*「HARD NORMAL DADDY」(SQUAREPUSHER/WARP)
*「ECHO EXIT」(KEN ISHII/R&S)
*「X-MIX FAST FORWARD&REWIND」(KEN ISHII/K7!)
*「HARD NORMAL DADDY」(SQUAREPUSHER/WARP)
私、前回の「FEED ME WEIRD
THINGS」のときに、彼の音楽をドラムンベースと書いたのですが、ここに来て、それを訂正したいと思います。この人の音楽はもう、ドラムンべースじゃくくれません。たぶん、本人も自分の作ってる曲をドラムンベースだとは思ってはいないのではないでしょうか。
ベース音とブレイクビーツは相変わらずですが、ジャズやファンクの要素を強く感じます。音がストレートにびーんときたかと思うと、こちらの引き気味な爪先をとってひっくり返してくれるかのように、ゆがんでいったりして、ちゃめっけたっぷり。
自分の周りにある音で、とにかくやりたい放題、遊んでみましたという感じで、すごくユニーク。それでいて、あいかわらずロマンチックです。
テクノに興味はなくても、エイフェックス・ツインの音楽は面白いという人は多いようですが、それと同じことが、このスクエアプッシャーの音楽にも起こるのかもしれないと思うことがあります。
*「ECHO EXIT」(KEN ISHII/R&S)
CDの帯には「『EXTRA』に始まる『Jerry Tones』プロジェクト最終作」とありました。「EXTRA」「Stretch」「Circular
Motion」のどのCDにも、「『Jerry Tones』プロジェクト」なる能書きは無かったのですが、いつの間にかそんなプロジェクトが始まっていたようです。
もっともケン・イシイさんはあるインタビューで「Jerry Tones」を「ああいった音をどうすれば、そして、どこまでみんなに受け入れてもらえるか」を考えながら作ったと言っていたので、それが今になって「『Jerry
Tones』プロジェクト」という名を宣伝部から与えられた、ということかもしれません。
そういうプロジェクトうんぬんのネーミングはともかく、この「ECHO EXIT」は、今までの「EXTRA」「Stretch」「Circular
Motion」「Overlap」と同じく、疾走感にあふれていてかっこいいです。自分でギターを弾き、その音をフューチャーしている(スクエアプッシャーみたいですね)のも面白い。
フレア名義の実験精神にあふれる曲でも、「Jerry Tones」のような分かりやすい曲でも、どんな曲でもかっこよさと気品を失わないのがイシイさんのすごいところだと思います。
「Circular Motion」を聴いたときに、R&Sからケン・イシイ名義でリリースするときは、こういうアグレッシブな曲ばかりにしていくのかしら、と思ったのですが、どうやら「ECHO
EXIT」は「『Jerry Tones』プロジェクト最終作」だそうですし、また、違った路線を行くのかもしれません。
*「X-MIX FAST FORWARD&REWIND」(KEN
ISHII/K7!)
ケン・イシイさんのDJはお客をがんがん踊らせるというより、自分の好きなトラックを使っていかに自己を表現するか、という傾向があるようで、最近は特にそれが強いような気がします(以前はそれほどでもなかったような気がする)。そういうDJプレイも実験的で面白いのですが、踊りたい客の側からすると評価の分かれることが多いようです。
それがもろに出てしまったのが「MIX-UP Vol.3」で、これは「ケン・イシイのフェイバリット・トラック集」以外の何者でもありませんでした。電子音楽の歴史みたいな選曲をよく繋いだなあ、と感心はします。しかし、現場のDJプレイとこういうミックスCDとが、質の違うものであることは重々承知ではありますが、この選曲だったら、わざわざ、曲をつながなくても「ケン・イシイのお勧めの曲」というコンピ盤にでもすればいいのに、という声があったのも事実です。
で、今回の「X-MIX」。これは、ドイツのK7!というレーベルから出ているシリーズで、いままでデイヴ・エンジェル、ローラン・ガルニエ、リッチー・ホウテンなどの大物をフィーチャーし、また、テクノ・クイズ、DJトランプなどのユニークなオマケをつけることでも有名でした。そして、最新作には、ついにケン・イシイさんが来ました。ただし、オマケは無し。楽しみにしていたのに、なぜだろう。
それはともかく、内容ですが、U.F.O、Coldcut、Locust、Squarepusher、Silent
Poets、Symbols&Instrumentなど、新旧国内外の名作をつなぎ、合いの手のように、自分の新曲「ECHO
EXIT」や「DIR.R」などを入れています。曲が変わるたびに、「おおっ?」と気を引かれてなかなか楽しいです。この「X-MIX」は、現場での以前のイシイさんのDJプレイにわりと近いものではないかと思います。そのせいか、「MIX-UP
Vol.3」よりも聴きごたえがあります。
イシイさんはDJというよりアーチストなのだと思います。その証拠というか、ライブはすばらしいです。
続きを読む
最初に戻る