タイトル |
著者名 |
投票得点 |
『少年たちの密室』 |
古処誠二著 |
+5点 |
社会派的要素がふんだんに入っていながらも全く読みにくさは感じなかった。暗闇の中での少年たちの心の葛藤は、読んでいて非常に共感できた。自分は学生であるから、威厳のない教師への反感などは特にそう感じた。新本格作家の最後尾近くを走りながらも、作品的には最先端にいるといっても過言ではないと思う。
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『UNKNOWN』 |
古処誠二著 |
+4点 |
一見、自衛隊基地の中のただの盗聴騒ぎを扱っているだけに見えるが、その中身は非常に濃いものになっている。基地の中の密室での事件を書きながら、同時に自衛隊という一般大衆から隔絶された「密室」で生きている登場人物たちが生き生きと描写されているのがよい。
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『壺中の天国』 |
倉知淳著 |
+3点 |
電磁波と無差別殺人、この二つと戦う一般人を描いたもの。
作者が銘打っているように、ラストには諧謔的で、ひとつ間違えると読者が怒り出しそうなトリックがある。それを巧く隠し、探偵役に絶妙なタイミングで暴かせているのが、流石倉知淳、といった感じ。
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『マスグレイヴ館の島』 |
柄刀一著 |
+2点 |
ドイルの「マスグレイヴ家の儀式」への切り込み小説。
舞台もトリックも壮大で、登場人物も一風変わった病状を持っていたり、となかなか面白い作品だった。
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『木製の王子』 |
麻耶雄嵩著 |
+2点 |
久しぶりの麻耶雄嵩の作品、今までと相も変わらず、微妙な線をいく作品だと思った。あの緻密過ぎるアリバイはちょっと引いてしまう。
しかし結末で明かされる真相は、複雑な意味をもたせるものであり、『鴉』では兄弟についてだったが、本作では「家族」をテーマにしているのが判る。“著者の言葉”も一つの魅力。
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『石ノ目』 |
乙一著 |
+3点 |
これをミステリに入れていいのかよくわからないが、ひとまず評価だけはさせてもらう。収録作品の中で秀でていたのは「BLUE」だと思う。見た目が悪く、なんの魅力もないボロい人形の心情の変化を見事に書き出している。本来感情をもっていない物に感情を持たせて、それでこんなに心暖まる作品が書けるというのだから、すごい作家である。
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