読書記録

2001(平成13)年1月〜6月



<凡例>
冊数タイトル出版社
読了日著者初版
評価 コメント

<ジャンル分け>
理工系 人文系 文学 社会・実用書 未分類

No. 34
2001/06/28
哲学の謎 講談社現代新書
野矢 茂樹 1996/01/20

『論理トレーニング 101題』を買った直後に古本屋で見つけたので買った。
内容的には少し薄味で、もう少し議論を尽くさないと、恣意的に結論に持って行っているように見える。

 
No. 33
2001/06/27
アジアのIT革命 東洋経済新報社
三和総合研究調査部 2001/05/08

仕事用。この手の本を読むと、日本の新技術導入に関する慣性と、 世界的に見ても最低レベルという英語力のなさに、空しくなってくる。

 
No. 32
2001/06/14
上と外 5 楔が抜ける時 幻冬社文庫
恩田 陸 2001/06/25

次の巻で終わることになるが、収束が見えない。

 
No. 31
2001/06/12
Understanding Public-Key Infrastructure :
Concepts , Standards , and Deployment Considerations
PKI - 公開鍵インフラストラクチャの概念、標準、展開
ピアソン・
エデュケーション
Carlisle Adames , Steve Lloyd
カーライル・アダムズ、スティーブ・ロイド
2000/07/15

仕事用。このジャンルの教科書的存在。
後半に進むにつれて1センテンスが長いままになっており、訳の疲れが見える。

 
No. 30
2001/06/01
恋恋蓮歩の演習 講談社ノベルス
森 博嗣 2001/05/05

イチローなみの高打率という感じだが、ちょっと薄味。
ふと思ったが、紫子と練無は、トムとジェリーを連想させる。

 
No. 29
2001/05/27
メフィスト 小説現代5月増刊号 2001 講談社
  2001/05/19

今回は、恩田陸は休み。「上と外」の5も出ないし、煮詰まりつつあるのだろうか。

回文探偵に触発されて、少し考えて見た。
まず、

若い及川
(わかいおいかわ)
同じ課に笈川という入社3年目がいて、いちおう若いとは云える。 本人に聞いてみたら、今まで気がつかなかったとのこと。これを signature に使うように薦めたが、 かたくなに拒んでいる。これは結局「若い、犀川」の1字違いだった。

次、

以下、議事録による、昼夜に黒字議会
(いかぎじろくによるひるよにくろじぎかい)
国会予算通過、という感じで、以下議事録による、というフレーズが社会人らしくて渋くてよい。

以下に示す、鳥の串に敷く海苔と酢飯2回
(いかにしめすとりのくしにしくのりとすめしにかい)
居酒屋新メニュー調理マニュアル、という感じ。これも、回文の中で、以下に示す、 というフレーズを使った例は少ないであろう。

イタコ呪い済みの、水色の固体
(いたこのろいずみのみずいろのこたい)
タイトル『恐山にて』。何故、イタコが呪うのか、とは聞かないこと。

 
No. 28
2001/05/25
ゼロから学ぶ量子力学 講談社
竹内 薫 2001/04/20

ブルーバックスに比べて、こちらは本当に専門書を読む入り口まで行けるので、入門書としてよい。

 
No. 27
2001/05/11
眠りの牢獄 講談社ノベルス
浦賀 和宏 2001/05/05

1年待ったら、この薄さというのが残念。今回は非シリーズもの。

 
No. 26
2001/05/05
アジア政治経済論 アジアの中の日本をめざして NTT出版
末廣 昭・山影 進 編 2001/02/15

仕事関係で読んだ1冊。

私自身、昔、留学していたときの関係で、行けば各国に友人がいるのだが、それでもあまりアジアには興味がない。 しかし、世間を見渡すと、異様にアジアが好きな一群がいる。たいていオヤジであり、私は彼らの動機に、 ひじょうに不純なものを感じる。だいたい、云っていることに矛盾がある。例えば、アジアの広大なマーケット、 中国が12億人、インドが10億人、合わせて世界人口の約3分の1、というが、彼らの購買能力を無視している。 しかも、アジア全部ひっくるめても、GDPが日本1国の10分の1程度にしかならない。 (そもそも、この数字は私が今例示したもので、このような基礎数値さえ把握していない輩が多い)。 或いは、アジアといいつつ、東南アジアの話をしながら、途中で中国、韓国等の話にすり替わっていたりする。 また、日本がまぎれもない東南アジアの1国であることを、頑強に認めたがらず、 その一方、アジア各国から代表者が出てきた会議において、1人だけ英語がしゃべれなかったりする。

