ヤブラン(藪蘭)/ユリ科 ヤブラン属

 清水孝倫さんの飼料工場の西側に広がるコナラやクヌギの林は見事に手入れされていた。落ち葉(この辺では屑っ葉という)掻きをよくしているようだ。木洩れ日の気持ちのよい林の下はさまざまな草が生えていた。初冬に入るので花は少なかったが、陽だまりにシラヤマギクがまだ咲いていた。そして、ここかしこにヤブランの種子が真っ黒につやつやしていた。これはランの名はつくがユリ科の植物で林床に自生し、葉がシュンランに似るので、このように名づけられたという。
 夏、葉の間から高さ30cmほどの花茎を直立させ、上部に長さ10cm前後の総状の花序をつくり、品のよい淡紫色の小さな花を穂のように咲かせる。花期は夏から初秋までとけっこう長い。庭などによく植えられているので、知っている人も多いと思う。花後に直径6〜7mmの露出した種子を結ぶ。そして秋になって熟すと写真のように黒紫色になる。
 この根には特徴があって、細長いひげ様の根のところどころに紡錘形に肥大した塊根がある。子どものころ掘ってみてなんだろうと思ったものであるが、これは栄養を蓄えてあるところ。干したものを生薬では大葉麦門冬という。主な成分は配糖体の一種であるサポニン、それもステロイドサポニンで、これは自然界にあるもののうちでも際立った抗炎症作用を有すという。
 同じユリ科のジャノヒゲ属のジャノヒゲにも同じ塊根ができるが、これが本家の麦門冬で、効能は同じである。煎じて滋養強壮、咳止めに服用する。 ヤブランの葉が幅 1cmほどに対し、ジャノヒゲの葉は幅が2〜3mmで細く、長さは10〜20cm。よく庭の縁どりに植えたり、灯篭の下を覆ったりする。この種子も露出した種子であるが、秋になるとまん丸でつややかな灰青色の実となる。地に打ち付けると、面白いように弾むので、昔は子どもたちの格好の遊び道具であった。昨年、従兄弟たちがボランティヤーで教会の駐車場の東側の土手に巨石を積んでくれたが、その石の間にはジャノヒゲが植えられている。まだ、間を覆うほどには伸びていないが、楽しみである。


2004.12.
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