High uric acid blood syndrome

(2005.2記)


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尿酸


尿酸は主に肝臓で生産され、主に尿中に排泄される。体内では、尿酸が作られる量と、排泄される量がバランスを保ちながら、常に一定に保たれている。正常な体内には約1,000〜1,200mgの尿酸が蓄積(尿酸プール)されており、一日に生産、排泄される尿酸の量は500〜700mgである。


高尿酸血症と痛風


尿酸値は、血液1dl 中に何mgの尿酸が含まれているかで示す。尿酸が血液中に溶ける量には限界があり、尿酸値7.0mg/dlを超えると、高尿酸血症と診断され、溶けきれなくなった尿酸の結晶化が始まり、関節などに沈着する。はじめは自覚・他覚症状は無いが、尿酸値の高い状態を数年間放置していると、ある日突然、足の親指などが激しく痛みだす痛風になる。

尿酸値は、生活環境や体調の変化により変動するが、4.0〜6.0mg/dlに保つことが大切である。高尿酸血症になる原因として、

尿酸のつくられすぎ(産生過剰型)
・プリン体の摂り過ぎ(プリン体とは、たんぱく質のもとになるもので、動物の肉や内蔵に多量に含まれ、これが分解して尿酸になる)。
・肥満
・多量の飲酒
・激しい運動
・活動的でストレスが多い
・利尿剤の副作用

尿酸の排泄が悪い(排泄低下型)
・腎臓の働きが低下(腎不全)すると尿酸の排泄が悪くなる。

がある。産生過剰型であるか排泄低下型であるかは尿中尿酸排泄量により鑑別し、800mg/日以上のものは産生過剰型、400mg/日以下のものは排泄低下型、その間のものは混合型と考えられる。

食事による尿酸の増加は20%程度なので、食事により高尿酸血症が生ずることはまれで、内因性尿酸合成の亢進によることが多い。高尿酸血症の原因の大部分は尿中排泄低下が占めている。という説もあり(*1)。また血液疾患等による核酸生過剰も原因となる。
痛風は放置すると、次第に尿酸の結晶が親指の関節から、足首、膝、肱、手首の関節など体内のさまざまな場所で沈着し、痛風結石、尿酸結石、痛風腎などの病気につながることもある。痛風やこれらの合併症を予防するためには、尿酸値が高いと指摘された初期段階での対処が大切である。


高尿酸血症の治療方法と目的


高尿酸血症の治療は生活習慣の修正、尿路管理、尿酸降下療法の3つが中心になる。日本痛風・核酸代謝学会の 2002年高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインでは従来からの専門家の合意である「6-7-8のルール」(高尿酸血症7.0mg/dL、薬物療法開始基準 8.0mg/dL、コントロール目標6.0mg/dL以下)に準じ下図のような治療方針を推奨している。
高尿酸血症の治療方針

  尿酸値≧7mg/dL である
     ↓
  痛風発作または痛風結節
 ↓あり           ↓なし
薬物療法   尿酸値<8mg/dL 尿酸値≧8mg/dL
         ↓            ↓
     生活習慣修正 合併症(腎障害、尿路結石、高血圧、高脂血症、虚血性心疾患、耐糖能異常など)
       ↓あり           ↓なし
     薬物療法   尿酸値<9mg/dL 尿酸値≧9mg/dL
               ↓          ↓
            生活習慣修正   薬物療法



痛風の発症が起きた時には、まずは薬が使われる。薬を飲めば痛みはなくなるので、「薬さえ飲めばよい」と考えて、食生活を改めない人がいるが、薬はあくまでも痛みをとるための緊急処置であり、高尿酸血症を治療するものでは無い。


痛風・高尿酸血症の薬物療法


1)痛風関節炎の治療
痛風発作(痛風関節炎)には消炎鎮痛剤を使用する。痛風発作時に血清尿酸値を下げすぎると発作が増悪する場合が多いため、発作中には尿酸降下薬の投与はしない。

