氷の瞳と始まり
「ん・・・、朝か。」
千石はまだ眠い目を擦りベットから這い出した。
そして、南が寝ているリビングへ向かう。
ガチャ
「南?」
しかし、そこには誰もいない。
寝ていたソファに触れてみる。
そこはとても冷たく、南が小1時間かそこらに出て行ったのではない、と知るには十分だった。
「ま・・・さか。」
千石の顔が青ざめる。
「くそっ・・・」
ちっ、と舌打ちをすると、千石はクローゼットに向かう。
適当に服を引き出して着た。
愛銃ブラストのガンホルダーを腰につけ、ブラストの弾を確認しそこに入れる。
そして、鍵も閉めずに千石はアジトを飛び出した。
(あいつだけは・・・!あいつだけは・・・だめなんだよっ)
と心で呟きながら走る。
そして、いきなり暗い裏路地に入った。
すると、後ろから男が追うようにして、その路地に入った。
しかし、そこには千石の姿はない。
「どこ行きやがった・・・。」
男はキョロキョロと辺りを見回す。
あたりと言っても、他に道のない一本道なので隠れることろは限られている。
あるとすれば・・・・
「そこかぁ!」
そう言って、積み重ねられた箱を撃った。
が、反応はない。
「なんだと・・・?!他に隠れられる場所など・・・ま、さか。」
そう言って男は上を向いた。
が、ときすでに遅し。
見上げたときには千石が壁に作られた出っ張りから、飛び降りたところだった。
「なっ・・・」
千石は男の上に飛び降りた。
「お兄さん、後尾けるときには、気配くらい消そうね。」
仰向けに倒れた男の上に馬乗りになって千石が言った。
「は、はめやがったな。」
「ん?そんなことないよ?てか、俺を尾けてるほうが悪いんだし。」
にっこり笑っていった。
チャキ
ブラストを男の額に当て
「じゃあ、そんなおバカお兄さんにお願い。」
と、ウインクをして言った。
そして、男の胸元へ手を伸ばす。
「んーと・・・。」
ごそごそと上着の裏をあさる。
「なっ・・・。」
「これ貸してねv」
そう言って、千石が上着の内ポケットから出したのは、携帯電話。
「これ、あいつの番号も入ってるんでしょ?」
「は、知るかよ。」
男はニヤっと笑っていった。
「俺、焦らされるの嫌いなんだよね。さっさと、吐いてくんない?」
カチャリ
にこっと笑って安全装置を外し、引き金に指をかける。
「そんな脅し・・」
ガゥンッ――・・・・
細い路地に銃声が響く。
「がぁっっ・・・いてぇっ!!耳がぁぁ!」
「うるさいな。ちょっと掠っただけでしょ?」
煙のでるブラストにフッと息をかけながら言った。
「お前・・・イカれてるっ・・・・。」
ガタガタと震えながら男が言った。
「うん、俺は、大切なヒトのためなら何人死のうが関係ないもん。」
そう言って、またブラストを額に当てなおした。
「さぁ、この電話であいつに電話して。」
携帯電話を男に握らせる。
男はガタガタと震える手で、番号を押した。
ぷるるっと発信音が響く。
っ――・・・。
『何かありましたか?』
「そ、それが・・・あ・・」
男が話し始めた。
「貸して。」
千石は男の手から携帯を奪った。
「俺だよ。」
『久しぶりですね。キヨスミ。』
「あぁ、出来れば声も聞きたくなかったけどな。」
『それはひどいですねぇ。』
「俺は、お前と世間話なんてしたくない。・・・そこに、南・・・俺の相棒が行ってんだろ?」
『あぁ、“彼”ですか。いますよ。今ここに・・』
「てめぇ手ぇ出してみろ!」
『出してませんよ、まだね。』
「お前が用のあるのは俺だろ!南は関係ない!」
「んふ、そんなに大事ですか?彼が。」
ワイングラスを回しながら言った。
『あぁ。』
「妬けますね。」
『気持ち悪ぃこと言うな。』
「満更、嘘でもないんですよ?」
『御託はいい。俺がそっちへ行ってやる。それまで、南に手ぇ出すなよ。』
「迎えをやりましょうか?」
『いらない。』
ブチッ・・・・ツー、ツー。
「聞きましたか?南クン。」
そう言って、観月は、男二人に両腕を抑えられている南に目を向けた。
「っ・・・。」
「んふ。」
観月は、鼻で笑うと、高価そうなアンティークチェアーから腰を上げ、南の前に歩いてきた。
「僕が憎いですか?君のタイセツな彼を縛っていた僕が。」
「あぁ、殺したいくらいな。」
ニィっと片方の唇を上げて言った。
「それは残念ですねぇ。」
「自信あるみてーじゃねぇか。こいつら(SP)がいなきゃなんにもできねぇクセして。」
「・・・聞き捨てありませんね。」
「かかって来いよ。」
「・・・・・んふ。そう言うことはもっと頭の悪い連中にやった方が良いですよ。」
「腰抜けが。」
「なんとでも。」
観月は嫌味に笑うと、SPに指示をして部屋を出た。
(くそ・・・意外と頭が切れるってわけか。)
「っはっ・・・はっ・・・ここか。」
大きな門を見上げて呟く。
「南っ・・・・。」
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アトガキ
うへー、ラストまで後2、3歩でございます。
がんばります!
もう、それだけです。
観月さん話し方が分かりません。
2002.9.19 ユウリ