帯をギュッとね!

少年サンデーコミックス/河合 克敏/全30巻

 巻頭を飾る第1作は、ニュー・ウェーブ・ジュードー・コミック(?)と銘打たれたこの作品。静岡の浜名湖高校に入学して柔道部を作り、全国大会を目指す5人を中心に話は進みます。が、熱血マンガではありません!

 そう、「明るく、楽しく、強くなる柔道」と言えばいいでしょうか。決して不真面目ではないのですが、作品の随所にちりばめられた笑いが最高にオカシイ! そして、もちろん試合のシーンでは、手に汗を握ります。感動あり、涙あり、笑いありの作品です。

 主人公、粉川巧(こがわ たくみ)は、もちろん魅力あるキャラクターです。しかし、決してこれは彼だけの物語ではありません。浜名湖高校柔道部5人すべてが魅力あるキャラクターなのです。

 さらに、2人の女子マネ、柔道部顧問でなぜか剣道三段の龍子先生、多くのライバルたち等々、魅力あふれるキャラクターたちがいっぱいです。

 私も柔道は詳しくありませんが、柔道を知らない方でも、全然問題無く楽しめます。これまでお勧めして「オモシロイ!」と言わない人はいなかった、絶対オススメの作品です。

 残念なのは、すでに連載が終了していることです。ぜひ、続編なり外伝なりを期待したいところです。

[コミック万歳!]


エースをねらえ!

 マーガレット・コミックス/山本 鈴美香/全18巻

 岡ひろみという、ごく普通の女子高生が、テニスを通じて、コーチ、先輩、後輩、ご両親、ライバル達と共に、成長していく過程を描いた作品です。しかし、この作品の凄さ、素晴らしさは、うまくお伝えする自信がありません。少なくとも私は、この作品を読み、生き方・・・と言うか、人生観に最も影響を受けた読み物と言えるでしょう。

 軽い気持ちでテニスを始めた岡ひろみが、いつしかテニスを愛し、テニスに打ち込む自分に気が付きます。そのひろみの前に、次々と困難が立ちはだかります。先輩とのあつれき、報われぬかもしれない恋、選手としての壁、周囲の期待・重圧。悩み苦しむひろみですが、常に彼女を見守り導く宗方コーチによって、一歩々々確実に、選手として人間として成長していきます。

 ひろみが、選手として人生の師として、尊敬し信頼する宗方コーチ。しかし、その彼の死とともに第一部の幕が閉じます。宗方コーチを失い、腑抜けのようになったひろみが、慟哭の中から立ち上がり、再起する過程が第二部で描かれます。その衝撃?感動? この作品は、人生の何たるか、人としてどう生きるべきかと言う問いへの、ひとつの道標を示していると言ってよいと思います。

 ジャンルとしては、少女マンガであり、男性の皆さんにはとっつきにくいかもしれません。確かに最初の何巻かは、いわゆる少女マンガ臭さを色濃く感じさせます。しかし、4〜5巻あたりからは、マンガのジャンルなど気にならなくなるはずです。連載は、1973〜1980年。しかし、このテーマに古さはありません。ぜひ一度、いや二度三度と読み返して欲しい作品です。

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はじめの一歩

 講談社コミックス/森川 ジョージ/1〜42巻(連載中)

 いま、もっとも熱いスポーツマンガのひとつと言ってよいでしょう。内気でシャイないじめられっ子、幕之内一歩がプロボクサーを目指し、人間として、選手として成長していく物語です。決して器用ではない一歩が、その素直な性格と地道な練習により、文字どおり一歩々々、強いボクサーになっていきます。

 登場人物達が強くなる過程に、惜しみなくページを割き、練習やリング外でのドラマにも光を当てることで、読者を物語に引き込みます。主人公である一歩の試合が、数巻にわたって出てこないことも珍しくありません。練習や合宿だけに丸々1冊分を費やすことも。それゆえに、あたかも実在の選手達の様に、血の通った存在としてキャラクター達を感じられます。

 また、リングでの勝者になるためには、力・技だけではなく、心の充実が必要なことも、この作品は描いています。勝利への執念、セコンドへの信頼、気力の充実。強いパンチや、ボクシングの上手さだけではない、「何か」を描こうとしている。そんな風に思えるのです。

 こう書くと、小難しい熱血マンガのようですが、そうではありません。明るく楽しく、とにかくボクシングが好き・・・というか、ボクシング・バカ(^^;のマンガかも。幕間で登場人物達がやらかす、馬鹿馬鹿しい失敗や間抜けな行動がなおのこと、現実にそんな人物がいそうな雰囲気を漂わせます。ドキドキ、ハラハラの手に汗握る試合との落差も、この作品の楽しみのひとつでしょう。

 現在も、少年マガジン連載中。今一番、続きの待ち遠しいマンガです。

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ライジング!

 小学館フラワーコミックス/まんが:藤田和子、原作:氷室冴子/全15巻

 ダンスが好きな、アメリカ帰りの女の子、仁科祐紀。歌やダンスの専門学校と思って受験した、宮苑音楽学校は、宮苑歌劇団員を養成する歌劇学校だった! 持ち前の明るさと、天性の素質で、役者としての自分に目覚め、宮苑のスターにまで成長する、シンデレラ・ストーリー。

 宮苑歌劇団は、明らかに宝塚歌劇団をモチーフとしています。スターシステムの功罪、男役・娘役の抱える矛盾や欠陥にも光を当て、真の「役者」とは何か?というテーマが底流に感じられます。

 印象的なのは、祐紀が最初の主役で大成功を収め、それゆえに役者生命の危機に陥るくだりです。デビュー作ですべてを出し切った役者は、デビュー作を越えられずに消えていく・・・。一作目で、役者としてのすべての可能性を吐き出してしまった祐紀。

 二作目で、役者としての自分の未熟さに気づき、壁に突き当たります。演出家であり、恩師でもある、高師謙司は、祐紀の成長を願ってあえて彼女を突き放します。舞台の成功のために、自分は利用されたと誤解した祐紀は、その真の心を知らないまま、宮苑を飛び出しますが・・・。

 外の世界の舞台でもまれ、役者として、人間として成長するにつれ、高師の心を理解してゆきます。真の役者として成長し、外の舞台でも成功を収めた祐紀は、再び宮苑へ、高師の元へ帰ってゆきます。そして、師と弟子ではなく、一人の演出家と役者として対等の立場で、お互いへの尊敬と愛を確かめる二人でした。

 何度か繰り返して読むのですが、その度に引き込まれ、寝不足にしてくれる作品です(^^;。

[コミック万歳!]


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