オカトラノオ(岡虎尾)/サクラソウ科、オカトラノオ属

 子どものころ、烏川の南に沿って隆起する里山をずいぶん歩いた。今の季節であったらチチタケなどのキノコとともに、山百合などを折ってきては、母を喜ばせた思い出がある。オカトラノオもその中のひとつの花であった。それがいろいろな原因が重なって、この辺では近年、めっきり減ってきている。

 花の名前は花穂の先を下に曲げている様を虎の尾に見たてて名づけたというが、なんとも無風流な名がつけられたものだ。サクラソウのような華やかさはないが、同じ仲間だから合弁花で花冠が五つに深く割れている小さな花が密にフサ状になっているさまは、気品ある山の王女さまといった感である。

 私たちの教会に来た宣教師で、J・M・マッケーレブという方は1892年に来日、1941年に帰米するまで明治の終わりから、大正、昭和にかけて多くの文人と交流を持ち、キリスト教布教のいわば土壌つくりをなさった方であるが、早くに軽井沢に小さな山荘をかまえ、その後に続々と来日した若い宣教師の学びと休息の場として便宜を図っていた。その後を宣教師のO・D・ビックスラー(1918年、来日、茨城の山奥で農山村伝道に励まれ、戦後は上京し、御茶ノ水を中心1968年に天に召されるまでキリストの福音伝道に活躍。特に戦後の混乱期には日本中に食料や衣料の援助をされ、また、戦災孤児、老人、身体障害者に愛の手を伸ばし、今も続く、茨城キリスト教学園を創立され、青少年教育にも熱意を注がれた方)が管理をされていたが、先生の亡き後は私が管理を託されている。この山荘は戦中の接収、そして戦後の混乱の中で敷地が狭くなってしまい、わずかに残された庭であるけれども、今年も変わらずにオカトラノオが咲き出で、マイズルソウが地面を覆っている。

 

2005年7月27日  榛名湖・ゆうすげの道にて

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