「南っ・・・。」











真実の詩




















「くそっ・・・悪趣味。」



ボヤきながら、階段を駆け上がる。


何が悪趣味かと言うと、まったく、同じなのだ。


千石が飼われていた、洋館と。


外装だけではなく、部屋の位置、階段、窓、すべて。


「あいつの部屋は一番上・・・・。バカみて・・・なんで覚えてるんだよ。」


クッ、と自嘲した笑いを浮かべた。








「はぁっ・・はっ・・・ドアの飾りもあの頃といっしょ・・・とことん趣味悪い。」


千石は、一回大きく息を吐いて、ドアに手をかけた。








「おやおや、随分早いですねぇ。」


ドアを開けると、そこには待ってました、と言わんばかりの


観月が椅子に座って、千石のほうを観ていた。


「その様子だと、迷わず来れたみたいですね?」


「おかげ様で。・・・・南は?」


「あぁ、彼ですか。彼なら別室で丁重におもてなししていますよ。」


にっこりと笑い、観月が言った。


チャキッ


「おや、それは僕があげた銃ですね。」


愛銃ブラストを構えた千石に向かって言った。


「不本意だけどね。使いやすいんだよ。」


「それはそうでしょうね。あなたのための銃ですから。」


「あぁ、おかげですぐにでもお前を殺せそうだよ。」


カチャ


そういいながら安全装置を外す。


が、観月は動かない。


(なんか策でもあんのか・・・?)


千石は周りの気配に気をつけながら、トリガーに指をかける。


「神に祈る時間をやろうか?」


「なぜですか?」


「あんたはこれから、死ぬからだよ。」


「いいえ、僕は死にませんよ?」


と、また、にっこり笑った。


「寝言は寝て言えよ。」


「あなた僕を殺せない。」


そう言って、椅子から腰をあげて、千石のほうへ歩いていく。


「く、来んなよ!」


「嫌です。」


コツコツを靴をならし、千石へ近づいていく。


「来るな!」


千石はブラストを構えて叫ぶ。


「嫌なら、引き金を引けば良いでしょう?」


観月は足を止めることなくどんどん近づいていく。


「来るなっ!!」


千石の声はだんだん涙声のようになっていく。


「来るなっっ・・・くる・・な・・・・っ」



観月はブラストの銃口が体に触れるところまで近づいてきた。


「撃たないんですか?」


千石はガタガタと震えながら、ブラストを構えている。


「そこじゃあ、僕は死にませんよ?」


そう言って、千石の腕をとり自分の左胸へと銃口をもっていく。


ここです。と付け加えて。


「あ・・・・・・。」


「さぁ、殺すんでしょう?」


「っ・・・・でき・・・ない・・・・・。」


千石は涙を零しながらそう小さな声で言った。


何かに耐えるような、苦しみの表情を浮かべながら。


ぎゅ


観月は顔を伏せた千石を抱き寄せた。


そして、耳元で囁く。


“イイ子。”と。


カチャンッ


次の瞬間、だらりと力が抜けた千石の手からブラストが抜け落ちた。


「僕の元へ戻りますか?」


千石は観月に抱かれたまま頷く。


「それじゃあ、それを証明して頂かなければいけませんね。」


「しょう・・・めい?」


千石が小さく繰り返す。


「あなたの忠誠が観たいんですよ。」


「いいですね?」


コク、とまた頷いた。


観月はにこっと綺麗な笑みを浮かべると、ドアの前の


黒スーツの男に目で指示を出す。


男は一礼して、部屋から出て行った。


そして、数分後。


「連れてまいりました。」


礼をして男が戻ってきた。


南を連れて。


南は全身血塗れで、服も破けている。


男に抱えられぐったりとしている。


が、千石に気づいた南は顔をあげ、何か言おうとして口を動かした。


千石は、その南の姿を見て、ひどく哀しそうな顔をした。


が、それを南に悟られまいと、にこっと笑って見せた。


「さぁ、あなたの忠誠を見せてください。」


観月は見計らったかのようにそう言った。


千石は、昔と同じように“はい。”と返事をすると、


観月の前に膝をついた。


南の方を見ないようにして。


そして、


観月の細い手をとり、その甲に口付けを落とした。









- あなたにかわらぬ忠誠を。-







その声は、清んだとても綺麗な声だった。


南は目を見開き言葉をなくしていた。


プライドの高い千石が、他の誰かに跪き、忠誠を誓っている。


それは、千石にとって耐え難い屈辱である、と判っているから。


千石はチラ、と南の方をみると、ごめん、と目で言った。






なんでだよ?



なにがごめんなんだよ?



なんでオマエが謝るんだよ?



こんなの違ぇよ。






「よく出来ました。」


観月はそれに満足したのか満面の笑みで南の方を見ながら言った。


あてつけの様に。




「オマエは・・・オマエは!千石にそんなことさせて楽しいかよ!?満足かよ?!」




南は叫んだ。


掠れた声で必死に。


千石は虚ろな目でそれを見ている。




「えぇ。満足です。僕はキヨスミを愛していますから。」




「“愛”だ?笑わせんじゃねぇよ!そんなの愛でもなんでもねぇよ!」




「あなたに何がわかるんですか?」



「わかんねぇよ!わけわかんねぇよ!!でも、間違ってるってことだけはわかるんだよ!」




「五月蠅い男ですね。」




観月は眉を寄せ顔を歪ませた。


が、次にはニヤ、と不気味な笑いを浮かべた。




「んふ。そうだ。イイコトを考えましたよ。」



「キヨスミ、あの男をその銃で撃ちなさい。」




まだ、跪いた状態の千石に向かって、観月がいった。


千石はその言葉にビクっと反応し、落ちていたブラストを持って


ゆっくりと立ち上がった。





「さぁ、心臓を撃ち抜きなさい。僕の教えたとおりに。」


千石は、ゆっくりと両手でブラストを持ちあげた。


トリガーに手をかける。


ゆっくり、ゆっくり。


それは、何かに抵抗するように時間を稼ぐようにゆっくりと。


それに対して南は、とても






- ごめん南。-


- ばか。2人で死ぬより、1人でも残ったほうが合理的だろ?-


- ごめん。-


- 気にすんなよ。-


- 最後まで迷惑かけっぱなしだったね。-


- まぁな。出会い方もすごかったな。-


- うん、俺大泣きしたね。-


- もっかいだけ、あの街に行きたかったな。-


- あの街?-


- 俺と南の逢った町。-


- あぁ。そうだな。-


- じゃあね、南。-





ガゥンッッ




カチャンッ・・・











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アトガキ


やっと書いたかと思えば、また続く。

オマエ性格ワルィなー。なんて自分自身に突っ込んでます。

でもホントにほんとで次で終わり!!

つか、タイトルがいっぱいいっぱい。



2002.11.4          ユウリ