とよティーの喫茶室
 

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■何のために選挙するのか?

2つの民主政治

 集団の運営や、利害のある人間関係を調整する社会的な営みを、広い意味で「政治」と言います。 その意味では私たちの日常生活にも「政治」はあります。例えば<生徒会の運営>は立派な「政治」なのです。狭い意味では、国際関係や国・地方自治体のレベルのものを「政治」と言っています。

 「政治」には大きく2つの体制があります。1つは専制政治で、もう一つが民主政治です。

 専制政治は、絶対的な権力をもった政治指導者(例:絶対王政の時代の王様や、ファシズム体制での独裁者)が、独断でさまざまな物事を決めていく政治のことです。これに対して民主政治は、自分たちのことを皆で話し合って決める政治です。現代では、多くの国々が民主政治を採用しています。

 民主政治には大きく2つの種類があります。1つは直接民主政で、もう一つが間接民主政です。直接民主政は、集団の問題を、その集団のメンバー全員が集合して直接話し合って解決していくタイプの民主政治です。これに対して間接民主政は、議員を選挙して議会を作り、その議会で議員たちに話し合ってもらった結論を全員の結論とする、というタイプの民主政治です。議会制民主主義とか、代表民主制とも呼ばれます。

議会は「主権者の代理人」である

 民主政治の基本は「皆で物事を決める」ということです。ある集団の中で起こる課題を皆が集まって相談し結論を出すような方法で政治を進めることが、民主政治の基本なのです。しかし、全員が集まって物事を決めることは、小さな集団なら可能ですが、大きな集団になると不可能です。

 その理由は、第一に多数の人間が集合できる物理的な環境に問題があります。例えば日本国民(有権者だけでも数千万人に及ぶ)が一堂に集まれる場所があるでしょうか? 仮にそのような場所があったとして、日本全国の有権者が移動できるでしょうか?第二に、多数の人間が集まれば集まるほど、話し合いはスムーズに進まなくなります。例えば全員の意見を聞く余裕は、参加者が多くなればなるほど確保しにくくなります。また議題について十分な予備知識のない人々に基本的な事柄から説明する時間的余裕も少なくなります。

 

 そこで、全員が集合して相談できないほど大きな集団では、議会を作って議員たちに話し合いをさせ、議会の結論を集団のメンバー全員の結論とする方法を取ることが有効になります。

 議会の議員は、その集団のメンバーによって選挙されるのが普通です。集団のメンバーは、選挙の際に自分の考えと近い人物を議員として選ぶことによって、議員を通して話し合いに参加することができるからです。逆に言えば、選挙によって選ばれた議員によって構成されている議会でなければ、民主的な議会とは言えないのです。

 

 さて、民主政治においては、その集団のメンバーが主権者です。日本という国に当てはめて考えれば、国民が主権者で、国会議員は主権者である国民によって選挙されるのです。ですから、国会はいわば「主権者である国民の代理人」だということができます。議会が国民から離れて勝手な行動を始めたら、民主政治は終わりです。

 憲法学では、「代表」には、@政治的代表、A法的代表、B社会的代表という3つの意味がある、と説明されることがあります。@政治的代表というのは、「代表(議員)は特定の選挙母体の代表者ではなく国民全体の代表者である」という意味です。したがってこの意味での代表(議員)は、選挙母体から議会活動について命令や訓示を受けるというようなことはありません。これに対してA法的代表というのは、代表(議員)は特定の選挙母体の代表であり、選挙母体から議会活動について命令や訓示を受けます。(ちなみに日本の国会や地方議会の議員は、政治的代表です)。これら@Aに対して、B社会的代表というのは、国民と議会の間に意見の一致がある場合の代表です。議会の決定を国民全体の決定とするためには、議会と国民が同じ政治的意見をもっていることが前提となります。そのため世論が正確に議会に反映される選挙制度が求められるわけです。


2006/11/25 初出「選挙」

2007/7/31 参議院議員通常選挙分析へのリンクを追記

2010/ 内容を分割し、分析へのリンクをはずす。タイトルを改める