JMAI 2000

インターネットで選ぶ日本ミステリー大賞 2000
Japan Mystery Award on Internet 2000

サイトウ アヤコ
(広告屋の図案屋)
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タイトル 著者名 投票得点
リモート・コントロール アンディ・マクナブ著 +5点
いやはや、これはスバラシく面白かった!フォーサイス的「職人ワザ」が思う存分堪能できたし。フォーサイスをより現代的なタッチかつ一人称にするとどうなるか、という興味深さも味わえる。
幽霊が多すぎる ポール・ギャリコ著 +5点
ものすごくカタギかつ絵に描いたような古典的本格ミステリ。様式美〜。しかもよく考えると人が一人も死んでないっつーのもすごい。ヒーロー氏とメグはこの1作で終らせるにはちと勿体ないキャラなので、シリーズ化してほしかったなぁ。
不思議の国の悪意 ルーファス・キング著 +4点
良かった!何と言っても表題作の緊張感が秀逸。あと「思い出のために」も痛快。一方、「淵の死体」と「黄泉の川の霊薬」のラストはなかなかやるせないというかやりきれないというか。しかしまぁ、いずれも良いデキですわ。期待以上の収穫。
歓喜の島 ドン・ウィンズロウ著 +4点
いやぁぁ、麗しい。紐育(あえてこう書きたい)ってやっぱステキだわぁ。相変わらずウィンズロウの洒落のめした文章はたまりませぬね。ちょっとクライマックスの追っかけっこはせわしなかったっつーか、そんな次から次へとウォルターに都合のいいことばっか...とか思わないでもないんだが、しかしそれすらウォルターの才能と人徳ゆえか?と思わせてしまう、魅力的な人物造形ではある。あとは人生訓とか就業倫理の色々を、決して押し付けがましくなく学べるのもポイント。ジャズとケネディには何ら思い入れがないので、そっち方面からの楽しみを味わえなかったのが残念と言えば残念ではある。
クロック商会 フリードリヒ・グラウザー著 +4点
前作『狂気の王国』はどーにもノレないままに終ってしまい、結局は訳者あとがきに言いくるめられたような後味だったもんで、今回もまた種村季弘に丸め込まれて終るんだろーか...とか思いながら読み始めたんだが、おやおや、こっちの方が断然面白かった。何しろシュトゥーダー刑事が圧倒的に生き生きしてる(というよりはこれが本来の姿で、『狂気の王国』で精彩を欠いてたのかしらん)。ちゃんと「凄腕」なことがよく判るもの。物語の展開にも冗長さを感じない。各人物造形がくっきりしてるのは相変わらずだし。松本清張的な「社会派ミステリー」っぽさも感じた。と言っても(恥ずかしながら)松本清張はちゃんと読んだことないんだが、多分こういう感覚なんだろうなぁと、ふとひらめいたのである。ラストもそれなりにすがすがしかった。
ペンギンは知っていた スチュアート・パーマー著 +3点
古き良きフーダニットが堪能できた。結構単純な作りだし、ツメも甘めだし、解決の最後の決め手になる手掛りも超ありがちパターンなんだけど(あるいは、だからこそ、か?)、全体的な雰囲気の良さやら、どこかのんびりした感じと相まって、くつろいで楽しめる。何しろウィザーズ先生がステキ。やっぱ往年の「職業婦人」はカッコイイやね。あと、決して事細かな書き込みがなされてるわけじゃないのに、読んでてかなり絵柄/情景が浮かんでくるのがポイント。ペンギンすげーかわいい。
カリブの鎮魂歌 ブリジット・オベール著 +1点
オベールが(相変わらず)無茶苦茶うまい文章を書くってのは、よ〜く判る。んだが、裏表紙のあらすじで期待に胸ふくらませたハードボイルド好きは多分、後半読んで激怒したんじゃなかろうか。サイコ/シリアルに免疫のある私でも、ちと腑に落ちない感ありだもの。そうは言っても『マーチ博士の四人の息子』に気持ち良くK.O.されて以来、オベールは絶対埋もれさせたくないと思っているので(ま、埋もれてないとは思うけど...)、一応一票投じておきます。
ミネルヴァのふくろうは日暮れて飛び立つ ジョナサン・ラブ著 +2点
裏表紙のキーワードにそそられまくって買ったものの『このミス2000』でバカミス3位よばわりされてたから、どんなもんかと思いきや、わりかしまともに面白かった。さすがに学者あがりだけあって端正。しかし費やしたページ数の割には内容(というか読了後の充足感)薄いかも。ある意味、大詰めが『カリブの鎮魂歌』と一緒だし。
ボビーZの気怠く優雅な人生 ドン・ウィンズロウ著 +3点
すっげー'70年代テイストなのに、ちゃんと'90年代の話なのが何とも不思議な感じではある。凄まじいウヨキョクセツの末に、何ともスカッとしたハッピーエンドなので、なかなか満ち足りた読後感。ちと伏線がもったいない気もしたけど、まぁこんなもんか?
グラン・ギニョール ジョン・ディクスン・カー著 +3点
やっぱカーは短い方がすっきりして面白いなぁと再認識。尤も『夜歩く』読んだのがだいぶ前だから、解説にあった細かい差異はかなり忘れてるのだが。まぁこれも色々細かい瑕疵、書き込み不足はあるんだけどもね。テンポいいから許せる。

