タイトル |
著者名 |
投票得点 |
『フィルス』 |
アーヴィン・ウェルシュ著 |
+5点 |
クソみてーな下劣な文章と、えらく悲痛な一人の男の内面。この落差を埋めちまう手段が、なんと小便漏らしそうなトリックで、とにかくびっくりだ。
...と、この本について語ろうとするとどうしても下品になってしまう。
ミステリ作家じゃないから、なんて頭の悪い偏見を吹き飛ばすような驚愕の落とし方。猥語まみれの下品な文章で泣かせるという希有の技が堪能できる。
訳者もただもんじゃないよなあ、と思ったら、キャシー・アッカー『血みどろ臓物ハイスクール』の訳者と知って納得。 |
『ファイト・クラブ』 |
チャック・パラニューク著 |
+5点 |
映画は未見。どうやって映画にしたのか不思議でならない。ミステリとしては先例があるネタを使っているが、その使い方はまさに『今』ならではのもの。 |
『クリスマスに少女は還る』 |
キャロル・オコンネル著 |
+4点 |
これまで見逃していた作家。物語の筋もさることながら、壊れる寸前のようなアクの強さを持つ登場人物たちの描き方もいい。これがあるからこそ、連続殺人鬼の陰惨な物語と、心温まるクリスマスストーリーを融合させるというはなれわざが可能になったのだろう。 |
『この町の誰かが』 |
ヒラリイ・ウォー著 |
+4点 |
郊外の町で一人の少女が殺されるという地味な事件。ただし、事件をきっかけにねじれはじめる住人たちの人間関係と、それを描くノンフィクション風の筆致が持つ意味合いが、「ミステリ」ならではの快楽を味わわせてくれた。 |
『悪党パーカー/エンジェル』 |
リチャード・スターク著 |
+3点 |
いつもどおり、襲って奪うパーカー。なにも変わっていないのに、古くささをまったく感じさせないところにこのシリーズの凄味がある。 |
『ボーン・コレクター』 |
ジェフリー・ディーヴァー著 |
+3点 |
安楽椅子探偵を現代によみがえらせる手続きの面白さもさることながら、「都市」をとらえるユニークな視点も印象に残る。もはや名探偵が単なる名探偵ではいられない、という現代ならではの一抹の寂しさも。 |
『サヴェッジ・ナイト』 |
ジム・トンプスン著 |
+5点 |
読後、開いた口がふさがらなかった。さすがは幻の名作と呼ばれつづけただけのことはある。こんなにまで壊れたノワールだったとは。 |
『ポジオリ教授の事件簿』 |
T・S・ストリブリング著 |
+4点 |
海外本格リバイバルの中では一番面白かった。ふつうの短編ミステリが、どんどんあらぬ方向によじれていく快楽を堪能できた一冊 |
『かくして殺人へ』 |
カーター・ディクスン著 |
+3点 |
撮影所を舞台としたコメディとしても十分に楽しめた。もう何度も言い古されてることだけど、やっぱり「トリックだけの人」ではないのだ。
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『ミネルヴァのふくろうは日暮れて飛び立つ』 |
ジョナサン・ラブ著 |
+2点 |
ルネサンス期に書かれた「世界征服マニュアル」に従って、世界の支配を企む秘密結社。こういう大風呂敷を広げるには、作者の力量はかなり不足している作品ではあるが、巻末についてる「世界征服マニュアル」は、当時の文体を完全コピーして作り上げられた一品。本筋は弱かったけど、こういうホラ話は実に楽しい。 |