徒然草 16    
合唱曲集「夢の風」 解説

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<川崎絵都夫> による作品ノート

風よ

詞を見た時に西部劇が思い浮かび、カントリー&ウエスタン風にギターを弾きながら歌えそうな曲になりました。
A〜Bに出て来るGisやFisはブルースハープと呼ばれるハーモニカを意識したものです。少しポルタメント気味に歌って下さい。Cから男声、女声の掛け合いを意識して下さい。Gから口笛かハミングで自由に(Solo、二つに分かれて交互に、など)表現して下さい。

海を見に行こう

作詞の佐藤さんによると、この詞は東京湾岸の旧海岸通りを、レインボーブリッジへ向かって走っている時に思い浮かんだそうです。知らずに読むと、もっと自然の豊かな所を想像してしまいますね。皆さんも自由にイメージして元気に歌って下さい。
最初はあまり気張らずに始まり、「自転車を走らせ」のところで一度解放感を感じて下さい。Bから一転moll dur風になります。少し不安な気持ちをやや押さえた声で。そしてBユへ向けて朗々と歌って下さい。ラストのffは最後までdim.しないように頑張って!

金色のじゅうたん

実りの秋の歓び、その情景に「僕達の存在もずっとこんなふうだといい」と重ね合わせ、悠々と清々しく元気が出る詞です。

Aの前奏は田園風景を優しく表すつもりで。Bからは広がっていく風景をおおらかに歌います。「あおくすんだ」を丁寧に。Cからカラフルな色を掛け合いしますが、でも金色が一番際立っている、という気持ちが盛り上がっていきます。Dは朗々と。Eで視線が手元の稲粒にフッと移ります。和音の変化を充分意識して下さい。
Fから改めて秘そやかに少しずつ盛り上がりGで晴れやかに歌い上げます。Hは穏やかだが、優しい充実した感じ。寂し気にならないように注意して下さい。

雨の足音

わかりやすい詞ですが、その中のさり気ない情景描写のユーモアや「つながっている」「続いている」という言葉が私達に与えてくれる安心感、信頼感を大事に歌って頂きたい曲です。

Aからさりげなく歌い出しますが、決して響きが痩せないように注意して下さい。Bから動きの有る情景描写になります。「屋根裏で」を繰り返したあと、フッとテンポを緩めて、ちょっとユーモラスな猫の姿を思い浮かべられるように丁寧に「ひげをピクリと…」を歌って下さい。Cから、今までのホンワカムードが一転し、地に足の着いた信頼感のような気持ちをきっぱりと朗々と歌います。2番にあたる後半も同じような流れで歌います。
雨の歌なのに、とても爽やかな印象が有ります。そんな雰囲気を出して頂けると嬉しく思います。

やがて五月

「ある覚悟を持った優しさ」とでも言うのでしょうか。毅然と現実に向かい合いながらも、命に対する暖かな眼差しを注いでいる僕の大好きな詩です。

八分の六で細かく書いてあるので、一見難しく見えるかもしれませんが、実際の音はそれほど複雑では有りません。また、詩の格段の言葉の違いを意識して作曲したので、メロディやパート分けも毎回少しずつ違いますが、詩に丁寧に沿っているので、不自然にはなっていないと思います。
ピアノの前奏は各音を粒立たせるよりは、全体がきれいな響きになり、その中から右手の高音がメロのように聴こえてくるイメージです。B以降に細かいcresc.やdim.が多く出て来ますが、決して急激になったり極端なp⇔fにならないように気をつけて下さい。B全体が一つのフレーズのように感じて下さい。Cは「優しくないもの」に対するやや強い表現です。子音をハッキリ強調し少し固めに歌って下さい。DではBよりも少し強くキッパリと「優しさ」を歌い上げます。豊かな響きと訴えかけが欲しいところです。Eで歌の終わりがそのまま2番への前奏になります。

ほしのこもりうた(ほし ますみ)

「のはらうた」に作曲した同声合唱曲集から「ほし ますみ」作詩(という趣向の)2曲を御紹介させて頂きます。

まず、「ほしのこもりうた」。雲や海を漂うように歌っていた子守唄が「まるいみずのほし」で、突然宇宙からの視点に飛ぶ、という初めて読んだときの衝撃は忘れられません。
前奏は1小節ごとに「地上の静けさ」「星のきらめき」が交代するイメージで、Andannteから落ち着きます。Aから、静かに優しく深みのある声で歌いはじめたら、Bの後半の「まるいみずのほし」を目指して盛り上げて下さい、但しあくまでも子守唄なので、激しすぎないように注意して。その後は余韻のように深く静かに歌い続けます。

じかん

「ほし ますみ」さんが書いた詩、という趣向です。星のまばたき、長い夢。これは地球上とは時間のスケールがだいぶ違うようです(笑)。

前奏には細かくf 、p を付けていませんが自由に歌って頂いて構いません。Aから優しく歌い始め、Bに入ったらcresc.し始めて、「ながいゆめを」で前半の盛り上がりです。Cからは、全体が1フレーズのように感じて細かく切れないように注意して歌い上げて下さい。