で、私が常日頃、アジアへのビジネスを唱えるオヤジどもに対してうさんくささを感じていた矢先、 この本の第7章で、洞口治夫氏が享楽的国際化ということを指摘しており、 「こんな、誰もが口にしないながらも心で思っていることを、明るみに出してしまっていいのか」 という感動を覚えた。この人は、私と同じく、自分の能力に反し、著しく人生において損をしているだろうと思う。

 
No. 25
2001/05/04
高校生のための代数幾何 現代数学社
永田 雅宜 1997/06/17

以前、ノートをとりながら読んでいて、「第6章 座標環・関数体」までで中断。今回、GWに一気に最後まで読了。
「第11章 代数曲面」のP1×P1の直積空間の構成の話が収穫。

さすがにこれを高校生が1人で読み通すのは無理だろう。今の大学生でもちょうどいいぐらい。
(理解できる者とできない者が半々ぐらい、という意味で)

 
No. 24
2001/04/20
Sledztwo
捜査
ハヤカワ文庫
Stanisław Lem
スタニスワフ・レム
1978/08/15

この訳が出た頃は、まだSFとミステリが完全に分かれていて、かつ、どちらかというと、
SFの方がメジャーな時代だった。しかも、レムがミステリっぽい作品を書くということを知らないで
この作品に接したら、かなりめんくらっただろうと思う。
SFという先入観を持たずに読めば、なかなかよくできたアンチミステリである。

 
No. 23
2001/04/12
空中都市008 アオゾラ市のものがたり 角川文庫
小松 左京 1981/06/05

この作品で描かれている未来は、ビルの高さを除けば、今見ても十分魅力のある未来像である。
よくできた童話。

TV放送の方は、これよりももう少し年齢が上の子供を対象にしていた。 自分は確か小学2年ぐらいだったと思う。
この中のエピソードで忘れられないものが一つある。
それはこの作品の中ではあたりまえに出てくるエアカーの開発秘話のエピソードで、
その話の中で、エアカーの発明者は、試験走行中に事故で死んでしまう。
その時の本人の口述が録音されていて、登場人物はそれを聞きながら泣くのだが、
自分もTVを見ていて泣いた。それは自分にとって、TVを見て泣いた最初の経験だったが、
何よりも、それまで科学の進歩を、ただ薔薇色の未来をもたらすもの、とだけしか見ていなかったが、

まさに、その科学のせいで、実験の失敗により人間が死んでしまう
ということに、ものすごいショックを受けた。
ジャミラの『故郷は地球』と並んで、自分にとってのトラウマとなっている。

 
No. 22
2001/04/10
遠い約束 創元推理文庫
光原 百合 2001/03/30

前作と同じく、人を信じる優しい心。
ただ、全体にメンタリティーが幼稚な感じ(というか未熟と云った方が適切か)がしないでもない。

 
No. 21
2001/04/06
Contes A L'enfant ne coiffe
ガラスびんの中のお話
ハヤカワ文庫
Beatrix Beck
ベアトリ・ベック
1980/02/29

これは読むだけ時間の無駄。
貧弱な想像力と、単純なあてこすりだけの、まさに読むに値しない作品。
ずっと絶版のままにしておいて欲しかった。

 
No. 20
2001/03/31
Sea-wyf and Biscuit
人魚とビスケット
創元推理文庫
J. M. Scott
J・M・スコット
2001/02/16

この手のジャンルは海洋ミステリとでも云うのだろうか。
漂流の描写が圧倒的で、自分もゴムボートの上で揺られているような気分になってくる。

 
No. 19
2001/03/25
掌の中の小鳥 創元推理文庫
加納 朋子 2001/02/23

今一トリックが弱いような気もするが、出会いという観点から見るなら、なかなか魅力的な短編集。

 
No. 18
2001/03/23
20世紀の予想 現代数学の軌跡 日本評論社
数学セミナー編集部 2000/12/15

いろいろなジャンルの未解決/解決問題が並んでいるが、モーデル予想に始まり、リーマン予想で終わる。
自分が生きていた数10年間、解けそうもない未解決問題が解かれてきたが、この分だと、自分の生きている間に、 リーマン予想の解決を見ることができるかも知れない。
20 = ℵ2(1ではなくて)などという話があるとは知らなかった。

 
No. 17
2001/03/16
The Murder of Roger Ackroyd
アクロイド殺害事件
創元推理文庫
Agatha Christie
アガサ・クリスティ
1959/05/20

よく云われるほど、アンフェアなトリックとは思えない。
そう思えるのも、その後に書かれた他の作家による同じ手法の作品を読んだから。
これを読むと森博嗣が、アガサ・クリスティのスタイルの影響を受けていることがよくわかる。