[あなたが選ぶ日本ミステリー大賞特別賞]
特別賞名 頑張ってますな賞
受賞作、受賞者等 祥泳社、冬樹社、原書房、国書刊行会
授賞理由 今後とも何卒宜しくお願い致します(_ _)。ほんとに感謝してます。

[その他書きたいこと(総評、感想等)]
海外はとてもぢゃないが10作品じゃあふれちゃったもんで、こっちにずるずると書かせて頂きます。
ポジオリ教授の事件簿(T.S.ストリブリング)
決してつまらなかったわけではないし、ミステリー史的には意義深いものなのであろうっていうのもよくわかるんだが、やっぱりストリブリングの目指していたものと、私が“ミステリー”なるものに対して抱く夢や希望や幻想や、とはビミョーに相容れないのだわ、と、しみじみ思った次第。興味深かったけど、楽しくはなかった、てとこか。
・赤ずきんの手には拳銃(サイモン・ブレット他)
それなりに楽しめた。まぁでも、全然ダメダメでもないかわりに飛び抜けて良くもなかったけども。とりあえず車を手助けしてくれた浮浪者の話が一番良かったかな。ちと「不思議の国の悪意」っぽい。迫り来る怖さの中で冷静かつ必死で突破口を探るあたりが。ラプンツェルもわりといいかも。臓器売買とか児童虐待の話は、何かいかにもアメリカっぽい(とは必ずしも言えない今日この頃のニッポンだが)。...ところで、正統派本格テイストのは意外なことに一つもないのね。お、続刊が出るのかぁ。
・マーベリー嬢失踪事件(ロバータ・ロゴウ)
ネタとか時代背景は好きなあたりなのに、読み進むのが異様に捗らなかったのはやっぱり展開がちんたらしてたからであろうて。この展開のちんたらさは主としてドジスン氏の及び腰な姿勢が原因であろう。まぁ最後の種明かしとその前の大詰めはそこそこ読ませたものの。そうは言ってもドイル夫妻のキャラクターはなかなか魅力的だし、何と言っても愛すべきは「男気」充分なアリシア・マーベリー嬢その人でせう。この娘のためならちとしたことには目をつぶるぜぃ。
・まやかしの風景画(ピ−ター・ウォトソン)
まぁ面白かったんだけど、きっと今イチ納得のいかなかった読者も多数いらっしゃることであろうと推測。自分でも、な〜んか言いくるめられてないか〜?みたいなことをちらっと考えないでもなかった。図像解釈の内容にあとほんの少しだけ強〜い説得力が感じられれば、多分完璧な知的エンタテインメントとして素直に感動できたかも。しかし美術史の学生時代にちゃんと読まなかったことが悔やまれる3大本(聖書、ギリシア神話、シェイクスピア)に、今回パノフスキーを加えたくなったのもまぁ事実。

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