コブシ(辛夷)/モクレン科、モクレン属

 学名はMagnolia Kobusでコブシの名前がついている。名はつぼみの形を拳に見たててというが、むしろ集合果のほうが幼児のにぎりこぶしに似ている。
 日本は北海道から九州まで山野に自生している落葉高木である。小学生の頃から父の本棚にあった明治大正文学全集を読んでいたが、北海道を舞台に人間の罪性を暗く描いた有島武郎の「カインの末裔」には、花が終わり、葉だけになった辛夷が不作の年の情景として描かれている。
 さて、コブシは庭木としてもここかしこに植えられている。この写真は裏の千恵子さんの庭で撮ったもの。銀色の毛に包まれた冬の花芽がかわいらしい。新緑に先駆けて白い花で野山を飾る花である。
 同じモクレン属には古くに中国から渡)ってきて、この辺の庭にも植えられているモクレンやハクモクレン(この辺ではビャクレンと呼ぶ)がある。
 モクレンの花は長さ10cmほどで外側は暗紫色、内側は淡紫色で枝頂に上品な花を上向きに咲かせる。ハクモクレンは名の通り、長さ7cmほどの真っ白い花を上向きにたくさん咲かせる。にぎやか過ぎるほどだ。
 再び、飯泉 優先生の草木帖から、コブシのところを開いてみると、「つぼみは太い筆形で、穂先の多くは磁石の針のように北を指す。陽光をより多く受け取る南側から成長するための、ゆがみがそうさせているのだ。」とある。気づきもしなかったが、春につぼみが膨らんできたら観察してみよう。このように植物からはいろいろなことを教えられる。切られた木株の年輪の巾のちがいを見て南北を知ることができるように。



2005.02.
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