 
No. 16
2001/03/15
Centuries of Stories (原書) Collins
Edited by Wendy Cooling 2000

20人の作家による20の物語。
表紙と各作品のタイトルからファンタジー系の短編集を期待したが、実際はジュブナイル。
国語としては、小6か中1、英語教材としては、中学高学年〜高校低学年の副読本といった感じ。
Robin Hobb を読んだ直後だけに、薄く感じられてしょうがない。

 
No. 15
2001/02/26
老子 無知無欲のすすめ 講談社学術文庫
金谷 治 1997/04/10

まず、現代語訳が先に書かれているため、内容を理解しやすい。

これを読んで、初めて出典が老子だったと知った言葉が多い。
古文とか漢文の授業は文法が中心となるため、古典作品は作品名だけ知っていて中味を知らない、 という傾向がある。それよりも、現代語で読んでもかまわないので、中味を知っていることの方が 重要ではないのか。今の状態では、古典作品が伝承されているとは言い難い。
短いものをじっくり教えるような教育よりも、古文・漢文に関しては、大量のテクストを、 かたっぱしから丸暗記させた方がいいのではないか。教養しての身に付き方のレベルが違う。

 
No. 14
2001/02/24
迷宮学入門 講談社現代新書
和泉 雅人 2000/12/20

この本を読むまで、迷宮とは、建築物としての迷路のことだと思っていた。
迷路は道が分岐していて、目的地まで到達させにくくするのを目的としているのに対し、
迷宮とは、ある範囲全域を覆うような方向転換が頻繁に行われるような道を歩かせることにより、
目的地に到達するまでの間、不安に陥れる、ということを目的としている。

このような、どう考えても歴史がありそうだが、実際にその歴史を辿るのはかなり困難、
という対象の歴史を紹介しているものには、一般に興味がある。

 
No. 13
2001/02/21
青春抒情死抄 講談社ノベルス
小峰 元 1983/05/10

小峰元の作品が講談社ノベルスから出ているとは知らなかったので、 というかそれほど昔から講談社ノベルスが出ているとは知らなくて、 かつタイトルもあまり記憶に無かったので、古本で100円ということでとりあえず買った。 そして、半分ぐらい読んだところで、昔、文庫版で読んだ、ということを思い出した。 更に、初版の日付を見て、昔読んだのは、まさに文庫化されてすぐだった、ということもわかった。

たぶん、今なら見向きもされない作品。
ストーリーやトリック自体もどうということはないし、それ以上に、登場人物の言動や話題自体、 オヤジ臭がプンプンする。とにかく、つまらないの一言。
この作品を最初に読んでしまったら、『アルキメデス』とか『ディオゲネス』には向かわないだろう。 といっても、今では、この作品自体、手に入れるのが困難だが。
こういうのを読むと、メフィストのような、粒ぞろいの作品を読める今は幸運な時代だと思う。
その評価も、遠い未来から振り替えると、覆される時が来るのだろうか。

 
No. 12
2001/02/17
Assassin's Apprentice: The Farseer Trilogy Book 1 (原書) Voyager
Robin Hobb 1995

文語的な表現が多く読みにくいが、それだけ感動も深い。
最近読んだ中では、おそらく、最も濃い本。
巻末に2巻、3巻のあらすじが書かれており、これを読む以前は、例えば、2巻のあらすじの、
Molly の家が焼かれている vision といっても、特に何ということはなかったが、
今同じことを読むと、気になっていてもたってもいられなくなってくる。
そのぐらい、今は、作品世界に没頭している。

2巻以降は更に長くなるので、今、ぜんぜん別の洋書を読んでいるが、
英語の字面を眺めていると、この本の描写が思い出されて、物足りなく感じてしまう。
次、すぐ2巻を読むか、もう一度固有名詞を正確に理解するために、読み直すか?

 
No. 11
2001/02/13
上と外 4 神々と死者の迷宮(下) 幻冬社文庫
恩田 陸 2001/02/25

まさかこんな展開(成人の儀式というか通過儀礼)になるとは。

結末はどうなるんだろうか。ここまでいろいろ事件を起こしておきながら、まさか、
ただ、ジャングルから抜け出して、家族4人そろって日本に帰って、めでたしめでたし、
とは、今更やりにくいだろう。

 
No. 10
2001/02/12
雪女のキス 異形コレクション綺賓館II カッパ・ノベルス
井上 雅彦 監修 2000/12/20

雨という文字は男に付いても女に付いても意味は同じだが、雪だとまったく意味が異なる。
今ここで話題になっているのは、雪が付く女の方。
テーマ的にかなり限定されており、出てくる人物もやることも言うセリフもほぼ同じだが、
新旧、かなりバリエーションがある。

