どうして………

 どうしてなんですか

 どうしてみんな
 こんなものばかり作るんです

 ………ぼくにはわかりません

  金田正太郎(鉄人28号2004・第5話「鉄人対ブラックオックス」より)




 期せずして28番目の“ひとこと”を、正太郎くんがゲットしました〜(⌒∇⌒)

 正太郎くんがまだ鉄人を受け入れられずに“命のない機械”とか云っちゃって、父親にさえ不信を抱いていたところへ、不乱拳博士が生み出した人造人間の存在をさらに知ってしまいます。
 どうしてこんなものを、と茫然自失の正太郎くんに、敷島博士の返答はといえば、「仕方がなかったんだよ」。

 いやあ、ここの博士はさとりきってるというか、自分の興味がなにより優先。迷いがない。鉄人を「完全なる兵器!」とすごい大興奮で迎えたあたりから、ちょっとマッドな科学者の顔が前面にでてきて、こういう人が正太郎くんの育ての親なのは……、と心配になったものです(その後、正太郎くんを育てたのは大塚署長と判明。ホッ…)。正太郎くんには秘密にしておきたいがゆえのそっけなさなのでしょうか。
 「きみにあの戦争のことを理解しろとは云わない。でもね、仕方がない、そのひとことですませるしかないことってあるんだよ」などとたたみかけられ、正太郎くんが云ったお言葉が上の台詞なのであります。

 わからなくて当然です。
 そりゃあの時代、生きのびるために仕方なく命令に従ったひとは大勢いました。でもそれをすべて戦争が生みだした狂気がゆえと思考停止されても、子どもにはなにも伝わりません。かくして正太郎くんはなかなか鉄人を受け入れられずに翻弄されまくるのです。みんなもっと話しあおうよ(^-^;)

 今川監督の鉄人28号には、まいりました。原作そのもののあのキャラがあのロボットがまんま動いてる〜!という興奮。ジャイアントロボを彷彿させる怪物然としたロボットたちの存在感。OP・EDの感動的なこと。音楽の素晴らしいこと。声優さんの豪華なこと。そしてなによりも“もうひとりの正太郎”です! 原作では設定程度だった“戦争中に陸戦用巨人兵器として作られた鉄人”というのをまさか物語の中心に据えるとは………。“正義”という言葉が胡散臭いものになってしまった現代に、なにかとてもマッチしていました。ひたすら戦争の傷跡というテーマをあらゆる角度から追いつつも、原作の冒険活劇色をきっちり残し、それぞれ信念(とか欲望とか)を持って動く大人たちのドラマ、そして少年の成長物語まで堪能できるのです!

 ロボの大作くん(も一緒にしていいですかね)と、太陽の使者の正太郎くんは、素直でけなげな子でした。子どもとは思えないくらい勇敢で礼儀正しいのは血統(?)として受け継がれているのですが、原作の少年探偵・金田正太郎は、性格が悪いのではというほど抜け目もない超人的な存在、という印象だったので、初回OP前で悪人を前に「はっはっはっ」と笑うでかい態度を見たときには、なるほどこれが原作の金田正太郎か〜(~_~;)と青くなったものです。
 ところが蓋をあけてみれば、鉄人2004の正太郎くんは、じつに子どもらしい子どもでした。怒って八つ当たりしてイイ気になって失敗して落ち込んで………、あぶなっかしいのです。「なんでぼくがこんなものを」というじつに真っ当な反応からはじまり、イヤイヤ鉄人を操縦してうまくいかず「役にたたない」とか云っちゃってた子が、とうとう、鉄人は父親の残してくれた兄弟、もうひとりの自分なのだと思い定めたときは、落涙いたしました。太平洋戦争のなかで生まれた数々の“悪魔”の所業に対して「ぼくには、わかりません」と正太郎くんは口癖のように繰り返していましたが、少年探偵をやっていられたのは敷島博士や大塚署長がいてくれたからこそだったと気づき、父親の愛情を確信して、すこしずつ成長していきました。

 あと村雨健次さんがジャイアントロボ同様へんな方で(^-^)、たいへん素敵なのも見所。さいごはカッコいいところをひとり占めしてましたねえ。不死身の村雨健次の最期………カムバ〜ック、健次!(あいまいに留めときましょう)
 そして敷島博士がやはり、ドラえもんか(なんでも助けてくれる)真田さんか(なんでも知ってる&発明してくれる)という存在なのも、なつかしくとても嬉しゅうございました(~_~;)
 そして、狙っているとしか思えない正太郎くんのあざといシーンが散見し(←観た方はおわかりでしょう。どっかで正太郎くんはヒーローでありヒロインでもあるなんて書かれてましたし〜)、絶妙な笑いも取り混ぜつつ、不死身の兵士として作られた鉄人たちの重い主題をしっかり見せ、じつに楽しませてくれました。
 あまりに重い責任を引き継がざるをえなかった正太郎くんの、最期の覚悟。そして、太平洋戦争の遺物である鉄人が、さいごに“平成の時代”に生きる私たちに語りかけたかったもの………。ちゃんと終わったなーという感動、満足感もずん、と来ました。

 鉄人と云えば「太陽の使者」という時代に育ち、あまり原作も読んだことがない不埒なファンだったのですが、ひたすら嬉しくてしあわせな日々を過ごしました。今川監督はじめすべてのスタッフのみなみなさま、ありがとうございます!

 おもわず鉄人2004を語ってしまいました(~_~;)
 放映地域外の方も、ぜひDVD1巻を、まずは観てみてくださいな〜!



「みな、抗しがたい魅惑のとりこになった集団とでもいうしかないような状態におちいっていました。作業への専念、その興味………、それは科学研究という点からみると人を夢中にさせずにはおかない経験でしたが………、それによってわれわれ全員が計画に完全に没頭し、他には何も考えなかったのです。そしてその熱烈な努力がずっと続いたわけです」
(国際シンポジウム『原爆投下と科学者』 B・T・フェルトの発言
 “ナチス・ドイツより先に原爆を”とやむをえずプロジェクトに参加した科学者のほとんどが、ナチスが敗れた後も原爆開発を続けたことに対して。)
 
太陽の使者 鉄人28号とは!




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