『MEGAPHONE SPEAKS』 全曲レビュー

by. 明(めい)こと 田原 美郷
1998年8月23日

1. PURE ATOM BOY
   音も詩も摩訶不思議な曲。中学生くらいの男の子の宇宙人(?)を想像させます。聴きおわると、何ともいえないほろ苦さと切なさを、思い出します。

 現実にはありえない(?)設定にしたことで、色々な束縛から解き放たれて、自由に歌うともえちゃんの息づかいが聞こえてきます。でも、その設定のオブラートのために、伝わってくるものにも、ヴェールがかかってしまったかもしれません。

2. Shopping A→Z
   本当にイキイキと楽しい曲です!この曲を聴けば、このアルバムが決してこれまでの「シノラー」を否定するものではないと、わかるんじゃないかと思います。「シノラー」は、<篠原ともえ>の本当に素晴らしく、楽しい一面です。とにかく、難しいことは考えずに楽しめる、いい曲ですっ!

 雑誌で読んだ「この曲をライブでやりたい」という話しは、私も思いました。「A!アップル!」、「B!バナナ!」〜という掛け合いを、ステージと客席でできたら、すっごく楽しいでしょうね! ムズカシそうですけど(^^;。歌詞を紙にだして、チョット練習してから(笑)本番をやれば、客席もノれるのではないかな〜?

3. anything
   詞・曲ともに自作。素晴らしい曲になっています。アルバムタイトルになっても良いのではないかと思うくらい。ともえちゃんの思い入れを、特にこの曲には感じます。アルバム曲中、一番短い曲ですが、一番印象に残っています…というか、歌詞を全部覚えちゃいました(笑)。

 現在のともえちゃんの、等身大の姿が、本当に素直に曲に映し出されているように感じます。だから、なにか説明を付け加えるのは難しい(^^;。とにかく、聴いてください。と言っても、「現在の」ともえちゃんは、『MEGAPHONE SPEAKS』を作り上げたことで、もう既に一歩も二歩も成長していると思います。

 個人的な予想ですが、この曲が、次のシングルカットじゃないでしょうか。『an』のCMソングでもあります。CMの方も、ファン必見の出来映えです。首都圏でのオンエアは、いったいいつ!?

4. メトロの娘
   ピチカートファイブの小西康陽さんが、ともえちゃんに贈った曲です。軽妙なタッチ、情景が目に浮かぶような歌詞。多感な少女の自然な姿が、この曲から感じられます。

 小西さんのつけた原題は、「ボンジュール・シノラムール」(笑)。さすがに却下されたそうですが。この曲もまた、彼女の一面…というより、もしふつうの女の子だったら、こういう風になっていた姿の様な気がします。

 でも、一年前の曲ということで、既に今の彼女は、この曲のイメージを超えているのかもしれません。そのせいかどうか、曲の終わり方に、チョッピリ物足りなさが残ります。とはいえ、素敵な曲です。そう、「素敵な」と言う形容がピッタリですね。

5. MICRO BLUE
   この曲は、なぜかスッと耳に(頭に?)歌詞が届いてきませんでした。メロディーは妙に耳につくので、時々ハッと気がつくと、頭の中でリピートしていたりするのですが(笑)。あらためて、歌詞カードをじっと眺めても、「?」という感じでした。

 付録の『MEGAPHONE SPEAKS LIKE THIS』を読んで、ようやく「夢の中のできごと」を素材にした曲とわかりました。「本作唯一のファンタジー巨編!」と銘打たれていますが、私の乏しい感性では、その多くを捉え切れていないようです。

 決して嫌いな曲というわけではありませんが、私にとってはBGMの様に、無意識を流れていく曲です。

6. パレイド
   ところどころに、妙に小悪魔的(?)な魅力を持ったフレーズを感じます。「みんな呼んで〜」とか、曲間の電子楽器音とか…。子供の時、(親は顔をしかめるだろうけど、)どうしても欲しかったり見たかったりしたものを、手に入れる瞬間というんでしょうか。

 うまく表現できませんが、この曲を聴くと、その時のワクワク感と、スリルのようなものを感じます。そのぶん、続けて聴いていると、頭の中が飽和状態になって「ちょっと休ませてぇ〜」って感じかな? とにかく、聞いていると、ウキウキ・ワクワク・ウズウズ(笑)してきちゃいます。

7. ハロー・スティーヴン
   名曲です! プリプリプリティ INTERNATIONALで直撃した、エアロスミスのスティーブン・タイラーとの出会いを歌った曲です。本当に、彼が印象に残ったのですね。