 
No. 9
2001/02/06
工学部・水柿助教授の日常 幻冬社
森 博嗣 2001/01/10

あまり期待していなかったが、読んでみると思っていたより面白かった。
理系の人間らしい、論理的に考えると世間の常識は不合理、というロジックに貫かれている。
小説だかエッセイだかよくわからないが、こういう文章にはお目にかかった記憶がない。
萌え萌えシリーズを書かないのであれば、今後全部これにして欲しいぐらいだ。
高校の頃、学コンの投稿者(解答者)の感想と、『読者の接点』だけを数時間に渡って読みつづけて、
カタルシスとは裏腹に、無為に過ごしたその時間のあまりの長さに愕然として、
ああ、こんなことをしていてはだめだ、と喪失感に襲われた、あの頃を思い出す。
要するに麻薬的快感がある。

 
No. 8
2001/02/03
メフィスト 小説現代1月増刊号 2001 講談社
著者 2001/01/21

今回、漫画は無し。そのため、かなり充実感がある。
赤川 次郎は最終回、鈴木 光司と『総門谷R』が終われば、さらに充実する。

篠田 真由美はかなり期待が持てる。今度、新書も何冊か読んでみたい。
恩田 陸は、これだけ頁数を費やしても、まだ発端のところにいるような気がする。

 
No. 7
2001/02/02
QED 東照宮の怨 講談社ノベルス
高田 崇史 2001/01/10

前作は少し方向が逸れたが、やはり日本古典文学物の方がよい。これだけ調べて構成するとなると、
1年1作でも相当きついだろう。次回は、

  • 源氏物語五十四帖の謎
  • 十一勅撰集の謎
あたり。

 
No. 6
2001/01/31
今夜はパラシュート博物館へ 講談社ノベルス
森 博嗣 2001/01/10

既出のものは雑誌連載時に読んでいるので、今回読んだのは書き下ろしだけ。

『卒業文集』は、並び方の法則がわからなかった。
『素敵な模型屋さん』は、雰囲気はよいが、これは小説というよりも独り言に近い。

 
No. 5
2001/01/30
顔のない男 文藝春秋
北森 鴻 2000/10/30

相変わらずうまい。このように書かれると、天使とは何か全然気付かない。
猫は今時違うんじゃないか?

 
No. 4
2001/01/28
Dの虚像 角川書店
湯川 薫 2000/12/25

前作もそうだったが、全体的な描写の薄さに比較して、誰かが怒りを表明する部分(爆発とは限らない)
については独特の迫力がある。他の部分の心理描写のところもそのぐらい書き込めば、おそらく、薄味感は無くなる。

「理解できないと思えばできない。でも、同じ人間なのに本当に理解できないことなんて、
世の中に、そんなにたくさんあるわけじゃない。」
「理解できないんじゃない。理解するまで努力を傾けたくないだけだ。
本当に理解したければ、1年くらいかけて、毎日、取り組めばいい。」
「世間で馬鹿だと思われている人と秀才と云われている人の知能の差なんて、さほど大きくはない。
馬鹿と秀才の差なんて、さほど大きくはない。馬鹿と秀才の差は、努力の差にある。
(中略)この前、死ぬ気で努力したのはいつだったか覚えているかい?」

 
No. 3
2001/01/26
清少納言と紫式部 =王朝女流文学の世界= 放送大学教材
鈴木 日出男 1998/03/20

この教材は、これだけのページ数では、とてもこれらの巨大な作品を紹介しきれない、
ということが感じられるような解説となっており、ダイジェストの仕方としてはひじょうにうまい。

 
No. 2
2001/01/17
競作 五十円玉二十枚の謎 創元推理文庫
若竹 七海 ほか 2000/11/17

倉知淳がアマの時に応募して、主催者の若竹賞を取ったことで有名な企画。
アマ・プロ、いろいろな作品が並んでいるが、やはり有栖川 有栖はうまい。

当時、よほど、北村 薫が流行っていたのか、北村 薫風味付けと楽屋落ちで、
若竹 七海の容姿をとりあえず言及するというパターンが多いが、入選作でこのレベルなら、
その他多くは、とても読むに耐えないような状態だったに違いない。

 
No. 1
2001/01/06
The People : No Different Flesh
血は異ならず
ハヤカワ文庫
Zenna Henderson
ゼナ・ヘンダースン
1982/12/31

前作と同様短編集だが、こちらは各話ごとに聖書に由来するタイトルがついている。
やはり、前作の一番最初、ヴァランシー登場のエピソードがよい。



読書記録 2000
(平成12年)7月〜12月
『枕草子*砂の本』 読書記録 2001
(平成13年)7月〜12月

E-mail : kc2h-msm@asahi-net.or.jp
三島 久典