上岡覺の日本語

 

4 「ジッカイとジュッカイ」

 

 高島俊男の「お言葉ですが…」(文春文庫)に「ジッカイとジュッカイ」(1996.6.6)といふエッセイが収められてゐる。「ジュッ」は東京なまりなのだといふ。以前、いきつけの書店(文京區千駄木にある創文堂)の年配のご主人に「十匹」を如何讀むか伺つたとき、私の豫想を裏切り、「ジュッピキ」といふ答が返つてきたのは當然だつたのだ。

高島氏は、「…、もとはせまい一東京地域のなまりだった「ジュッ」が、今や周辺にむかって、特に若い人を中心に拡張中、その分「ジッ」は後退中、という形勢でしょう」と書いてゐるが、私は、「ジュッ」が擴張中いや席巻したのは、新表記「ジュウ」に引き摺られた結果だとやはり思ひたい。國語審議會を惡役にしたいのだ。

(2001.2.24)

 

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