
簡単に言えば燃料タンクです。ZZRをはじめ、小〜中排気量や旧式のオートバイでは「キャブレター」とよばれる一種の霧吹きのような装置により、空気とガソリンを混合してシリンダーに送り込みます。このキャブレター方式の燃料供給では、エンジンにガソリンを送り込むのに重力を利用します。
つまり、高い位置にある燃料タンクから、ガソリンを下方に落とし、キャブレターで空気と混合するのです。この方式の場合、大概2箇所にガソリンの導出口があります。通常は燃料タンクの一番低い位置よりもやや高い位置にある導出口からガソリンを送り込みますが、それで足りなくなった場合・・・一般的に「ガス欠」といわれる状態になったとき、さらに低い位置にある導出口からガソリンを送り込み、それでしばらく走ることができます。この切り替えはフューエルコックと呼ばれるつまみをひねって行います。ZZRではシートカウル左側面にこのフューエルコックがあり、「RES」の位置にすると「リザーブ」つまり予備部分のガソリンを導出する弁が開いてしばらく走れます。
この方式は重力を利用するためまず燃料タンクがかならずキャブレターより上方に配置されなければいけないというオートバイのメカニズムデザイン上の制約があること、またキャブレターでの燃料混合は機械的に行われるため多少なりとも燃料のロスがあることなどから、最近では大排気量車のかなりの部分、それにスクーターなどでもフューエルインジェクション、つまりFI=電子燃料噴射制御が採用されるようになってきました。
これはキャブレターの役目を電磁ポンプと噴射機で行うもので、ガソリンの導出はポンプによって強制的に行われるため、燃料タンクの位置とは無関係にガソリンが吸い出されます。またECU(中央コントロールユニット)により、エンジンの回転数、ギア段数、スロットル開度などを検知した結果から総合的にガソリンの噴出量が計算され、常に適量のガソリンが噴出されるため、キャブレターよりも燃焼効率がよくなります。
FIではその電磁ポンプによる強制的な燃料吸出しという特性上、フューエルコックはありません。いっぺんガス欠になったら本当にからっぽということです。車ではもうFIが主流ですが、オートバイでもこれからは環境への排ガスの影響などを考慮して、いままでFIが搭載されていなかったクラスでもFIが搭載されるようになってきました。キャブレターで走るオートバイも近い将来なくなっていくのではないかと予想されます。
キャブレターでの燃料調節はコンピュータによるデジタルなFIのそれに比べて割と大雑把で融通が利き、人間のあいまいな操作に適度にいい加減に反応してくれるため乗りやすいという話も聞きますが、「FIが乗りにくい? 腕がないだけだろ、けっ」という話もあるので、その辺は好みの問題もあるかと。
また、キャブレターに比べてFIは装置自体の重さと価格が少々上がるのですが、それも当たり前、性能でカバーできる範囲になっていくのだと思います。
また、このタンクをフレームに組み込むとこんな感じになります。

(2004/8/17)