勝手に推薦♪(過去)


m ものの本 m

イニュニック 〜アラスカの原野を旅する〜
     星野道夫
 新潮文庫 438円
1998.7.1
ISBN4-10-129521-2
 吹雪の中のシロクマ親子、夜空にうかぶ虹色のオーロラ・・・雄大な、でも手にとれるような極北の大地。そこは今も確かにあるんだよと語りかけてくるような愛情に満ちた写真を見て、星野さんの名前を焼き付けている方は多いと思いますが、写真に添えられた詩のような言葉が印象に残っているという人もまた多いんじゃないでしょうか。これは星野さんがアラスカに家を建ててから3年にわたって執筆していた文章と、いくつかの冒険を加筆した「記録」です。
 『僕はアラスカの冬が好きだ。生きものたちは、ただ次の春まで存在し続けるため、ひたむきな生の営みを見せてくれる。それは自分自身の生命を振り返らせ、生きていることの不思議さ、脆さを語りかけてくる。』
 星野さんが魅せられたアラスカの大自然と、そこで生きている人々の「現実」が私たちにはただただ不思議で、いろいろなことを考えさせられる一冊です。
森からの手紙
 文と絵・田島征三
労働旬報社 1600円
1993.11.10
ISBN4-8451-0324-9
 映画『絵の中のぼくの村』の作者・田島さんのエッセイ。川の中で捕まえた小さな魚が生命のかぎり暴れる「掌のグリグリ」を描きたいという、絵本作家・田島征三さんが住んでいる、貧しいけれど美しい山里の町。その井戸がとつぜん異臭を放ちだし、発ガン性物質が大量に検出されました。谷間のむこうには、ゴミの最終処分場が・・・。
 自分の町のゴミが燃やされた後にどこへ行くのか知っている人はほとんどいないでしょう。豊かな都会から出る大量の焼却灰は、川の上流の谷間に埋められています。その灰の毒物が漏れださないようにと敷かれているシートが破れている。専門家や処分場作業者の証言がありながら、あふれだすゴミの山を前に、むりやりもっと処分場を作ろうとしている貧しい町。
 これはもうゴミ問題ではなく文化の問題だと、田島さんは訴えます。谷間のモミの、流れる川の、川に棲む魚の、その川で遊ぶ子どもの、その子が産む、その子どものことを話しているのだと、叫ぶように描かれた、たぬきやハヤの絵とともに綴られた、日の出の森の今。札束で頬をひっぱたいて無理を通すような大人になりたくないあなた、どうぞ読んでみてください。
口からうんちが出るように手術してください
    小島直子
 コモンズ 1700円
2000.5.15
ISBN4-906640-30-3
『五体不満足』より面白い!と紹介されていた本で、ほんと久々に感動した本。先天性脳性マヒの直子さんが『普通の学校で勉強がしたい』『自立して暮らしたい』と次々に限界へ挑戦していく自伝です。家族に支えられながら普通学校に通い生徒会副会長を務め大学受験し、ボランティアや友達の24時間介護に支えられながら一人暮らしをする。歯をみがく、お風呂に入ることがどれだけ大事か、おしっこも人の手を借りなければならない日常が、でも実に明るく描かれてる。トイレに行かないために何日も前から水分調整して望むデート。口からうんちが出せたら、自分ひとりでできるのに。そんな彼女のユーモアある溜息がタイトル。車イスでも自由に出歩ける米バークレー。月とスッポンの日本の街や店。今も勉強を続けている彼女の大きな目標や、切ない恋。その発想・行動があまりに尋常でない・・・彼女は宇宙人では?と大学教授をして言わしめる彼女の輝きを、見なきゃ損! 絶対オススメの一冊!!
シュタイナー教育の創造性
 ルネ・ケリードー
 佐々木正人訳
 小学館 90.1.10