 私のこの曲との出会いは、TV番組FACTORYの収録ライブです。初めて聴いた時、本当に驚きました! ワンフレーズを聴いて、痺れたようになり、2コーラスは夢中になって聴き入りました。これまでは、ライブ会場の高揚した気分のせいかと思って、曲の良さを割り引いて考えていたんです。でも、アルバムで聴き直して、気のせいじゃない、素晴らしい曲だと確信できました。嬉しい限りです(^^)。

 音のひとつひとつが、喜びに溢れていて、涙が出るくらいです。歌詞には、もう少し推敲の余地があるのかもしれませんが、うっかりいじってしまうと、あの時の輝きが失われてしまうかも…。細かいことなんてどうでもいいから、早く曲になってこの世に飛び出したい! この曲には、そんな力を感じます。

 いい曲かどうかの理屈抜きで、一番好きな曲になりそうです。彼女の吹くハーモニカも、心地よく耳に響きます。私は楽器は素人ですから、演奏の上手い下手はわかりません。とにかく「好き」なものが「いい」ものと言っちゃいます。

8. LOVEBANG
   アップテンポで、曲も歌詞もハジケている曲です。でも、私にはチョット詩が消化不良かな? あちこちで、韻を踏んでいる歌詞を見ると、変に考えないで、言葉遊びの感覚で楽しむのが、正解なのかもしれません。「どこでもない〜」から、メロディアスな曲調に変わる部分が気に入っています。

 ここ何回かのプリプリに、BGMとして使われているみたいですね。

9. ココロノウサギ
   唯一のシングルからの収録。しかし、このアルバムのためのリミックス。まったく別な曲と思って聴いた方が、いいと思います。個人的には、シングルバージョンの方が好きです。

 でも、レコーディングの完成度は、アルバムの方が高いかもしれませんね。落ち着いた色調、穏やかな曲調です。ただ、この曲の歌詞の、あやうさ、はかなさ、不安定さ(未成熟さ?)には、シングル版の編曲の方がマッチしている気がします。

 シングル版レコーディングの時の一発取りに、納得がいかなかったという、こだわりがあったのかもしれませんね。

10. 会いにいくの。
   アルバム中で、一番意表をつかれたのが、この曲かもしれません。「彼女は、こんな詩も書けるんだ。」と驚きました。そして、とても嬉しくも思いました。これから先も、こうした美しく優しい曲を、聴くことができるわけですから。彼女の引き出しには、まだまだ一杯、みんなが知らない宝物が入っていそうですね。

 純粋に「歌い手」としての彼女の声は、このような曲が一番生きるんじゃないかと、密かに(笑)思っています。以前LOVELOVEで歌った、『あなたに会えてよかった』等を聴いても、そう思います。もちろん、声だけが歌手のすべてではありませんから、全部こんな曲がいいというわけじゃないですヨ。

 この曲は、8、9月の「みんなのうた」でも流れています。アニメーションも、ステキです。本当に彼女の実体験を元に作られたアニメだとしたら、本当に彼女の子供の時のイメージにピッタリで、微笑ましいくらいですね。

11. one peace
   最初に聴いた時、あまりにも自然で印象に残らなかったんです。「19歳の女の子が思っていること」が、自然に歌われてるな〜と。で、付録の『MEGAPHONE SPEAKS LIKE THIS』を読んで初めて、自分の感性が錆付いていることに気がつきました(^^;。

 詩を見たバッファロー・ドーターが爆笑したこと、彼女が「こっ恥ずかしい」と思ったこと。どちらも思いもしませんでした。そして、昔々の自分、その年代だった頃の自分をよ〜く掘り起してみて、ようやくチョッピリ思い出しました。本当の自分を表に出すことのタメライ、ほんの些細なことに感激しても、それを悟られることの恥かしさ。そういったことを忘れかけていました。

 プロデュースの少年ナイフにも興味を覚えて、ミニアルバムの『IT'S A NEW FIND』を買ったら、これが耳に残る残る(^^;。しばらくの間エンドレスで、頭の中をリピートしていました(笑)。

12. MUSIC
   何度も聴くうちに、最初の印象からもっとも変わったのがこの曲です。最初は、明るく楽しい(だけの?)曲という印象でした。いや、明るく楽しいのはその通りなんですが…。今は、決然とした意志を、この曲から感じます。

 音楽への感謝と、これからも確固として歩き続けるという、そういう「意志」ですね。音楽に対する思い入れというか、そういう決意を持って、この曲をアルバムの最後に歌っている。そういう風に聞こえてきました。ただ、そう感じられるまでに、相当繰り返し聴いたと思います。私がニブイのかもしれません…(^^;。

 それから、「歩き疲れた大人たちの 背中をツンツン押して歩こう」というフレーズが印象的ですね。ツンツンされないように、「元気な大人」として歩きたいものです(笑)。もっとも、自分はまだまだ「子供」だと思っていますけど(^^;。

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