カヤ(榧)/イチイ科、カヤ属


 一好さんが榧の実を拾いにいこうというので、仕事をほっぽってついていった。彼の家はかなり古い家系で、広い嶋方家の墓地がある。その中のお堂の傍に20メートルはある巨大な榧がそびえている。直径は1メートル以上。 榛名町 の天然記念物に指定されていて、2階にある私の書斎の窓からも見える。


古い木で何年たっているのか分からないというが、少なくとも何百年は経っていそうだ。最近は拾う人もいなくなり、昨年などはそのままにしておいたという。もったいない話だ。家内は聞いたことも、見たこともないというので、おっかなびっくり付いてきた。

足の踏み場もないという表現があるが、まさにその通り実が落ちていた。3人で30分もしないうちに、りんご箱にいっぱい拾った。実は長径2〜3cmの楕円形で緑色から熟すにつれ黒褐色にかわる仮種皮に包まれている。これは救命胴衣みたいなもので、谷川に落ちても、沈まずにぷかぷかと流れていく。その皮をむくと中に淡褐色の固い殻に包まれた種子がある。殻を剥いて実をかじると、針葉樹特有の香りが口に広がる。森林浴の素である。この実には不飽和脂肪酸が豊富に含まれており、血中のコレステロールを減らす働きがある。また、これを絞った油は高級料亭で、てんぷらに使うというが、当然のことながら食べたことはない。

一好さんは我が家の庭までくると、その皮をむいて、何回も水で洗い、大きな竹かごに干してくれた。そして、驚くことに全部を我が家にくださった。気前のよさに恐縮のしっぱなしである。珍しいから多くの方に分けてあげよう。

 

  榧といえば囲碁をたしなむ人はご存知のとおり、碁盤の高級材である。亡父は多趣味の人で見事な碁盤をもっていたが、私は不器用なので、これは甥にあげた。私の榧といえば、北原白秋作詞、山田耕作作曲の「かやの木山」である。「かやの木山の、かやの実は、いつかこぼれて、拾われて・・・」と続く。小学校から高校の2年生にかけて好んで歌った日本歌曲の中のひとつ。3年になって遅い変声期がやってきて、歌えなくなった。

 

 

2005年9月26日  榛名町本郷にて

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