私の病気について

 私の診断名は「抑うつ状態」、いわゆる「うつ病」です。発症は2000年の夏頃(シドニー・オリンピックの頃でした)で、治療を開始したのはその1年後、2001年9月です。現在も通院治療中です。完治はしていませんが、もし治療をしていなかったら、今の私はないかもしれません。

【うつ病(Depression)とは?】
 気分障害(Mood Disorder)といわれる精神疾患の一種です。主に気分の落ち込み、意欲・興味の減退といった精神面の症状と、倦怠感、頭痛、不眠などの身体症状が現れます。気分の落ち込みなどは日常生活でもよくあることで、たいていは数日で自然に、あるいは気分転換によって解消しますが、「うつ病」の場合はそうはいきません。「うつ病」の場合はこの状態がずっと続き(現在の診断基準では2週間以上)、先の見通しが真っ暗に思え、気分転換をしようにもその気力すらなくなるのです。

【年間3万人】
 1年に3万人。日本のここ数年の年間の自殺者の数です。交通事故による死者数が年間1万人前後であることを考えれば驚くべき数といえます。背景には不景気などがあると思われますが、自殺者に占める「うつ病」患者の割合もかなり高いと考えられています。「うつ病」は自殺につながる危険性のある病気なのです。「うつ病」は放っておいても自然に治る病気ですが、自殺の危険性が高いため、早い段階での治療が必要になってきます。ところが、厚生労働省の調査によると、「うつ病」の人の約7割が受診をしていないということです。
【私の場合】
 「死にたい」、「生きているのが嫌になった」、あるいは夜寝るときに「このまま目が覚めなければいいのに」と思うことは一度や二度ではありませんでした。決定的な実行こそしませんでしたが、左腕にはカッターナイフで何本もの傷ができました(今はほとんど見えませんが、寒い日や風呂で温まったときなどにうっすらと傷跡が浮かび上がることがあります)。部屋にある黄色いLANケーブルがとても魅力的な「道具」に見えたこともありました(ハイそこ、ひかない!(笑)今はもう大丈夫です。多分)。
 また、2003年の夏には大切な友人が「うつ病」のため、自らの命を絶ちました。とてもショックでした。泣きました。
【人口の1割】
 「うつ病」は人口の約1割の人が生涯のうちに一度はなるといわれています。特別珍しい病気ではありませんし、治療によって治ることが分かっています。ただし、前述のように、死(自殺)につながる危険性のある怖い病気であることも確かです。「近ごろ何か変だな?」あるいは後述の症状に思い当たると感じたら、迷わず専門医(精神科・心療内科など)の診察を受けるようにして下さい。精神科というと何か敷居が高いような感覚があるかもしれませんが、普通の病院と変わるところはありません。気軽に受診して下さい。

【メカニズム】
 精神疾患は突き詰めていくと脳の変調が原因です。そういう意味では「心の病」という表現は必ずしも正確ではありません。身体疾患の一部と考えることもできます。
 「うつ病」の場合も脳になんらかの変調が起きていると考えられています。「考えられています」というのは、まだ発症の正確なメカニズムについては分かっていない部分があるからです。
 脳には無数の神経細胞があります。神経細胞は、それぞれの間を神経伝達物質が仲立ちをして情報を伝達していきます。「うつ病」の場合にはこの神経伝達物質の量がなんらかの原因で減少し、情報伝達がスムーズにいかなくなっていると考えられています。「うつ病」では神経伝達物質のうちセロトニンとノルアドレナリンが関係していると考えられています。セロトニンは不安に、ノルアドレナリンは意欲に関係しています。


質問:「うつ病」についてもっと詳しく知りたい。→はい/いいえ