ってる。初日は、一生懸命やっているんだけど、どこか体の調子が悪そうでちょっと心配だったんだけど、きょうはそんな様子はみじんも見せない。

デビッドがイントロを弾いては途中でやめてしまうという、きのうもやったネタをまたやって、"RUNAWAY"が始まった。わかっていても、中断されるたびに「キャアー」という悲鳴をあげるファンも可愛いものよね。

このあたりでジョンは上着を脱いでしまい、襟ぐりが大きく空いたブルーの長袖Tシャツになった。ギターを抱えている。映画の撮影のために胸毛をそってしまったから、胸元がすっきりしてるのが、なんだか清潔感があって好き。

今回のツアーで気がついたのは、ジョンがギターを持つ回数が増えたってことかな。髪も短いし、なんとなくブルース・スプリングスティーンを思い出してしまう。顔も昔より男っぽくなってるしね。本人にもそんなつもりがあるんだろうか?

このへんまではきのうと同じ感じで来たのでちょっと油断していたら、とんでもないものが始まってしまった。うわぁ、"BED OF ROSES"だぁ。今回は"THESE DAYS"とか"ALWAYS"とかバラードが多い構成だったから、きっとこの曲はやらないんだろうなあ、なんて思ってたもので、びっくりして、次に感動して涙が出てしまった。曲の途中でリッチーに向かってつぶやくように歌いながら歩いていって、スクリーンの下まで行ったときには、なんだか胸がドキドキして苦しくなってしまったほど。リッチーのつけるハーモニーもものすごく感動的で、この曲をこんなふうに聴けたのは初めての体験だったかもしれない。

そうそう。土日には禁止されていたペンライトも、きょうはお咎めなしで、後ろを振り返るとライターの火もそこかしこに揺れていて、それはそれは夢のようなひとときだったなあ。

みんなが雷に打たれたように立ちすくんでいるところに始まったのは、げげげげ、なんと"WILD IS THE WIND"! この曲をライブで聴くのって、何年ぶりくらいかしら?

1990年のカウンドダウンで来日したとき以来だから……なんて感慨にふけっていたら、"BLOOD ON BLOOD"が始まっちゃった! これは昔の「熱血」という感じよりもずっとおとなっぽくなってる気がする。「そんな若い頃もあったよね」ってごく自然に口にできるような大人に、彼ら自身がなっちゃったんだなあ。ちょっと寂しい気もするけれど、私たちだって一緒に大人になってるんだものね。


つづく

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