ナシ(梨)/バラ科 ナシ属

 「ニュー・シー・トン・バイ・リ」と聞いて、50年ぶりの榛名人にはさっぱり分からなかった。これは榛名町の特産品を列挙したものである。
 乳、榛名牛乳はことのほかうまい。シイ茸、ホダ木にするクヌギやナラ等がこの辺には多く、気候も合って質のよい椎茸が大量に生産される。豚、近隣でも何万頭という豚舎がいくつもある。梅、これは東日本一の生産量を誇る。そして梨、生産量こそ、鳥取、千葉、茨城に遅れをとるが隠れた名品である。
 昨春、ここ榛名町に戻ってきたが、我が家と教会堂を建ててくださった廣神建設の社長が秋になって飛び切りの梨を届けてくださった。里見の富沢滋俊さんの梨園の梨であった。早速とんで行った。今や顔なじみとなったが、息子さんの邦明さんはなかなかの研究家で行くたびに特別講義を聴き、木を見せてもらい、新しい品種の味見をさせていただいたりしている。楽しい時間である。
 幸水、豊水が終わり、今は二十世紀の真っ盛り、ぼつぼつ愛宕や巨大になる新高が出てくる。写真は豊水である。梨は大きく分けて和梨、中国梨、洋梨があり、和梨を分けて赤梨と青梨となる。子どものころの赤梨というと、ツル、チョウジュウロウ、ワセアカ。青梨は、ヤグモ、ニジュッセイキ、キクスイが代表的なものであったが、今は、ニジュッセイキを除きなくなってしまった。
 豊水は赤梨に属するが、この出自は不思議で、約30年前に、青梨の菊水と小玉の青梨、八雲の交配種にさらに八雲を交配して世に出てきたものである。さすがに肌合いに青梨の面影を残している。甘みは幸水のほうが甘いが、わずか酸味を持つ豊水を私は好む。この秋、お世話になった方々に梨をお送りしたが、21世紀の今、懐旧の念をこめて二十世紀を選んだ。色といい、味といい、形といい、どうしてどうして前世紀のものでは決してない。<写真
 昨年、7月、はるなキリストの教会の会堂の献堂式(竣工式)をおこなったが、そのときお招きした礼拝説教者は、「キリスト教とかけて、榛名の廿世紀ととく。その心は、多くの人は知らないが、味は日本一、世界一」といって、参会者の笑いをさそったが、その的を得たなぞかけは、その後、多くの人にキリスト教について考え始めさせている。

 さて、バラ科の果物(リンゴ、モモ、スモモ等)に特有なのは、血糖値を上げない糖分であるソルビトールをたくさん含むこと。カリウムを多く含むので利尿作用、また、ナトリウムを排出して血圧を下げる効果もある。また、ナシを食べると歯に当たる硬い石細胞は消化されないので便通をよくする働きをする。
 ナシは、その目立つ存在から、他の植物にもナシの名を借りているものがある。イワナシ(ツツジ科)、常緑で15cmくらいの小低木。この辺では、尾瀬の至仏山で見られる。サルナシ(サルナシ科、マタタビ属)、長い間、日曜学校の夏のキャンプを本栖湖畔でおこなっていたが、そこのヤブにはたくさん生えていた。これはキウイ・フル―ツの親戚で、熟したものの生食は絶品。ケンポナシ(クロウメモドキ科)、子どもたちはこれをどういうわけか、テンプラナシと呼んでいた。おそらくなまったものだろう。昔はこの辺の山にもまれに生育していた高木で、秋に黒紫色に熟した豆粒ほどの実を見つけたときは小躍りしたが、よほど木登りがうまくないと採れず、たいてい、ガキ大将が登って、採ってくれた。


2004.09.
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