同じ作者によるススキノ探偵シリーズとはうってかわって、ユーモラスな面がまったくない、極めてシリアスなシリーズ、私立探偵・畝原ものの第二弾。
期待には若干劣るかもしれない(ラストに何かすごい展開があることを期待していたので。「渇き」のラストのあれには心底驚かされたし)が、やはり面白かった。地方都市の雰囲気、独特の味のあるキャラクター、現実世界とスムーズに結びついているようにみえるという意味でのリアリティ、無駄口をたたいたりしない主人公、離婚はしたが一人娘は男手一つで(周囲の協力も得ながら)育てている、といった設定の面白さ(ネタとかは多少使い回しの感があるかも)。
様々な魅力に溢れている、良質のハードボイルドだと思う。
安っぽい感傷や、無駄なへらず口や、嘘くさい巨悪や、変に派手なアクションなどはいらない、という方にはぜひ勧めたい。
ただ、どうしてもシリーズを追って読んでほしい(そうでなければ『流れる砂』で揺さぶられるものが半減しかねない)ので、『待っていた女・渇き』(ハルキ文庫)から続けて読んでほしい。特に「渇き」は、分量もストーリーも短いが、闇は深い。また、このシリーズは読後感も良くない。楽しめる話ではないのだ。そしてまた、何か飛び抜けて悲惨だったりするわけでもない。普通に陰惨なだけだ。
# それにつけても主人公の兄貴よ(;_;) |