この曲集の中ではちょっと変わったタイプの曲です。詩自体がややコミカルな感じです。曲も運動性の追求と、三度のハモリが頻繁に出て来ます。

前奏は少しおおげさに、転びそうな感じを出して下さい。Bからの四声部の受け渡しは間髪入れずに追い掛けて下さい。ここは和声は四度和声で、やや和風です。Cから三度の重なりが出て来ます。ゆっくりときれいに響くように充分練習してから、徐々に指定のテンポまで上げて行って下さい。ここまではスタッカート気味にポンポン元気に歌って下さい。
Dで少し落ち着いて出て、「走りおりてゆく」まで長いcresc.です。Eからの「ころぶ」の掛け合いはイレギュラーで不規則に声部の入りが有りますので、気を付けて下さい。うまく決まると、とても面白くなるはずです!Fは和風の掛け合いと、三度での「あーあー」の対比が欲しいです。

全体に、三度と四度の異なる風合いの和音が入れ替わり出て来ます。ハーモニーをパッと変えるのが少し難しいかも知れませんが、決まると拍手喝采!(のはず…)

草よ

いわゆるオーソドックスな合唱曲のスタイルで作曲しました。目新しさはないかも知れませんが、決してすぐに古びたりしない、普遍的で説得力有る演奏を目指して頂けると嬉しく思います。

冒頭はきっぱりと歌い出します。Bから伴奏は流れるように。歌はレガートになり過ぎずに言葉を大事に歌って下さい。Cからはドルチェ気味に優しい気持ちで。Dからは、自分の中に有る「悪い草」を激しい思いで歌います。ある種の怒りを持って。
FからBのフレーズが戻って来ますが、自分への怒りを意識した後なので、何かが変わっているはずです。例えば「草」に対する想いがより強くなっていたり…。工夫してみて下さい。Iの前の「草よ」に一番強い思いが感じられるように。最後の「教えてほしい」は祈るかのような表現が欲しいところです。

キンモクセイが香る

金木犀は秋に咲きますので、卒業式などでは歌いにくいと思います。この詩はそういう何かの機会のための歌というよりは、例えば高校生が中学時代を思いだす、中学三年生が一年生の頃を思いだす、というようなイメージで書かれています。(ただ、秋にサークルの先輩を送りだす時などには、季節感も合いそうですね)

Aから、懐かしさを感じながら優しく前奏が出ます。Bからその気持ちを保って歌い出します。Cの前半では、思いだすいろいろなエピソードを歌いながら盛り上がり、後半で朗々と歌い上げます。それをもう一度2番の歌詞で歌ったあとのFは全く違う部分になり、人の出会いと別れの不思議さをやや激して歌います。
Gから再び初めのフレーズに戻りますが、この先を歌うと長過ぎる場合はコーダ→コーダへ飛び、すぐに終わる事ができます。Gを歌う場合は男声、女声の掛け合いや、オブリガートが出て来て少し複雑になりますので、特に声量のバランスに気を付けて丁寧に歌って下さい。

未来へ

困難な事が多い時代に、勇気を持って未来を信じ、一歩踏み出すことの大切さを忘れずにいたい。そんな気持ちにさせてくれる詩を混声三部合唱曲にしました。

ファンファーレのようなピアノの前奏に続いて女声が入ります。決して急がずに悠然と。強弱はmpですが、子音をはっきり出して、もやもやしないようにして下さい。C〜Eの各声部の掛け合いは、声部の組み合わせによる声量の違いに注意してアンバランスにならないように注意して下さい。

Fから一転して速く、エネルギッシュになります。スタッカート気味に言葉をハッキリと歌い、掛け合いは間を空けずに、たたみかけるように!

Iは少し遅くなりますが、もたもたせずに前向きな決意を堂々と歌います。その頂点がKからのファンファーレ風のフレーズです。絶叫にならないように注意しながら大いに盛り上げて下さい。

夢の風

重い障害を持ちながらも、苦しみを乗り越えた明るさで、前向きに頑張っている大原友子さん。「夢の風」は、初めて電動車イスで一人で外出できた歓びを爽やかに歌って、大変魅力的な詩です。

坂をおりて行く風のような音型で始まるピアノに続いて、「いってまいります」は元気に明るくキッパリと。その後の歌い出しからCまでは歯切れよく生き生きと歌って下さい。Dは少し落ち着いてややレガート気味に出ます。Fで、少し遅くなります。悲しかった気持ちを、オブリガートと旋律のバランスに気をつけながら表現します。Gから元のテンポに戻り、駅員さんとの会話を元気に歌い、H〜Gの前半のとても嬉しい気持ちへつなげます。そしてこの詩の一番魅力的な最後の一連「みんなのやさしい風にふかれて…」以下をダイナミックに歌って終わります。

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