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リュウノウギク(竜脳菊)/キク科、キク属 久しぶりに晴れが続いたので、榛名山に秋の花の撮影に出かけた。我が家から行く林道の中腹あたりには、リュウノウギクが今をさかりと咲いていた。 この花に最初に出会ったのは第二次世界大戦中のことである。当時は食料事情が厳しく、疎開した私たちは切羽詰って二畝の畑を借り、見よう見まねで秋まき小麦や、さつまいもを作った。それは山の上の畑であったので、冬の空っ風の中の麦踏、下肥担ぎ、収穫物を担ぎ下ろすのは、体の小さかった私には並大抵の苦労ではなかった。 しかし、その山道の秋は楽しみであった。後になって分かったけれど、その当時は、だれに聞いても正式な名が分からなかった真っ赤な実をつけるサルトリイバラ、小さな黄花かたまって咲くアワコガネギク、そしてリュウノウギクがどんなに慰めになったことか。林の中に入れば、ナラブサ、クリタケ、ネズミタケなどのキノコも採れた。 高校を出てから上京、そして50年ぶりに故郷に帰ってきてみると、里山は荒れ、キノコも採れなくなっていたが、この二種類のキクは変わらずに咲いていた。 リュウノウギクは日本の固有種であるという。学名は、Dendranthema
japonicum, Makino。
日当たりのよい林道の石垣や、岩のそばに群がって咲いている。茎は細く、横たわるように伸び、先が立ち上がって分枝し、その先に直径が3cmほどの頭上花一輪をつける。中央に真黄色の筒状花があつまり、まわりを純白の舌状花が一列に囲んでいて、凛とした美しさがある。 葉をもむと竜脳の匂いがするので、名づけられたと書いてある。竜脳とはスマトラ島に生えるフタバガキ科の竜脳樹からとれる高価な香料で、防虫、防腐剤に使われたという。竜脳の匂いがどのようなものかは知らないが、私たちが知る樟脳に似ている匂いであるという。実際、後になって、中国のクスノキ(樟)から容易に採取される樟脳が代わりに使われるようになってからは、竜脳はボルネオ樟脳といわれるようになったようだ。葉や花を手のひらでもんで匂いをかぐと、菊の香のその奥に、何か清涼感のある匂いがするが、これが竜脳の香りなのであろうか。 リュウノウギクを地上の部分から刈り取って、お風呂にいれ、菊湯にするとからだに効くとものの本に書いてあるが、そんな可哀想なことをしないで、ただ、野路に咲く花をそのまま、愛でていて欲しい。
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