徒然草 14その3    
坂本弁護士一家追悼CD「三つの薔薇によせて」 解説その3

購入ご案内はこちら
目次へ戻る                            HomePageに戻る


音楽が結ぶ心と心

逸見登久恵(都子基金)

 初めて会った都子さんは赤いほっぺのフルートをふく女の子でした。これからどうするの? 将来の進路を、久しぶりに会った立教通りで聞きました。都子さんを忘れたくなくて、一緒に通った立教大学に紅梅を植えました。今度は「三つの薔薇によせて」を、大学のある池袋の街で初めて聴く事になりました。都子さんとの思い出がこれで一つ増える事になり、本当に嬉しい限りです。都子さん達が行方不明になってから、松本さん達が音楽を奏で続けることで、本当に沢山の方々に救出を呼びかけて下さいました。それを知った時に、どんなに心強く思ったことでしょうか。「愛と哀しみのソナタ」は私の心の奥底を揺さぶって、とても苦しくなったのですが、音楽が次第に、それまで閉じこめておいたものを浄化し始めてくれる感じがしました。私達が今生きている人生の中で、音楽がこんなにも直接活きて働きかけてくれる事に心底感動しています。心と心を結びたいと願った都子さんの思いが、このCDの響きに乗って皆様の元に届きますようお祈りしています。

 

鉄の吹子

菊池紘

城北法律事務所(池袋西口)弁護士

 坂本堤さんは弁護士になる前に城北法律事務所で4ヶ月の実務修習をした。指導担当は私だった。坂本さんは城北法律事務所についてつぎのように書いている。「城北の仕事を見ていると、それは弁護士がよく口にする『解決』という営みだけでなく、その中に重要な『変革』があることに気づかされる。社会の変革、依頼者関係人、個人の変革、そして弁護士自身の変革。たくさんの変革にまみれる事が若者のためらいと不安を振り払う。重ねて言うけれど、僕らはそんなに白けちゃいないんだ! 眼前にある変革の息吹をすら感じられない程、臆病でもないんだ。熱い変革の息吹を若者に吹きかけて止まない鉄の吹子だ!」

 ここには坂本さんが事務所の弁護士と事務労働者の活動に共感を抱いていたことが示されている。それと共に城北の活動について述べるなかで、実は「変革を求める坂本堤さん自身の生き方」が表現されている事にも気がつく。私も「変革の息吹き」をもってこれからを生き活動したい。

 坂本さん一家に連帯しての「愛とヒューマンのコンサート」がCDとなった。短い期間だったが、ほとばしる情熱をもって私達と共に坂本さんが活動したこの地で完成記念コンサートが行われる事に敬意を表し感謝します。

 

 

生きているんだ… みんなの中に…

今野強

(愛とヒューマンのコンサート委員会/松本克巳コンサート委員会 事務局)

 音楽とはふしぎなものである。私は今まで音楽によってどれほど進歩したかしれない。私という人間を形成するうえに、音楽はどれほど大きな役割を果たしたかしれない。音楽をとおして知り合った人が、私に与えた影響は、はかることができないほど大きい。
(都子さん中学3年の日記から)

 親となってみて、子供達の明日を思わない日はありません。大人として“現在できる一歩”を確実に歩み出して、子供らの瞳が曇ることのないような社会にしていきたいと思っています。
(89年 龍彦くんの名が入った最初で最後の年賀状から)

 何という心打つ文でしょう。生きてたら堤さん47歳、都子さん43歳、龍彦くん14歳8ヶ月です。堤さんは正義の弁護士として大きな仕事を積み重ねているでしょう。“幸せづくりの名人”といわれた都子さんはどれだけ多くの人々をその輪の中に招き入れているでしょう。龍彦くんは凛々しい少年へとどんなはばたきをみせているでしょう。きっといたであろう弟や妹のどれだけよい兄さんになっているでしょう。思うと胸がいっぱいにふくらんできます。

「あの世とこの世で共に生きてる」そんな思いをしていたのですが、松本克巳氏が家族から「坂本さんたちはいつ迄もあの世で安らかに眠ってなんかいないかも。この世におりてきていろんな人たちの中で活躍していると思う」といわれたそうです。私も多いに「そうだ!」と思ったのでした。

 “現在できる一歩”を確実に歩もうとする人たちの中に坂本さんたちは生きているんだと…

 坂本さん一家に捧げる、そして坂本さんの親友である松本克巳さんの人生50年を史する二作のCDの制作にかかわれた事を感謝すると共に、これ迄御支援下さいました方々に心より御礼を申し上げます。

 最後にCDづくりに関してはまったくの素人である私に対して心をこめて労を惜しまず知恵と力を下さいました、川崎絵都夫、金瀬胖、加登屋正和、柴内克郎(ナール印刷)、西谷恒雄各氏に心より敬意と感謝の思いを捧げる次第です。

愛とヒューマンのコンサート委員会 事務局

松本克巳コンサート委員会 事務局

 

 

優しく届け、多くの人達の心に

今野和子

 初めてCDの収録現場に夫と共に立ち合わせていただきました。

 2月2日、場所は秩父ミューズパーク音楽堂。周囲は例年にない雪で眼前の武甲山も真白。雪と氷の凛とした寒気のなかで製作は進められていきました。演奏者は異音を避けるために暖房を切った寒さの中でのがんばりでした。音楽監督の川崎さんと録音エンジニアの加登屋さんの暖かな指示のもとで作業は進んでいきます。

 おりしも窓外に目を向けると、いわさきちひろの絵から抜け出してきたような歩きはじめの幼子と父母がたこあげをしています。まるで坂本さん一家が舞い降りて聴いてくれているような思いになり胸がいっぱいになりました。

 奏でられる調べを聴いていると、東京、神奈川、埼玉、茨城、新潟、富山、長野、神戸、明石の演奏会を支えて下さった、そして三人のそれぞれの慰霊地を常日頃見守って下さっている方々の優しく暖かな笑顔がつぎつぎと浮かび、改めてその大きな拡がりに感慨を深くしました。

 それぞれの曲に込められた思いが、このCDを通じて多くの人達の心に優しく届けられることを願っています。

目次へ戻る                       徒然草次ページへ    

HomePageに戻る