大地震が起こるや、看守はすぐに牢獄に駆けつけました。ああ、なんたることか！　牢のすべての戸は開け放たれ、人気はありません。看守は一瞬のうちに覚悟を決めました。当時、ローマでは囚人を逃がせば、看守は自分の命で責任を取らなければならなかったのです。

彼は歎き、叫びつつ、剣をわが身に突き立てる、まさにその時、「自害してはいけない。私たちはみなここにいる。」と奥から声がありました。灯火を手に奥に行って見ますと、なんと囚人全員がパウロとシラスの足元に集まっていました。囚人たちは口々に昼間から、この夜にかけてあったことを話し出しました。　

特に、真夜中ごろ、パウロたちが神に感謝の祈りを捧げ、喜びの讃美を歌っているのを聞き、囚人たちは驚き、胸を打たれ、聞き入っていたこと。そして地震が起き、牢獄の鍵が全部、はずれてしまったことなどをです。

看守は逃亡するよりもパウロの信じる神によりすがる囚人たちの姿に驚愕します。そして、彼らの目の輝きに気づいたとき、自分もまた、いったん、死んだものであったのに、こうして生きていることを知りました。そして、自分もパウロの神を知りたいと心底から願いました。

パウロからキリストの福音を説き明かされるにつれ、看守の心には全く新しい世界が開けてきました。彼はこの喜びを家族にも知らせようとパウロらを丁重に我が家にお連れし、イエス・キリストの福音を家族全員にくわしく聞かせました。

パウロの話が終わったとき、はじめてパウロたちがまだ、傷だらけであることに気づきました。それほどに看守にとっても、彼の家族にとっても、その夜の出来事は驚くべきことの連続であったのです。あわてて手当てをしたあとで、一家の信じる者は全員、悔い改め、イエスをまことの救い主であると信じ、告白し、御名にいるバプテスマをされました。　

　生ける神に出会った人が、この喜びを愛する家族にもすぐに伝えたすばらしい例です。このようにして、キリストの福音は日本にまで広まってきたのです。