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フジバカマ(藤袴)/キク科 フジバカマ属 フジバカマは奈良時代に中国から渡来し、関東以西に帰化した植物と考えられているが、今は絶滅危惧種に上げられている。東京の江戸川の河川敷などは完全に絶えてしまったと新聞に出ていたのは、もう昔のことである。 この辺の里山でも、子どものころと比べ、ずいぶんと花が減ってきている。一つには林道が整備されて、四駆の自動車でかなりのところまで、入れるようになったことも一つの原因と思うが、それ以上に、自己中心で他人を思うことの少ないこと、すなわち、今や古語となってしまったことばを使わせてもらえば、「惻隠の情」を持つ人が少なくなってしまったことが最大の原因だと思う。 たとえば、山菜など全部採り尽くしてしまう。タラの木などは枝を全部切って持っていってしまう。地元の人は、芽を有難うといって、少しいただき、必ず何本かは残しておくという、やさしさを持っている。今でも庭の柿の木などのてっぺんには鳥たちのために、何個かの柿が残されている。町の人はそうはしない。やがて自分にしっぺ返しが来ることにとんと気がつきもしない。 子どもの喧嘩にしても、昔はよく取っ組み合いをし、なぐりあったが、殺しまではいかなかった。お互いに殴られる痛みを知っていたからだ。今はけんかはしない、普段はよい子だが、何かあるととことん突っ走り、相手を殺してしまう。手加減することを小さなうちから体験していないからだと思う。 話をもどすと、お隣の嶋方洋子さんにいただいて、教会の庭で秋の七草の一番終わりの花として咲いているフジバカマ(下記の写真)も含め、今、目にするものは残念ながら株分けして、栽培されてきたものばかりである。ただ、この仲間のヒヨドリバナ、サワヒヨドリはまだ元気である。この前、玉原高原に行ったら、4枚の葉が輪生するヨツバヒヨドリがいたるところに群生していた。ちなみにフジバカマの葉は3深裂で対生。 フジバカマの花は集まって咲き、一つ一つの花は小さく目立たないが、藤色、総苞の形が袴に似ているというので、このように名づけられた。茎や葉を生乾きにしたとき、桜餅と同じ香りを放つ。それは同じくクマリンを含むため。 古くは、「蘭―あららぎ」といい香料として、また、浴用に用いられたという。その「あららぎ」とは針葉樹のイチイの別名でもあるので面白い。 紀 貫之は選者の一人でもあるが古今和歌集 巻第四 秋歌上の中で、「やどりせし 人のかたみか ふじばかま 忘られがたき 香ににほいつつ」と歌い、紫式部も源氏物語 第三十帖を藤袴の巻とし、加茂の河原を舞台に書いている。目立ちはしないが、なんとなく懐かしさを感じさせる花の一つである。 ![]() 2004.10.
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