とりあえずこれ一冊読み通すと、東京生れ東京育ちのワタクシすら頭の中が関西弁モードである。恐るべし、関西弁の伝染力。それはまぁさておいて、何だかとっても「ノワール」という単語が、読みながら常に脳裏にチラついた。パルプ・ノワールとかフィルム・ノワールのノワールですな。美術・骨董裏街道実録とでもいうべきテーマもさることながら、何つーか登場人物たちのすれ具合、ひね具合が浮かび上がってくるたびに「あぁ、いわゆる“ノワール”のニュアンスってのはこんな感じかしらん」と、しみじみ思う。 でも最大の見所は贋作を作る/暴くヤマ場のスリリングさと、それに伴って訪れる何とも言えない幕切れの余韻というか、熱がさっとひいていくような感覚がヨロシイ。それにしても、美術や骨董で儲けようなんてのはまずうまくいかなくて当然、てな感じがしてしょうがない。 |