シュンラン(春蘭)/ラン科 シュンラン属
 こどもの頃、春先になると近所の里山に入り、雑木林の割合と乾いているところに生えている、この花をたくさん摘んできて、さっとゆでて酢の物にしてもらって、よく食べたものである。そのくらいどこにでもあった。都会の人は、高級料亭の和食のつまに出されているのを覚えている人も多いと思う。
 今は乱掘されて、自生のものはなかなか見られなくなったが、昔から観賞用に鉢にしたてて栽培しているので、教会の庭にも昨秋、分けていただいた株が花をつけている。名前の由来は、中国のラン科の春蘭に似ているため。このあたりの呼び名は、「ジジババ」である。
 四方に広がる濃緑色の葉は線形で、両縁に細かいぎざぎざがあり、やや硬く、葉先はたれている。その根元から何枚かの鱗片に包まれた肉質の花茎を伸ばし、その先にラン科特有の形をした上品な花をひとつつける。ところが、飯泉先生によると、本来は一本の花茎に数花をつける総状花序であったという。その証拠に、花の付け根にその痕跡を残している。まれに先祖がえりして、一本の茎に二つの花をつけることがあるというが、飯泉先生は南高尾の山稜で野生の実物と出会い、ひどく感激されたと前述のご本にお書きになっておられる。
 洋ランのシンビジュウムと同属であるが、色といい、高貴な姿といい、どんな洋ランよりもすばらしい。中国では、蘭、菊、梅、竹を気高き君子にたとえて四君子といったが、ランとは春蘭をいったものという。シュンランを見ていると創造の神がいらっしゃることをつくづくと納得させられる。
 シュンランには、花からは想像もつかぬ薬効がある。ひび、あかぎれに効くという。根は肉質の太いうどんのような形で横につながる鱗茎であるが、それを日干しにしたものを粉末にし、市販のハンドクリームなどに練りこんだものを、患部にすり込むと効くという。もっとも、最近は地球温暖化のためなのか、それとも摂る栄養が豊かになったためか、ひび、あかぎれには、このあたり農山村でもトンとお目にかからない。

2004.04.
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