2)尿酸降下薬
合併症の有無にもよるが、一般的には数ヶ月食事療法をしても尿酸値が8〜9mg/dLを超える場合に薬を開始する。治療による尿酸値の目標は6.0mg/dL以下とする。尿酸降下薬には尿酸の尿への排泄を促進する尿酸排泄促進薬と体内の尿酸の生産をおさえる尿酸生成抑制薬の2種類がある。

3)尿路管理
高尿酸血症で早朝第一尿の尿pHの低下(6.0未満)がある場合や、尿酸排泄促進薬で治療する場合には尿路結石を生じやすいため、尿アルカリ化薬の投与により尿pHを6.0〜7.0に保つ。

治療の根本は、生活習慣の改善であり、食生活、適度な運動、ストレスの解消の3つが基本である。中でも食生活を見直し、尿酸値のコントロールを長期間続けていくことが最も重要である。


尿酸値コントロールのための食事療法


肥満を解消する
(1)1日の摂取カロリーは標準体重あたり25〜30Kcal/kgとし、1ヶ月に1〜2kgの減量を目安にします。また、バランスのよい食生活を心がける。
(2)間食、清涼飲料、アルコールの摂取を控える。
(3)脂肪の量、脂肪の多い食品(霜降り肉など)、脂肪の多い調理方法(てんぷら、フライなど)は控える。
(4)野菜、海藻、きのこ類をたっぷり摂取する。

プリン体の多い食品は控える
プリン体は尿酸の材料になるので、従来はプリン体を含む食品の摂取を厳しく制限していた。しかし、食べ物から摂るプリン体が尿酸値に与える影響はそれほど大きくないことが分かってきた(*1)。そこで最近では、プリン体の摂取をあまり厳しく制限しない傾向にあるが、できるだけ、肉や魚などのプリン体の多く含ま れた食品を毎日食べ続けないようにする。卵や豆腐などはプリン体の少ない食品である。

アルコールを制限する
アルコールは尿酸の排泄を抑制するため、尿酸値を上昇させる。痛風発症は深酒をした時に起こりやすいので、禁酒することが理想だが、日本酒なら1合、ビールなら中びん1本、ワインならグラス1杯、ウイスキーならダブル1杯程度にとどめる。特に、ビールはプリン体を多く含むので、飲み過ぎには注意する(と一般的に言われているが、茶碗一杯のご飯の方が多いらしい。しかしアルコールが尿酸の排泄を妨げるので飲みすぎてはいけない)。

アルカリ性食品を摂る
血液のPHは食事の影響は受けないが尿のPHはかなり変化すると言われている。尿に尿酸が増加すると、尿のPHが酸性に傾き、尿酸が結晶化しやすくなるので、尿のPHをアルカリ性に保つために、野菜・海藻をたっぷり食べることが有効である。

尿をアルカリ化する食品は、ヒジキ・わかめ、こんぶ・干ししいたけ・大豆、ほうれんそう、ごぼう・さつま芋、にんじん、バナナ・里芋、キャベツ・メロン、大根・かぶ・なす、じゃが芋・グレープフルーツ

尿を酸性化する食品は、卵・豚肉・サバ、牛肉・アオヤギ、カツオ・ホタテ、精白米・ブリ、マグロ・サンマ、アジ・カマス、イワシ・カレイ、アナゴ・芝エビ、大正エビ

水分は1日2リットルくらい摂る
1日の尿量がリットル以上となるように、十分に水分を摂る。尿量を増やし、尿中の尿酸を薄めて尿酸の結晶化を防ぎ、尿酸を排泄させるためである。ただし、ジュース、炭酸飲料や砂糖入りコーヒーなどを多く摂ると、カロリー過剰になるので、水分は水、お茶、ウーロン茶、砂糖抜きのコーヒー、紅茶などで摂るようようにする。

適度な運動
有酸素運動は血清尿酸値に影響せず体脂肪の減少、軽症高血圧の改善、HDL-コレステロールの上昇など高尿酸血症に合併しやすい危険因子を改善する。


参考サイト


健康読本(月刊「健康日本」より)
内科診断検査アクセス
札幌厚生病院循環器科

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