☆なんか教育ものが続いてますね〜
 シュタイナーはドイツではじまった教育運動。単にドイツ好きなので手にとってみたのがきっかけでしたが、日本の押し付け・つめこみ教育とあまりにも違う豊かな考え方に惹かれて、けっこう読みあさってます。本当に面白いですよ(^-^)
試験のない学校として有名なシュタイナー学校。すべての子どもは奇跡の賜物。個性を育て、将来、傍観者ではなく創造者となれるよう、強靭さと情熱と智恵にあふれた若者に成長するように準備するのが教育。米シュタイナー学校運動の指導的人物の氏の、教師と父母のための講演をまとめた一冊。
 小学生で決定的な役割をはたしている子どもの四つの気質────陽気で社交性にすぐれた春の子どもは時に軽薄に、すばらしい指導者になる夏の子どもは時に破壊的、人生の意味を知りたがっている秋の子どもは自己憐憫に陥りやすく、穏やかで誠実な冬の子どもは怠惰にもなる。その子の気質をふまえて、長所を引き出していく道筋や、子どもの驚きや感謝・責任感をどのように育てるかといったシュタイナー教育のありかたがわかりやすく紹介されています。シュタイナーの本というと、難解な哲学書や精神学のような本が多いですが、この本はわかりやすくてとっても面白く読めます(^-^) シュタイナーを知らない方へおすすめの書。
学校のゆくえ
共同編集:河合隼雄
    灰谷健次郎
 岩波書店
 現代日本文化論3
子どもが殺されていく。未熟な子どもを望ましい形に『調教』する、今の教育の概念はほとんど否定されるべきだと、灰谷健次郎さんはいい切ります。とらえようのない妖怪のような教育を検証・再構築する指針にと、子どものころ感じた『学校』や、現実に子どもたちと向き合っている『学校』が様々な方向から語られます。『生徒に愛情を抱けない教師に、どうしてよい授業ができるだろうか(映画監督・山田洋次)』、『弁護士が少年鑑別所で「授業」する以前に学校で同じ授業が成立していなくてはならない(弁護士・神谷信行)』、『とりあえず学校を疑ってみる(漫画家・石坂啓)』・・・作家・中島らも、俳優・武田鉄矢、小学校教諭、障害者、サックス奏者、人類学者等々とじつに多彩な顔ぶれが執筆。読みごたえがありました(^-^)
まちなかで
  アウトドア
  都市生活者の
  サバイバル術


 生活環境研究会
 三交社 95.6.25
水・ガス・電気はいざというとき簡単に切断されてしまいます。阪神大震災で人々がなにに困ったかという視点から、最低限自分の身は自分で守る方法を、登山家・アウトドア活動家・自然観察指導員・自転車通など、その道のプロたちが面白おかしく図解付きで解説してくれます。いざというときのため日頃からサバイバルに慣れておこうと、ベランダや庭で寝てみよう、2階の窓からロープで降りてみようというちょっと奇抜な提案から、飢えを満たす様々な方法や怪我の対処法などが、具体的に楽しく書かれています。Y2Kでつい手にとったんですが(^_^;)なかなかわくわくしますよ〜
ミュンヘンの中学生
 子安美知子
 朝日文庫
なにもかも知識として教え込んでしまおうとする教育は、子どもをむしろ無能にする。幼児には知的教育を行わない。学齢期には問題集を解くだけの知識ではなく、誰も解いたことのない難問を将来解いてゆく力をつけることを目標とする『シュタイナー教育』。ミュンヘンのシュタイナー学校で学ぶ娘の中学時代を綴った本。日本の学校が失っているあたりまえの教育を考えさせられます。
子どもたちへの手紙
 C.S.ルイス
 中村妙子訳
 新教出版社 86.11.15
十歳のときには、おとぎ話をこっそり読みました。五十歳になったいま、わたしはそれをおおっぴらに読んでいます。子どもっぽいと見られないかという心配と、大人らしくなりたいという願いを含めて、子どもっぽさを捨てたのです(『別世界にて』ルイス)
『ナルニア国物語』の小さな読者たちと作者ルイスの手紙を綴った本。
買ってはいけない
 『週刊金曜日』
  ブックレット2
  99.5.20
ヤマザキパン、マクドナルドのハンバーガー、日本盛、ウエットティッシュ、バルサン・・・体によくないんだろうなあ〜と思う品々を明快に解析!
同ブックレットの『ケータイ天国電磁波地獄』もナイスです!
風成の女たち
〜ある漁村の闘い〜
 松下竜一
 現代教養文庫 初出72.8
あたたかな、そして熱い『闘うやさしさ』を綴り続ける松下竜一さんのルポタージュ。大分県臼杵湾の埋立てに反対した小さな漁村の、やさしいからこそ、子らの未来を思って必死に闘った母親たちの記録。
地球の落とし穴
 広瀬隆
 NHK出版 98.3.24
商売のために子孫をつくれないように遺伝子操作された魚が、天然魚を滅ぼしてしまう。1回だけ使って捨てるゴミの山から発生するダイオキシンが出産異常を引き起こす。ダイアナ妃がなぜ死んだのか。株価暴落を仕組む構造。広瀬さんが指し示す事柄には、いつもはっとさせられます。
息子はなぜ白血病で死んだのか
 嶋橋美智子
 技術と人間 99.2.15
原子力発電所の下請け会社に就職し、白血病で亡くなった息子の労災認定を勝ちとるまでの母親の手記。被曝労働なしには動かない原発。それに対し結局だれも責任をとらない無気味な構造を垣間みる1冊。
されど我、処刑を望まず
〜死刑廃止を訴える
  被害者の兄〜
 福田ますみ
 現代書館 98.9.15
「高度の文明社会において、人知れず国家による野蛮で残酷な人殺しが行われていることに非常な憤りを感じます。どんなに悪事を働いた者でも、国家が人の命を奪うことは許されない」
保険金殺人の被害者の兄が、犯人の死刑執行に反対する気持ちに至るまでの記録。



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