タイトル |
著者名 |
投票得点 |
『王妃の離婚』 |
佐藤賢一著 |
+3点 |
地域と時代の特性をめいっぱい活かした法廷サスペンスとしての興味深さもさることながら(つーか、とにかくこの独特な法廷戦術が面白いんだが)、フランソワという一人物の内面の変化なり思考過程の推移だのが、劇画的にドラマチックかつ手に取るようにわかりやすく書き込まれていて、これがまた何とも言えず濃い。ラストの学生フランソワとの場面とか、その前の王妃との会話なんかは、思わず涙。 |
『文福茶釜』 |
黒川博行著 |
+4点 |
とりあえずこれ一冊読み通すと、東京生れ東京育ちのワタクシすら頭の中が関西弁モードである。恐るべし、関西弁の伝染力。それはまぁさておいて、何だかとっても「ノワール」という単語が、読みながら常に脳裏にチラついた。パルプ・ノワールとかフィルム・ノワールのノワールですな。美術・骨董裏街道実録とでもいうべきテーマもさることながら、何つーか登場人物たちのすれ具合、ひね具合が浮かび上がってくるたびに「あぁ、いわゆる“ノワール”のニュアンスってのはこんな感じかしらん」と、しみじみ思う。でも最大の見所は贋作を作る/暴くヤマ場のスリリングさと、それに伴って訪れる何とも言えない幕切れの余韻というか、熱がさっとひいていくような感覚がヨロシイ。それにしても、美術や骨董で儲けようなんてのはまずうまくいかなくて当然、てな感じがしてしょうがない。 |
『メイン・ディッシュ』 |
北森鴻著 |
+3点 |
まぁ読み急いだせいもあるかもしれないが、なかなかムズカシイ。この人の作品は基本的に、皆が色々過去を抱えてて、謎自体もすべては解明されてなくて(今回は、つまるところ動機は何だったのかが今イチすっきりしない)、読後感はなかなか重めなのだが、それぞれの短編のネタ自体はなかなか楽しめた。あとはやっぱ、料理でしょう。レシピつけてくれたらいいのに〜。作ってみたいぞ、あまりにもうまそうで。 |
『そして二人だけになった』 |
森博嗣著 |
+1点 |
う〜ん、面白かったような、何じゃこりゃだったような...。音と絵はいいけど脚本がまずかった映画をみた後のような心境。そうは言っても練無ものよりは断然読める。全体のドライな雰囲気は、相変わらず魅力的。 |
『名探偵夏目漱石の事件簿―象牙の塔の殺人』 |
楠木誠一郎著 |
+2点 |
まぁ『黄色い下宿人』とか『漱石と倫敦ミイラ』あたりとは若干毛色が違うものの(ホームズ出てこないしな、そもそも)、なかなか楽しめた。ディテールを端折って読み飛ばしてでも先を急ぎたくなる勢いはかなりある。日光での追跡劇→告白・真相解明の辺、後半を急いだ感じがあって(真相解明シーンがただヤケクソで喋ってるだけって感じでちと平板つーか。)ちょっとあっさりした後味なのが今イチではあるものの。まぁさらっと読めてそこそこワクワクしたので及第点(あるいは+α)ではある。 |
『屋上物語』 |
北森鴻著 |
+3点 |
短編連作で一長編を作る体裁とか、わりと軽快な語り口とかで読みやすいし、ネタもまあまあ楽しめるんだが、何だか登場人物の背負ってるものだとか事件の詳細なんかが重くてちと辛い。第一印象が軽めで朗らかなだけに尚更。 |
『象と耳鳴り』 |
恩田陸著 |
+5点 |
微笑ましく、麗しく、やがてうすら怖い、多面体な短編集。色々な角度から楽しめる。一作ごとに全然構成/文体が違うのも見事。「魔術師」なんか、都市の噂論としても凄い。ブルンヴァンを5冊読むよりためになるんじゃなかろか、ヘタすると。 |
『壁画修復師』 |
藤田宜永著 |
+3点 |
フレスコ壁画の修復、というのに魅かれて読んでみたんだが、全然そっち方面(贋作とか図像学謎解き)の話ではなかった。でもまぁこれはこれで面白かったかなと。淡々としていいです。大人ぶりたい時/方にお勧め。読みたいと思いつつまだ読んだことない逢坂剛は、こんな感じなのかしらんと想像。あとフランスの田舎の風情が、旅に出たいマインドを刺激してやまない。 |