ナズナ(薺)/アブラナ科ナズナ属
 大槻文彦は、「撫菜ノ義ニテ、愛ヅル意カト云フ」とこの名の由来を説明する。ついでに引用すると、「君ガタメ、夜ゴシニツメル、ナナ草ノ、なづなノ花ヲ、見テシノビマセ」という歌が散木集にあるという(大言海)。春の七草として知られているが、七草粥にいれるようになったのは、平安時代のころから。
 昔、使われた品のない憎まれ口に、「お前の家の屋根にペンペン草をはやしてやる」というのがあったが、それがこのナズナの別名である。子どものころ、実のついた長い茎を根元からとり、一つ一つの実の柄を切れない程度に茎からはがして、耳元でくるくると回す遊びがあったが、その実が触れ合って、ペンペンと聞こえないこともなかった。その他に、果実が三味線のバチに似て、三角形であることからシャミセングサとも呼ばれる。
 葉はタンポポを小型にしたような形で、日本中、どこでも日当たりのよい道端や田畑に生える。教会の花壇にもロゼッタ状の葉がところかまわず生えている。直立した茎の先にときには10センチ以上にもなる長い総状の花序をつけるが、ルーペで見ると一つ一つは見事な白の十字花である。若芽はセリほど個性を主張せず、つつましやかな春の香りを持っている。茹でておひたし、また、てんぷらにするといくらでも食べられる。昔の人は邪気をはらい、万病を避けるといったが、ものの本によると、全草を天日乾燥したものを煎じて飲むと、高血圧、心臓病、肝臓病、腎臓病、生理不順、健胃整腸、利尿、解熱に効用があると驚くほどだ。服用するためには漢方医に聞くことは言うまでもない。

2004.02.
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