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主権者のための選挙制度 > 2014年12月衆議院議員総選挙の分析とシミュレーション■2014年12月衆議院議員総選挙の分析とシミュレーション同様・類似のシミュレーションは各新聞社でも行われていますが、ここでの分析とシミュレーションの手法は、私のオリジナルです。
2014年12月の衆議院総選挙は、自民党の安倍内閣が「アベノミクスの評価、消費税10%を延期することの是非」が最大争点となった選挙で、自民・公明両党が合わせて3分の2の大勢力を維持する結果となりました。 でもこの結果は、本当に国民が「圧倒的に」自民党を支持した結果なのでしょうか? 選挙制度を通して、そのことを考えてみましょう。 実際の結果・・・得票率と議席率は一致しているか?まず、選挙の結果(得票数と当選者数)は下表の通りでした (便宜上、代表的な8つの政党だけでまとめます)。
これを次のように分析します。
ここまでで既にお分かりのように、今回の選挙では民主党が大敗し自民・公明両党が圧勝しましたが、自民党は小選挙区での得票率は約48%にすぎないにもかかわらず75%を超える議席を獲得。公明党も得票率の2倍を超える議席を獲得しました。小選挙区制のマイナス面(得票率と議席率が一致せず、得票が多くなるほど議席率が肥大化する点)が、特に政権与党に如実に現れていますね。野党はすべてそのワリを食って、得票率に満たない議席しか獲得できませんでした。 これとは対照的に、比例代表区ではどの政党も得票率にだいたい見合った議席を獲得していることがわかります。ただ、衆議院議員総選挙の比例代表制度は全国を11ブロックに分けて実施しているので、大政党である自民党に有利な結果になっています。
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このことをグラフで確認してみましょう。上の表の数値をグラフに描いてみました。 まず、下に並んでいる左と中央のグラフ(A・B)をよく見比べてください。左のグラフ(A)は小選挙区での各党の得票率分布(=民意構成)を図化したものです。中央のグラフ(B)は同じ小選挙区での各党の議席率(=議会構成)を図化したものです。この2つが同じ図形であれば、民意の反映(いわば「縮小コピー」)が完全であることを示していますが、両者を重ねてみた右のグラフをみてください。「同じ図形」とは言えないのではないでしょうか? 「小選挙区制は民意を歪めてしまう」ことがハッキリ示されていますね。自民党の“突出”が目立っています。
次に、同じ分析を比例代表の場合についてやってみましょう。下に並んでいる左と中央のグラフ(C・D)をよく見比べてください。左のグラフ(C)は比例代表の各党の得票率分布(=民意構成)を図化したものです。中央のグラフ(D)は同じ比例代表の各党の議席率(=議会構成)を図化したものです。この2つが同じ図形であれば、民意の反映(いわば「縮小コピー」)が完全であることを示しています。両者を重ねてみた右のグラフをみてください。かなり「同じ図形」になっていますね? 衆議院議員総選挙の比例代表は、(定数はこの選挙から175に減少しました)、全国を11のブロックに分けているので、各ブロックは規模が小さい選挙になります。比例代表制は、議員定数が多くなるほど得票率と議席率の一致程度が高くなる性質をもっていますので、それぞれのブロックでは比例代表の利点が十分に発揮されません。それゆえ11ブロックの結果を単純に足し合わせただけでは、得票率と議席率は完全には一致しません。
下図(グラフE・F)は、「各党の得票率を100とした場合に、議席率が得票率をどの程度満たしているか」という観点から図化し、選挙区と比例代表区のそれぞれの得票率と議席率の差(ズレの程度)を表現したものです。得票率と議席率が完全に一致していれば赤色の線で描かれた図形(正六角形)になり、それから外れるほど両者の間にはズレがある(=民意の反映がうまくいっていない)ことを意味します。緑線の図形が今回の選挙の得票率と議席率の一致度を表現したものです。これを見ると、小選挙区制では比例代表に比べて得票率と議席率が一致しないことがはっきり分かりますね。
このように選挙は、たとえ同じ得票であっても、選挙制度が違えば結果は大きく異なるのです。ということは、選挙をする目的に一番適した選挙制度を使って選挙を実施しなければ、選挙をする意味がないことになります。いい加減な選挙制度のために誰かが大きくトクをして、実際に国民から信任された以上の力をもつ結果をもらたすようなことがあっては、民主主義の理念に反するのではないでしょうか。そのことをよく考える必要があると思いますね。
シミュレーション:もし全議員を「全国1ブロックの比例代表制」で選挙したと仮定したら?ちなみに、今回の選挙の投票数をそのまま使って、もし今回改選される衆議院議員480人全員を「全国を1ブロックとした比例代表制」だけで選挙していたと仮定したら、結果はどうなっていたか計算してみると、次のようになります。
どうでしょうか? 下のグラフ(G・H)の左右の図形は一見しただけでは違いがわからないほど同じになっていますね。重ねてみてもほとんど違いがありません。
お分かりでしょうか。私は、このような理由から、衆議院議員の総選挙は、議員の全員を「全国を1ブロックとした比例代表制」で選挙すべきだと思っています。皆さんはどのように考えますか? 2009/9/22 初出
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